第15話・離散

「逃げ切った…と、見るべきかな」

「そう考えていいんじゃない?」

「同感。敵の規模を考えても、これ以上追ってくるとは思えない」

ゼ・ルフトを後にし、追手を振り切るために森の奥へと逃げてきたルージ達。
どっこいしょとひとまず休憩を入れますが、フェルデが故人となってしまった以上、
職人探しの旅は再びゼロからスタートしなければなりません。

「これからどうするか…ゼ・ルフトにジェネレーターを修理できる人間がいないとなると、もはや…」

「どうでもいいって言うんですか!?」

「そんなこと言ってないでしょ?」

「だったら、ゼ・ルフトの人達を助けてあげましょうよ!オレ…ゼ・ルフトに忍び込んで
 ようやく分かったんです、ディガルドの連中のやってることは許せない…!」

ゼ・ルフトに手がかりがない以上、別の街を目指そうというラ・カンですが、ルージはそれに対して猛反対。
確かに、
暴行を受ける病人、子供と引き離され死んでいった母親、協力を拒んで殺されたフェルデ、と
これだけのものを見せられては、助けてあげたいと思うのも当然のことです

しかし仲間たちは皆うつむくように暗い表情を見せ、ルージに賛成する者はおらず…
 

「無茶を言うな…ルージ」

冷静に戦力を見てみると、数十・数百とも知れないバイオゾイドを持つゲオルグの部隊に対して
こちらはわずかにゾイド7体。あまりにも戦力の差が大きすぎます。
それでも
あきらめたらそこで試合終了だよ!と説得を続けるルージ。安西先生バスケがしたいです!
しかし、そんなルージにロンからのきつい一言が…

「君の目的はジェネレーターを修理できる職人を探すこと、そうじゃなかったっけ?
 少なくともラ・カンとミィはそのために旅をしている。
 コトナは君に頼みごとをした見返りにつきあってるだけ、ガラガだって似たようなもんだ。
 
そして、僕はガラガにつき合ってるだけ。君のお師匠さんはどうか知らないけど…
 正直僕たちは、ジェネレーターを修理できる人間が見つかれば君とはそれまで。ハイさようなら〜なわけよ、
 どうして何の関係もない街のために、命賭けなきゃなんないの」

う、うわぁ〜…
確かにそうだけどさぁ!正論だけどさぁ!
なんて友達がいのないやつなんだ!
ハイさよならだって?仲間意識ってもんはないのか!お前
キン肉マン読んで友情パワー学んできなさい!(えー


ロンにこうまで言われて、反論の余地がなくなってしまったルージ。
しかし、仲間が協力してくれなくともゼ・ルフトの人を救いたいことに変わりはありません。

仲間の元を飛び出し、一人となってルージが物思いにふけっていると…



「西に山2つ越えた盆地に小さな村がある、夜が明けたらそこを目指す」

「ラ・カンは…ディガルドに占領された街を見たことはあるんですか」

「…うむ」

「どこも…ああなんですか」

「…おそらく」

「その街を、助けようとは思わなかったんですか!?」

少なくとも、自分よりはディガルドに対抗できる能力を持っているラ・カン。
なのになぜ本腰を入れてディガルドと戦おうとしないのかと、ルージはラ・カンを問い詰めます。小1時間問い詰めます

「黙りなさいっ!おじさまに食ってかかるなんて、スジ違いじゃない!」



と、そんなルージにミィ様の
獅子戦吼が炸裂!ガオオオン!
何すんだコンチキショー!とルージはミィ様との言い合いに。しかし、いつもの小競り合いとはミィ様の様子が…

「あなたなんかに…あんたなんかに…何が分かるっていうのよぉぉっ!!
 バカーーーっ!!」

「やめんか、ミィ!」



突然ぽろぽろと涙をこぼすミィ様。再びルージに体当たりしてだだっこパンチ!だだっこパンチ!
コト姉が慌てて取り押さえますが、それでもミィ様は収まる様子がありません

「あんたなんてねぇっ!おじさまの百分の一も苦労してないくせに!
 あんな平和な村で暮らしといて、偉そうなこと言わないでっ!
 バカヤローーーっ!!」



「やめろと言っているだろう、ミィ!」 バシィッ!

「ふ…ふえぇぇぇぇぇん!」

ついに
バカヤローとなりふりかまわず暴言を!ぎゃーヒロインがなんということを
見かねたラ・カンが、乙女のビンタならぬ
オヤジのビンタでミィ様に制裁!父さんにも殴られたことないのに!

なんとかその場は収まったものの、ミィ様の剣幕を見るにラ・カン達はディガルドとの間に相当苦い思い出があるらしく…


そして仲間が寝静まった頃。
どうしても諦めのつかないルージは、一人ムラサメライガーに乗り再びゼ・ルフトを目指します。

しかし、見張りをしていたガラガがルージの行く手に現れて…

「…ガラガ、行かせてください!」

「…誰も止めるなんて言ってないぜ」

あ、あら?てっきり
どうしてもと言うならオレを倒してから行け!という展開なのかと思いましたが(えー
ルージの邪魔をするどころか、ゼ・ルフトへ同行を希望するガラガ。

「オレの街もよ…ディガルドに占領されたんだ。
 しかもオレが街を空けて遊びほうけていた、わずかな間にだぜ…?
 もちろん奴らを追い出そうとしたさ…!だが、まるで歯が立たなかった…
 街をディガルドから取り戻すには、もっともっと力が必要だ。
 そう思ってオレはゲリラ組織を作った、だがその組織も…」

「ガラガ…」



度重なる敗北の経験。ディガルドの脅威を身に染みて思い知っているガラガですが、
それでもなお街の人々のために戦おうとゼ・ルフトへ向かいます。
熱い!熱い男だぜガラガ!キャプ翼の次藤みたいに
でかいけど使えない奴だと思ってた俺を許してくれ!(えー



「変だな…?バイオゾイドが一体もいない」

「本当か?」

「一応、見張りはいるみたいだけど…」

息を殺してゼ・ルフト付近へとやってきたルージ達。しかし、なぜかゼ・ルフトの周囲にバイオゾイドの気配がありません
潜入するには好都合ですが、一体ディガルド側にはどんな事情が…?

「ルーイか!?無事じゃったか…!」

「ムサ爺さんこそ!」

再び奴隷の宿舎へと入り込み、町長と再会するルージ。
挨拶もそこそこに、早速ルージは町長達を街から脱出させようとしますが…

「バイオゾイドは出払っているみたいなんです、今なら逃げ出すことができます!」

「逃げて…どうする?」

「えっ…?ひとまずディガルドの目の届かない所へ行って、それから…」

「街の者全員をか…?」

「…それは…」

自分は街をまとめる町長の立場。それが街の者を置いて逃げることなどできないと言うムサ爺さん。
その固い決意は、ルージの説得でも揺らぐことはありませんでした。



町長さん!あんたの決意はよく分かりました!
でもルネだけは貰っていっていいですか!(えー

「お前さんは自分の村のために、職人を探さなければならんのだろう…
 この街のことに、一生関わっていくわけにもいかんだろう?」

「…」

逆に町長に
「自分の事情を優先しなさい」と説得を受けてしまうルージ。
町長達にしてあげられることが何もなく、無力さを噛み締めながらルージ達はゼ・ルフトの街を後にするのでした…

「ガラガ…オレ、ちっぽけだ…」

「…これからデカくなりゃあいいさ」

肩を落とすルージに優しく声をかけるガラガ。むはっ。気の利いたこと言えるじゃないか!
格好いいぞガラガ!


一方で、森の奥深くにて静かに眠り続けていたラ・カン達。
しかし、そんなラ・カン達の周囲に次々と現れたのは
恐ろしい数のバイオラプター!なんてデンジャラスな夜這い!



街のバイオラプターを総動員しての追跡。これまでラ・カン達を深追いしてくることのなかったディガルドでしたが、
徹底的に追跡の手を緩めなかったゲオルグ。今までの敵より遥かに執念深い相手のようです

「攻撃開始ィッ!!」 ズドドドドドドドゥ!!

無防備なラ・カン達に向けて、全バイオラプターの火球が一斉に放たれる!
穏やかな森はたちまち地獄のような火炎に包まれ、ラ・カン達は手痛い先制攻撃を受けるハメに…

「…囲まれてる!?いつの間に!」

「見張りは何をしてたのよぉっ!」

「お出かけしちゃってるみたいだねぇ…!ルージ君と一緒に…!」



あらゆる方位から次々と襲い来るバイオラプターに、突破口を見い出せず苦戦を強いられるラ・カン達。
師匠とラ・カンは、敵を切り崩してなんとか包囲網に穴を空けようとしますが…

「第五・第六小隊前へ!」

「ぐ…!」

「第八・第九小隊は上空のレインボージャークを牽制!」

「…近づけないっ…!」

ラ・カン達が動きを見せるたびに、的確な指示で常に一対多数の陣形を維持するゲオルグ。
戦局を覆すことができず、ラ・カン達はじわじわと追い詰められていき…




一方、ゼ・ルフトを出たルージ達もラ・カン達に起こった異変に気づき、全速力で森へと向かっていました

「オレのせいだ…!オレがしっかり見張りを続けていれば…!」

(違う…!オレが街に行かなければ、ガラガは見張りを続けていた…この、バカルージッ…!!)

「先に行きますっ!」

デッドリーコングよりも足の速いムラサメライガーで、一足先にルージはラ・カン達の元を目指します。
しかし残りの距離も決して短くはありません。果たして仲間のピンチに間に合うことができるか…?




「あんまり、使いたくないんだけどね…!」

そして仲間達を危機から救うべく、次に行動に出たのはロンのバンブリアン!
で、でもちょっと頼りなさげなパンダのゾイドでほんとに立ち向かえるんですか!?

パシュウン 『ファイナルベント』

ゴチャゴチャした戦いは
好きじゃない…

AP7000
『エンドオブワールド』!!

ボガガガガガガアアアン!!

バンブリアンから放たれた無数のバンブーミサイル!直撃を受けたバイオラプターの群れが粉々に消し飛ぶ!
ひえー
パンダめちゃめちゃ強いじゃないですか!このミサイルを仲間全員に持たせたりとか:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「今だッ!」

「ちっ…陣形修正!第二・第四小隊は敵中央へ!個別撃破に移行する!」

かろうじてバイオラプターの包囲から抜け出し、撤退を試みるラ・カン達。
しかし追いすがるバイオラプターに分断され、それぞれが散り散りになってしまうことに…

「全員この場は逃げ延びることだけを考えろ!生きていれば、また巡り会うこともある!」

足を止めればたちまち飲み込まれてしまいそうなバイオラプターの攻勢。
とても真っ向から戦う余裕はなく、一同は命からがら戦場から離脱していき…



「…ラ・カン…ミィ…コトナさん…セイジュウロウさん…ロン…」

ルージが到着した頃には時すでに遅く、そこには焦土と化した焼け野原だけが広がっていました。
さらにガラガにも何かトラブルがあったのか、デッドリーコングもルージに追いついてくる様子がなく…

「みんな…どこに行ったんだよぉーっ!!」

今はその声に応えてくれる仲間が誰もおらず、ルージの叫びはむなしく周囲に響きわたるのでした

次回へ続く!








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