第2話・バイオゾイド

「あ…あ…うわあああああーーっ!!」

前から迫る3体のバイオラプター、背後から迫る2体のゾイド!未熟なルージにこのピンチを打破するような術はなく、
ひたすら悲鳴を上げながらその場で固まってしまいます

「ジャマよっ!」

「うわっ!…え…?」

「逃がすな、挟み撃ちにするぞ!」

「はい!」

しかし、そんなルージのムラサメライガーを2体のゾイドは
華麗にスルー!
なんと脇目も振らずバイオラプターに飛びかかり、鮮やかな手並みであっさりと3体とも片付けてしまいます
この人たちは味方だったのね…前回の
「そこまでだ」はバイオラプターに言ってたわけか
「そこまでだ」じゃなくて「そこのボク助けに来たぞー!!」だったらルージ君も悲鳴上げずに済んだのになぁ(えー

「た、倒してくれた…?味方なのか…?うわっ!み、味方じゃないのかよ!」

2人が味方だと知ってほっと一息つくルージ。ところが次の瞬間、2体のうちの片割れ・ランスタッグが
いきなりムラサメライガーに向けて
凄い勢いで突撃を!いやー串刺しにされるー!

ドッガアアアン!!

「うわあああっ!!」

「なにボケッとしてんのよ!あなたの村でしょ!?」

ところがムラサメライガーをどついてひっくり返し、げしげしと足蹴にするランスタッグ。なんなんだこいつは、ただの女王様か?(えー
しかし罵声を浴びせられたルージが村の方に目をやると、村のあちこちからもうもうと立ち昇る黒煙が!
そう、バイオラプターは倒したものの、村にバラ撒かれた火球で村は大火事の真っ最中だったのです



「右の方の火の勢いが強い!あちらに水を回せ!」

「え…?わわっ!」

すぐさまゾイドで村の消火活動を手伝う3体。こういう時に海辺の村というのは助かります。
ルージもつたない操縦ながら必死に海水をぶちまけて消火し、なんとか火事の被害は最小限で食い止められたのでした

「終わったみたいだな…ゾイドを動かすのって、結構疲れるなぁ…」

ようやく村を襲った危機が去り、張りつめていた緊張感から解放されたルージ。その途端どっと疲れが吹き出てしまいます

「オレ…ゾイドに乗ってるんだよな………あはは…泣くことないじゃないか…」

安堵の溜め息をつきながら、ルージは改めて自分がゾイドに乗っていることを実感していました
今までどんなゾイドも動かせなかった自分が、とうとうこんな立派なゾイドに乗れる日がやってきた…
そう考えると、自然にルージの目からポロポロと涙が…



無理もありません、ルージの家は代々ゾイド乗りの家系で、しかも父のラージは村のゾイド乗りの御頭を任されている立場。
「親は立派なゾイド乗りなのに、息子はとんだ無能だな」と周囲から冷ややかな目を向けられたことも、一度や二度ではなかったでしょう
今日はルージにとって、長年夢見ていたことが現実になった記念すべき日なのかもしれません

「お兄ちゃーん!お兄ちゃん!」

「ル、ルージが乗ってるのか!?」

「バカなこと言うな、あいつはバラッツだって動かせたことないんだぞ!」

「父さん!ファージ!」

「な…あ…!?」

「…ルージ…よくやったな!」

ルージを落ちこぼれ扱いしていた村人達があぜんとする中、ムラサメライガーから飛び降りて勝利の凱旋をするルージ。
ビームトータスでバイオラプターに敗れた父も、仇をとってくれたルージを温かく出迎えます
しかし、そんな和やかなムードの中、例の2体のゾイド達がそこへ姿を現して…

「このゾイド達は…?」

「知らない、いきなりやってきて助けてくれたんだ…え…!?お、女だ!?」

「なによさっきの戦い方は!私のランスタッグとおじ様のソードウルフがいなかったら、
 
あなたやられてたわよ!」

なんとランスタッグを操縦していたのは、第一話の野獣少女!
それも、ルージの未熟な操縦を見てすっかりご立腹のようです。怒涛の言葉責めにルージはもうタジタジで…

「もう少しちゃんと動かしてよ、初めてゾイドに乗ったわけでもないんでしょ!」

「初めて…だけど…。ゾイド動かしたの、さっきが初めて…」

野獣少女の剣幕にうろたえながらも、今日初めてゾイドに乗ったことをありのまま伝えるルージ。
しかし、結果としてそれは
火に油。女の子の表情はますます怒りに染まっていき…

「……初めてで大型ゾイドが動かせるわけないでしょおっ!!」

「やめなさい。ミィ」

「あなたは…?」

「ラカンと申します、そっちが姪のレミィ。少しお話を聞かせていただきたいのですが…」

そこへ現れたのは、もう一体のゾイド・ソードウルフを操っていたラカン。
お子様で凶暴なミィとは対照的に、落ち着きのあるナイスミドルですね(えー
そんなラカンに止められて、ルージの胸ぐらを掴んでいたミィもようやく落ち着いて話を聞いてくれることに…

ところで2人の名前の発音が「ラカン」、「レミィ」なので声だけ聞くと分かりませんが、
それぞれ
ラ・カンとレ・ミィで苗字と名前に分かれてるんですね。
ガンダムで言うところの
マ・クベ大佐みたいなもんだと思います(えー

「このゾイドは今日引き上げられた物なのですか?
 ふむ、バイオゾイドがやって来たのはただの偶然のようですな…」

「バイオ…ゾイド?」

「さっきの銀色のゾイドですね?あれはやはりディガルドの…」

「ディガルド武国のゾイドです、バイオゾイドには光の球(ビーム)も鉄の球(実弾武器)も効きません、
 倒すには”リーオ”で出来た武器で接近戦を仕掛けるしかありません」

「リーオ…?」

「特別な鍛え方をした金属です、私のソードウルフの剣も、ミィのランスタッグの槍も、
 それから…ムラサメライガーでしたか?あのゾイドに取り付けられた刀も、全てリーオで出来ています。
 リーオの武器を持つゾイドは、あまり多くありませんからな…ディガルドに狙われた町はまず助からない。
 並のゾイドでは歯が立ちません」

博識なラ・カンから、バイオゾイドについての様々な知識を教えてもらうルージ達。
バイオゾイドの特殊装甲・ヘルアーマーは、リーオ(メタルZi)で作られた武器で攻撃しなければ全く歯が立たないという代物…
そんなバイオゾイドを何千・何万と率いるディガルドに対して、リーオの武器を持つゾイドはほんの一握りです
今やディガルドに対抗できるような組織はどこにもなく、ディガルドは急速に勢力を拡大し続けているようで…


ラ・カンの話はそこでお開きになり、解散したルージはなんとなく夕日の中でムラサメライガーを眺めていました。
すると、そんなルージの元へミィがトコトコやってきて…

「あなた、本当にゾイドに乗ったの初めてだったんだって?
 バラッツも動かせなかった人間が、いきなり大型ゾイドを動かせるなんてヘンよ」

「仕方ないだろ?動かせたんだから…」

「ヘンなものはヘンなの!」

いきなり手厳しい変人呼ばわり3連発。そんなこと言われてもどうしようもないですよ!
「そうですね僕は変ですね」って負けを認めるしかないんでしょうか:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「君達の方こそ変だろ、商人でもないのにあちこち旅して歩いてるなんて」

「色々事情があるの!人の事情はあれこれ詮索しないのが礼儀ってもんでしょ!」

「べ、別に詮索しようとは…」

うーむひどい言いようですなミィ、さんざん人を変人呼ばわりしといて
「お前礼儀がなってねーな」と言い出すとは…(えー
ああ言えばこう言うミィにすっかり困ってしまうルージ。しかし、そんなミィも一通り言いたいことを言ったあとに
「…ねえ、あなた、名前は?」とルージに質問を…おお、なんだかんだ言って多少はルージに興味があるみたいですな

「ル、ルージ。ルージ・ファミロン」

ルージがそう答えると、ミィはじっ…とルージの顔をのぞきこみ…

「(プイッ)ヘンな名前」

名前まで変人扱いされてしまいました。そう言うあんたはレさんじゃないですか(えー
それだけ言ってスタスタラ・カンの所へ戻って行ってしまったミィ。嵐のような少女を相手にしたルージは、
すっかり疲れたような表情を浮かべてしまうのでした



《ジェネレーター制圧完了》

「被害報告は」

《撃破…0、大破…0、小破…0、不明…4》

「不明…?昨夜の砂嵐で遅れた小隊か…まだ合流していないのか」

《ディガー》

「捜索隊を出せ、編成の指示は一任する。私は先に行く!」

一方その頃、ミロード村から少し離れた地域の侵略を進めていたディガルドの部隊。
どうやらミロード村が襲われたのは、この部隊のバイオラプターがたまたまはぐれて迷い込んだというのが原因のようです
そんなバイオラプター達の捜索に動き出したのは、その部隊の指揮官を務めるザイリン少将…
バイオラプターより一回り大きいゾイド・バイオメガラプトルを駆り、ザイリンはグングンとミロード村の方角へ近づいて行きます

「(バイオラプターの足跡を見ながら)ここで方角を誤ったのか…ん?エレファンダーを確認…10体か」

「へっへっへ、ディガルドにもとんだマヌケがいたもんだ。
 たった一体で俺たち無敵の傭兵部隊、エレファンダー遊撃隊のど真ん中に
 飛び込んで来るとはよ!あいつをブッ倒したらそのままガープの町に入るぜ!
 町からディガルド野郎どもを叩き出したら、俺たちゃ億万長者だ!」

しかし部下達の足取りを追う途中、荒くれ者の傭兵グループ・エレファンダー遊撃隊と遭遇してしまったザイリン!
「悪名高いディガルドを倒してガッポリ儲けてやんぜ」と、鼻息を荒げるエレファンダー遊撃隊。
早速ご自慢の
ヘナチョコそうな鼻からビームをドカドカとザイリンに撃ち込みますが…

ドドドドドド!!

「は…はおっ!?光の球が効かない!!」

ところが
「はおっ!?」凄く情けない声を上げながら、バイオゾイド驚異の防御力にビビるエレファンダー遊撃隊!
エレファンダーの鼻からビームごときまったくヘルアーマーには通用せず、10体いたエレファンダーは瞬く間に全滅させられてしまいます
さっきラ・カンも
「リーオ持ってないゾイドはカス」と言ってましたが、まさか10対1でも全然歯が立たないとは…
それだけルージ達のゾイドの重要性がよく分かるシーンですな

「ふわあ〜あ…」

「おはよう、ルージ君と言ったかな?」

「あっ、おはようございます!」

「昨日の連中は部隊の規模から考えても、最初からこの村を狙っていたとは考えにくい。
 偵察部隊が手を出すとも思えん…おそらく本隊からはぐれた連中がたまたまここを見つけ、
 手柄を挙げようと襲撃した。そんなところだろう」

(となると、本隊の方はどこかの町を攻め落としたか…)

そして次の日、ミロード村を散歩しながら村が襲われた理由をルージに話していたラ・カン。
「多分こうだと思うんだよねー」っていう推測の話ではありますが、見事に真実をズバリと言い当てております。
ラ・カンの観察眼は相当なもののようですな

「ウルフタイプ、ランスタッグ、ライガータイプのゾイドを確認…バイオラプターの残骸を確認…
 これまで我が軍のバイオゾイドが、何者かの襲撃を受け失われているが…あの連中の仕業か?
 正体を探る必要がありそうだ」

その頃にはザイリンもミロード村近辺に到着し、じろじろと村の様子をうかがっているところでした
いきなりボーボー火を吐いて村を襲った部下と違って、手荒な真似をする気はないようです
ひとまずザイリンはラ・カン達の正体を探るために、商人に変装して村へ潜入することに…

「ルージ君は村の外の世界に興味はないのか?」

「ないこともないですけど…」

「村を出ようと思ったことは?」

「村を出た人間なんて100年以上いないんです、とんでもないですよ!」

「この家にゾイド乗りがいるのか…」

「(ドカッ)う、うわぁ!?」

しかし「ふっふっふ完璧な変装だぜ」とルージの家までやってきたザイリンは、
帽子のせいで前が見えなくてルージと曲がり角で激突という物凄いアホなミスをかましてしまいます。
せっかく変装してまでこっそり潜入したというのに、変な帽子をかぶったせいで台無しにしてしまうなんて…(えー

「ご、ごめんなさい!……あっ。わぁ、本だ!」

「や、やべぇ正体バレたかも」と慌てるザイリンでしたが、ルージはザイリンがぶちまけた本の方に夢中のようです
この反応を見ての通り、ルージの趣味は
本を読んで色んな勉強をすることみたいですよ。今時珍しいしっかりした子だな…

「商人の方ですか?」

「あ、ああ、さっき着いたばかりでね」

「大丈夫かね、ルージ君」

(なに…!?キダ藩のラ・カン!まだ生きていたのか!)

ルージ達がぶつかったのを見て寄ってきたラ・カン、しかしそれに気付いたザイリンは途端に表情が一変!
どうやらラ・カンはディガルドに対する反乱分子として、かなりの有名人なようですな。あれだけディガルドに詳しければ当然か…
ザイリンにとって、そんな邪魔者ラ・カンを始末するなら今がチャンス!
「しめしめ背中がガラ空きだぜ」
ルージに気を取られているラ・カンの背後に忍び寄りますが…

ドッガアアアアアン!!

「ぐお!?ちっ、間の悪いところで…!」

ってまたしても台無しキター!!いきなりの爆風に巻き込まれて吹っ飛ばされてしまう3人!
ザイリンに続いてミロード村にやってきたバイオラプター捜索隊が、勝手に村への攻撃を開始してしまったのです。
バカな部下のせいでザイリンの
スマートに暗殺作戦は失敗してしまいましたが、
こうなったらなりふり構わず
「うおお死ねやー!」と強引にラ・カンを襲撃することに!

「おじさまーっ!!」

と思ったらまたしても作戦失敗!ラ・カンを襲ったザイリンに稲妻のようなミィのカカト落とし炸裂!
そのままナイフをぶん取られて肉弾戦になだれ込んでしまいます。それにしてもミィはとんでもない武闘派ヒロインだな:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「ディガルド武国の刺客ね!?」

「少し違うな…」

やたら強いミィにも驚かされますが、意外にもザイリンの方も負けず劣らずの実力!次々と襲い来るミィのナイフ攻撃を華麗にかわし、
巧みにミィの手からナイフを弾き飛ばしてしまいます

「私はザイリン。ゾイド乗りのザイリン!」

どうだかっこいいだろうとばかりに名乗り口上を決めるザイリンでしたが…ゾ、ゾイド乗り?
わざわざ訂正してみせた割に、何が言いたいのかよく分からんな:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「ゾ、ゾイド乗りのザイリン…?」

「その本は君にあげるよ、ルージ君!」

ルージも
この人何を言ってんだろうとあぜんとした表情です(えー
そして捨てゼリフを残すと、即座にその場から姿を消してしまうザイリン…
目まぐるしい状況について行けないルージでしたが、ひとつ確かなのはバイオラプターに村がどんどん破壊されているということ…
逃げ惑う村人達を見てディガルドへの怒りが燃え始め、ルージ達はそれぞれ自分の愛機へと乗り込んでいきます

ガッシャアアアアン!!

「わっ、わあああ!!」

しかし前回のような広い海岸での戦闘とは違って、今回の戦場は狭い村の中!
家が邪魔で思うように飛び回れないルージは、バイオラプター相手に上手く戦う事ができません

ズッシャアアア!!

「素人は引っ込んでなさいよ!黙って見てなさい!」

「自分の家が焼かれたんだぞ…!黙ってられるか!」

「私とおじ様の邪魔をしないで!」

ガギイイイイッ!!

「きゃあああーーっ!!」

そんなルージをかばってバイオラプターを仕留めるミィ!しかしルージに気を取られている間に、別方向のバイオラプターからの攻撃が!
モロに直撃を食らって押し倒されてしまったミィは、そのまま至近距離からヘルファイヤーで焼き尽くされてしまいます

「ミィ!!」

ガッシャアッ!!

「ぬう…っ!」

「そこを動くなッ!!」

ズボオオオオッ!!

「ぐああああーっ!!」

今度はラ・カンがミィを助けようとした隙を突かれてしまう展開に!バイオラプターに背後から襲われたところへ、
さらにザイリンの特大火球を食らいバイオラプターごと炎に包まれてしまいます
炎の中でもだえ苦しむ2体のゾイド、この場でまともに戦えるのはルージだけとなってしまいました

「君もまとめて始末してあげるよ…ルージ君!」

「う、うあ…うああああああーーっ!」

そしてザイリンとの一騎討ちを強いられてしまうルージ!エレファンダー10体が束になっても敵わなかった相手に、
ド素人のルージが一体どこまで立ち向かえるのか…次回に続く!








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