■大正野球娘。 第6話「球は荒野を飛び回る」
 

「今日は皆さんにとっても大事なお知らせがあります!
 これまで皆さんは基礎練習を積み重ね、日々体力を養ってきました。
 ですからそろそろ次の段階に入ってもよい時期と私は考えます!」

「も、もしかして本格的に野球の練習を始めるんですか!?」

「イエース!」

「わぁ〜!」

「ただ私は、愛する叔母の看病のために長崎に行かなければならなくなりました」

「ええ〜!?」

夢見させるようなこと言うなー!!(えー
前回からしばらく経ったある日、ようやくアンナ先生からランニング地獄卒業の認定を受けた小梅達でしたが、
いざまともな練習を始めようという時に
「ごめん急用が入っちゃった」とアンナ先生は長崎へすっ飛んで行ってしまいました
そんなアンナ先生が留守の間、小梅達に残されたのは野球部のある中学校のリスト…
どうやらこれを使って、アンナ先生が帰ってくるまで練習試合をやりまくれということのようです

「”今回は謹んでお断り申し上げます”…」

「う〜ん、こっちもダメだあ…」

「全滅ですね…」

「も、もう一度出してみます?」

「同じところに?」

「この調子では無理ではないか…?」

「諦めてはダメよ!こうなればどんな相手でも構わないわ!なんとしても見つけ出しましょう!」

そんなリストの学校に、かたっぱしから何十通という練習試合申し込みの手紙を送った小梅達でしたが、
なんとその全てが
「やだよ女と練習試合なんて」と断られてしまいます
これには桜花会の誰もが沈んでしまいますが、唯一
「こうなったら誰だっていいから試合してやる」と鼻息を荒げる晶子。
晶子のその言葉を聞いた小梅は、帰り道の途中にある野球チームを見つけて、ついにそのチームと試合の約束をしますが…

「正面突破でイセカイ界トータル!!」(えー

なんと小梅が連れてきたのは近所のお子様野球チーム!リーダー格の少年・太郎の声が
バシンそのまんまだコレー!
バトスピ好きの私には嬉しい展開ですが、晶子としては
「いくらなんでもガキ相手はねーよ」とかなり不満なようで…

「小梅さん、これは一体どういう事かしら」

「ほら、どんな相手でもいいっていうことだったから!」

「だからと言って小学生はないでしょ!」

「なんだとォ!?こっちだってお嬢様のお遊びに付き合ってる暇はねーんだよ!」

「お嬢様のお遊びですってぇ!?小梅さん!こんな子供が練習相手になるとは思えません!」

「なんだとォ!?もういっぺん言ってみろ!」

「太郎君たちは、毎日のように野球をしているんだよ?
 子供だからって相手にならないなんて…手紙で断ってきた人と、どこが違うの?」

「う、うう…」

試合前からいきなり険悪ムードバリバリですが、小梅にたしなめられて渋々試合を始めることにした晶子。
そして一回の表・先攻は桜花会から…一番バッターはもちろん俊足の胡蝶です。となればここは内野安打での出塁に期待がかかりますが…

 

「アウトォ!」

「バッター打てないよー!ワンナウトー!」

ところが一応はゴロを打ったものの、飛んだところが悪かったのか一塁には間に合わずワンナウト!
さらに二番バッターの雪はキャッチャーフライ、三番の環もピッチャーフライと簡単に打ち取られてしまいます
雪と環ですらこんな超絶凡打で終わりかよ!ピッチャーの頭すら越してねえ!
まあバシンは
晶子よりも遥かにいい球を投げてるみたいだからしょうがないかもしれませんが(えー

「プレイ!」

「えいっ!」

ひょろひょろ

「おいおいピッチャーヘボだぜぇー!」

「なんですってぇ!?」

「小笠原、ヤジなんか気にするな!」

そして一回の裏・バシンチームの攻撃が始まりますが、晶子のひょろひょろ球を見てここぞとばかりにヤジりまくるバシン達。
環に「気にするな」と言われながらも
思いっきり気にしまくりの晶子は、
コントロールを大きく乱して簡単に先頭打者を出塁させてしまいます

「ボールボールフォアボール!」

「おいおい全然入らないぜー!」

「ぐぐぐぐ…!」

「タイム!晶子さん、大丈夫?」

「ストライクゾーンが小さいだけで別に問題はありません!!
 小梅さんは心配せずに構えていてください!!」

「う、うん…」

あ、そういえば相手の背が低いからストライクゾーンも小さくなるのか…
でも明らかに問題はそこじゃありません
小梅がなだめようとしても、完全に頭に血が昇ってカッカしている晶子。
この調子じゃ何点取られるか分かったもんじゃありませんが、ひとまず初回は2点だけでなんとか収まったようです

「よーし!次はこっちの番よー!!」

さあそして二回の表・いよいよ四番バッター巴の登場!環や雪でさえあれだった以上、打撃で頼りになるのは巴だけですよ!
ここは一発パカーンとホームランをブチかまして…

ぶーんぶーんぶーん

「ストライクバッターアウト!」

「あぁ…」

「ぶぁぁぁぁっかもん!!なんでもかんでも大振りするな!!」

「だってホームラン打ちたいんだもん…」

かすりもせずに三球三振!うわああああ巴ですらこんなんかー!!
あまりにもホームランを狙いすぎた巴の大振りに、思わずアンパイア役の環も壮絶にキレております
こんなに切れてる広橋涼の演技聞いたことねえ!(えー



「ふんっ!」

カキイイイン!!

「わわっ、わわわっ!?」

「…」

そして回は進み、桜花会に0点の行進が続く中、毎回得点を重ねて大量リードを奪っていくバシンチーム。
とはいえ桜花会の失点のほとんどはエラーがらみ…平凡なフライをお見合いして落としたり、
また鏡子が例のクソレフトエラーをやってしまったり…

ク・ソ・レ・フ・ト〜ッ!(えー

鏡子のエラーを見つめる晶子の視線があああああ!
完全に
「クソレフトふざけんな」と切れておりますよ!しかし鏡子も、あんなトラウマになったエラーをまるで練習してないとはどういう…
はっ(゜д゜)そういえば朝香中との試合以来、桜花会の練習は
ランニングしかやってないんでしたっけ…
そうなるとあの試合から進歩してなくて当然か…:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「面白かったからまた相手してやるぜ!それまでにせいぜい精進してくんなー!」

「…小学生にも勝てないなんて…」

「…こんなザマでは、朝香中に勝つのは夢のまた夢だな…」

結局バシンチームには
6回で19点も取られまくり、桜花会は最後まで0点のままみじめな敗北を喫してしまいます
まさか近所のお子様チーム相手にここまで手も足も出ないとは…ある意味、朝香中に負けた時以上にショックがでかいかもしれません

「問題は山積み、でもそれを解消することが出来れば、
 私達は大きな勝利を掴むことができるはずよ」

そんな中で唯一前向きな意見を言ったのは乃枝でした。信用して大丈夫かな…(えー
乃枝は前回さんざんズレたことを言いまくってましたからなあ
なんかもう
「今の私は烈海王にだって勝てる!!」と同レベルのうさんくささを感じるんですが:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「対策その1、試合中は声をかけ合いましょう!誰がボールを捕るのか、
 どこに投げればいいのかハッキリ指示を出すように!
 対策その2、胡蝶ちゃんは今日から左打席に立ってちょうだい!
 対策その3、晶子さんの制球力の強化!この枠の内と外ギリギリを
 投げられるようになってちょうだい、出来れば低めに集めた方がいいわね!
 対策その4、巴さんは大振り禁止!確実にヒットを狙える打撃方法にすること!」

こ、これは!?なんだか物凄くまともなことを言ってるぞ乃枝!(えー
声をかけ合うことでフライのエラーを減らし、胡蝶を左打席に立たせて内野安打の成功率を上げ、
何も考えずに投げている晶子に上下左右のコントロールを意識させ、大振りで凡退しまくった巴にミートを徹底させるという…
100年前のド素人の女子としては信じられないほど的を射た意見です
乃枝のやつ前回とはまるで別人じゃないか!(えー

「え〜!?それじゃホームランが打てなくなっちゃうじゃない!」

「昨日三振の山を築いたくせに大口を叩くじゃないか…」

「だってさ〜…」

「ねえ、どうしてそんなにホームランにこだわるの?」

「静は覚えてないの?朝香中との練習試合で見たあの打球、
 まるで空の彼方に吸い込まれていくようだった…私もあんな打球を飛ばしてみたいの!」

って、なんですかこの巴の恋する乙女な表情は!?それだけ朝香中の4番が放ったホームランが鮮烈だったようですが…
しかしこれはいい傾向ですね、
4番が打ったホームランへの憧れがそのままあの4番への憧れになったりしないだろうか、
そうなったら巴も百合を卒業して面白いことになるんですが:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「だってヒットなんかいつだって打てるもん」

「はあ!?」

と、ここで飛び出した巴の爆弾発言!なんと巴にとってはヒットなんぞ打てて当たり前、そんなの打ったって面白くないから
あえてホームラン一本に絞って大振りを繰り返していると…うーむ、にわかには信じがたい話ですな
早速それを確かめるために
「んならこいつ打ってみろやーっ!!」と巴相手に投球を始める晶子!
すると巴は、目にも止まらないような鋭い打球をバカスカ打ちまくってしまいます


(C)鳥山明/集英社

こ…こいつ…!
ハッタリじゃねえ…!
(えー

カキイイイン!!

「ね!」

「ふえ〜…」

「やっぱり巴さんはホームラン禁止!」

「ええ〜!?」

「そして最後の対策は特に重要です!晶子さんと鈴川さん!
 ピッチャーとキャッチャーは一心同体、夫婦のようなもの…
 その信頼関係が試合をいい流れに導いて行けると、私は考えます!
 そこで2人は心を通い合わせ、真の夫婦になるよう努力して下さい!」

そして最後に乃枝から課せられた課題は、晶子と小梅の間に確固たる信頼関係を結ばせることでした
確かにさっきの試合でも
「小梅さんは黙って構えててください!」と一人でカッカしたあげく
そこからどんどんドツボにはまっていった晶子…あそこできちんと小梅の
「大丈夫?」という言葉に耳を傾けていれば、
ああまで大崩れすることはなかったはずです

「真の夫婦…?そう言われましてもねえ…」

「う〜ん…」

しかし
「そんなこと言われてもなー」とまったく乃枝の言葉にピンときていない小梅達。
夫婦と言われてもどうしていいか分からず、ひとまず家に帰って親に相談してみますが…

「ねえお母さーん」

「んー?」

「あのね、夫婦になるってどういう事なの?」

「は…?なあに、やぶからぼうに」

「あ、ちょっと思っただけなんだけど」

「そう言われてもねえ…お父さんと一緒になって、その後を一生懸命ついて来ただけだしねえ」

「ふ〜ん…そんなものかあ」

うーん…なんというか全然ためにならない感じだな:;y=_ト ̄|○・∵. ターン
というか小梅ママはまさに”家庭に入った女性”そのものというか、夫を支える良妻賢母なタイプの母親みたいですね
めちゃくちゃ美人なうえに夫を立ててくれるなんて、言う事なしの理想の嫁だなあ。
ババア結婚してくれ!!(えー

「小笠原ー!この一週間の練習の成果を見せてやれ!」

「ふふふ…もちろんですわ…!」

そうこうしているうちに一週間が過ぎ、再び迎えたバシンチームとの練習試合の日。
復讐に燃えまくる晶子はいい具合に練習の成果を発揮し、なかなかバシンチームに鋭い打球を打たせません

「…っと!」

ぼこっ

「捕りまーす!」

「アウト!」

「ワンナウトー!」

「「「ワンナウトー!!」」」

「うーん…?なんだかこの前と違うなあ」

そして声をかけ合ってのエラー防止策、胡蝶の左打ちで内野安打、巴のミート打法と面白いように乃枝の作戦がヒットし、
4回までで9対0と圧倒的な試合展開を見せる桜花会!この調子で行けば、もはや勝ちは間違いないような感じですが…

ところがどうしたことか、5回以降はぱったりと追加点が取れなくなり、それどころか一気に大量失点を許してしまう桜花会!
とうとう10対10と同点にされて9回にもつれ込み、ツーアウトランナー二・三塁という大ピンチを迎えてしまうことに…

「はあ…はあ…はあ…」

「タロちゃーん!ピッチャーバテバテだぜ!打てる打てる!」

「タイム!晶子さん、大丈夫?球が浮いてきているから、川島さんが言っていたように低めに集めた方が…」

「それぐらい分かっています!私はまだ大丈夫ですわ!
 投げることに関しては、ピッチャーの私が一番よく見えますもの!
 ここは私が抑えますから、小梅さんは安心して構えていてください!」


(C)井上雄彦/集英社

まるで成長していない…(えー

またしても声をかけてきた小梅に向かって、前回と同じようなことを口走ってしまう晶子!
「安心して構えてろ」ってこんなに安心できない態度がありますか!
そして迎えるバッターは晶子にとって宿敵同然のバシン。そんな最後の勝負の結果は…

「惜しかったなーあ!次の試合までせいぜい練習してくんな!」

完璧に逆転タイムリーを打たれて晶子撃沈!最終的に10対12となりまたしても敗北!
しかし今回の最大の課題は明らか…終盤で晶子があんな大炎上さえしなければ、すべて上手くいって勝っていたはずです

「今日の試合を見るに、あなた達はまだ心を通わせているようには見えません!」

「(ぷいっ)努力はしていますわ」

「嘘おっしゃい!マウンド上で夫婦喧嘩をしていて何が努力よ!?」

「そう言われても、たまには上手く行かないことだってありますわ!」

いくら乃枝が説教しても反省の色なし!晶子ダメすぎる…2試合連続で自分が試合をぶっ壊したのに完全に開き直ってます
そういえば最初の試合でも
「チッあれぐらい捕れよ使えねえな」って顔してたし、
もしかして凄く自己中心的な性格なんだろうか:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「何かいい方法はないかしら…?」

「え?そんなの簡単じゃない!例えばぁ!……え、ええっと……」

コンビ仲を深める方法を尋ねる小梅でしたが、これまで冴え渡っていた乃枝の頭脳もとうとう電池切れを!(えー
今日は普段からは考えられないくらい頑張ったもんな乃枝…電池が切れちゃう気持ちも分かるからゆっくり休め…:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「夫婦ならいっそのこと、一緒に住んでみるのはどうだ?そうだ、新婚生活を始めてみろ!」

「はあ」

「それよ!あなた達は可及的すみやかに新婚生活に突入すること!
 そして必ず心を通わせなさい!」

「はあ」

そんな時環からとんでもない提案が!なんと2人きりの新婚生活を…って
なんつー淡白な反応!?
これが普通の百合アニメだったら
「えええええ!?夫婦ううううううう!?」
「ししししし新婚生活うううううう!?」と激しく赤面しながら慌てふためく場面なだけに、
「はあ」で終わらせた小梅達が面白すぎます。こんな話の流れでも百合の匂いを感じさせないってのはいいことですな



「今晩はよろしくお願いします」

「い、いえいえこちらこそ、こんな汚い所へようこそ!」

「何か入り用のものがあったら、遠慮なく言ってね」

「はい、ありがとうございます」

というわけで、早速その日の晩にすず川へ泊まりにやってきた晶子。
大富豪の令嬢を前にしてへりくだりまくりの小梅父に対して、
「遠慮なく言ってね」と自然体でタメ口な小梅母が印象的ですな
やはり「お父さんについてきた」とは言っても、実際は一家を取り仕切る肝っ玉母ちゃんなんだろうか

「おーい小梅!腕によりをかけてお嬢さんの晩ご飯作れよ!」

「もちろんよ!晶子さんはお茶でも飲んで待っていてね!」

そんな晶子の夕食を作るのは、小梅父でも三郎さんでもなく小梅本人のようです
やはり心を通い合わせるのが目的だから、料理の上手い人に任せるより自分で作ろうと考えてのことのようですな

とんとんとん とんとんとん

「どうぞ」

「あっ。ありがとう!」

じゅわじゅわ じゅわじゅわ

「はい」

「あ、ふふふ」

ところがそんな料理風景を見てみると、小梅が欲しい食材や皿を
必要なタイミングぴったりに必ず出してくれる三郎さん!
こ、これは!一言も
「あれ取ってーこれ取ってー」と言われていないのに、完全に小梅と心が通じ合っているかのようです

うおおそしてこの幸せオーラ満開の表情ときたら!小梅×三郎さんは間違いなく最強
いやあここまで夫婦そのものだとニヤニヤが止まりませんな、完成したオムレツを眺める2人の表情が
「私たちの赤ちゃん」を見つめる顔に見えてくるから困る:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「小梅さん、お2人仲睦まじい感じでよかったわぁ」

「え?」

「三郎さんのことです、ああいうのを阿吽の呼吸って言うんじゃありません?」

そんな最高ほんわかカップルの姿を見ているうちに、晶子もすっかり和んでしまったようです。そりゃそうだろうなあ

「残念だけど…私と岩崎じゃああはいかない

い、岩崎ー!!(号泣)こんなところでも否定されなければならんのかあの男は!なんという哀れな…
岩崎の方は晶子と仲直りしようと頑張ってるのに、晶子のほうは
「岩崎あいつ話になんねーわ」もう完全に諦めムードなのが
あまりにも可哀想すぎるだろ:;y=_ト ̄|○・∵. ターン  しかも岩崎って呼び捨てだし…晶子…

「そんなんじゃないのよ、私と三郎さんは。三郎さんはうちに来てもう4年になるし、
 一緒に店で働いているからじゃないかなあ」

「ふふふ、つまり似合いの夫婦ってことね」

「へ?」

「小梅さん、次の試合は今までと違うやり方を試してみましょうよ!」

小梅は三郎さんとの恋愛をまだ意識してないみたいですが、晶子はもう2人を夫婦認定する気満々です。これはいい傾向ですなあ
そんな夫婦のお手本の姿を目にした晶子は、ついに夫婦というものがどんなものかを実感できたようです
そして3度目となるバシンチームとの試合、晶子はこれまでとは違う試みを小梅と試してみることに…

「これより、桜花会と坂下小の練習試合を始めます!」

「小梅さん、今日はあなたの構えたところに投げるから、よろしくね!」

「へ!?」

「相手の苦手なコースを探して、私に指示して欲しいの」

「そ、そんなの無理だよぉ」

「大丈夫、できます!私達は夫婦でしょ?ですから小梅さんを信頼して預けるんです」

「…分かったわ、やってみる!」

そんな試みとは、今までのように晶子が好き勝手に投げるのではなく、小梅がバッターをよく観察してリードを組み立てるというものでした
いわゆるひとつのインサイドワークというやつですな。そしてバッターの立ち位置や構えからして、打ちにくそうなコースを要求する小梅。
その作戦が見事にはまり、今回はバシンチームに大量点を許さないまま終盤へと突入します

「いよーしタロちゃん、ここで引き離そうぜ!」

「タイム!球が浮いてきているわ」

「ええ…低目ね」

しかし終盤ともなると、やはりスタミナが切れてきてしまう晶子。甘い球が増え着実に点を取られ始めたところで、
因縁のバッターのバシンを迎えてしまいます。スコアは7対5でバシンチームの2点リード…
ここはなんとしても追加点を阻止して、逆転に望みを繋げたい場面ですが…

「それと、ちょっと思いついたんだけど…今より遅い球って投げられる?」

「…?やってみましょう」

「私がこうしたら、遅い球ね!」

そんな土壇場で小梅が思いついたのは、緩急をつけてタイミングを外すピッチング!
それに
「手をグーにしたらスローボール」という簡単なサインではありますが、ついにサインプレーまでも自分達で考え始めました
さっきの乃枝の時もそうでしたが、誰に教えられたわけでもなく自分達で考えたってのが凄いですね。小梅達の創造力は大したもんだなあ

「えいっ!」

ふわ〜り

「う…お!?」

「アウト!チェンジ!」

そして打ち気にはやっていたバシンはまんまとスローボールに打ち取られ、これ以上の失点を阻止した小梅たち!
8回裏には1点を返して7対6、9回表も環と雪の華麗な6−4−3ダブルプレーなどで失点を許しません。この2人はさすがにうめーなあ
そして1点を追う9回裏、桜花会最後の攻撃は…

   

「ツーアウトなー!しまっていこうぜー!!」

「おおー!!」

ツーアウトを取られながらもランナーは一塁、そして迎えるバッターは4番巴!
ここは否が応でも逆転打に期待がかかるところです、しかしランナー一塁では相当な長打を打たなければ…

「巴さんこれよ!これ!」

「…」

しかし乃枝の判断は、一か八かの長打よりも確実な単打。今度もまた巴に大振り禁止のサインを送りますが
当の巴はまったく聞こえていない様子でただただバットを握るのみ!これはもしや、極限の集中力で周囲の雑音が耳に入らなくなるという
かの有名な
ゾーンという境地なのでは!?くるか巴の打法開眼!!

(野球の神よ…願わくば仲人となり、我が思いを成就させたまえ…!)

ビシュッ!

「ふうううううんッ!!」

ぶうーん

「ストライクバッターアウト!貴様はいい加減に学習しろオオーーッ!!」

うわああああああ
空振り三振かよおおおおおお!!
こんだけ盛り上げておきながら「やっぱ無理でした」って三振で試合終了!巴お前ってやつはー!!
まったくいい意味で予想を裏切ってくれる面白い奴です巴は

というわけで今度もまた惜しくも敗れてしまった桜花会。とはいえ存分に自分達の力を発揮できた試合内容に、
小梅は満足気な表情ですず川へと帰宅するのでした

「ただいまー!」

「あ、お、お帰りなさい…!」

「…?」

ところが家に帰ってみると、いつもニコニコ爽やかな三郎さんが今日はやけにオドオド挙動不審な感じです
わけも分からず小梅がきょとんとしていると、その時
「ちょっとこっちこい」と小梅父に呼ばれることになり…

「お前、今年で14だったよな?」

「うん、そうだけど」

「なら6つ違いでちょうどいいやな!」

「何が?」

「許婚だよ!」

「はぁ?」

「ハトが豆鉄砲くらったような顔してんじゃねーや!相手は三郎だ!」

「え…えええええええええええ!?」

うおおおおおおきたああああああ!!
まさかの親公認!本物の許婚だとおおおおお!!やべえええたまんねえええええ
これには小梅も顔を真っ赤っ赤にして激しく動揺しております、そりゃあそうでしょう
それにしても
「お前ら結婚しろ」と言う親父がいい笑顔すぎる…どうやら親父も三郎さんのことは心底気に入ってるみたいですなあ

「オ、オムライス、あがりました…!」

「えっ!?はは、はい!」

ぴとっ

「!!」

「ひゃっ!?」

ガタトトッ!!

「あ、ご、ごめんなさいっ!」

「い、いえ、こちらこそ…!」

(ほ、本物の夫婦なんて…私にはまだ早いよぉぉ!)

野球娘くそ面白えええええええええええ!!やっべえええええええ
お互いに意識しすぎてギクシャクしまくりの2人がやばい、もうニヤニヤしすぎて死んじゃう!小梅×三郎さんの破壊力凄すぎだろ!
まさかこの2人がここまでの恋愛関係になるとは思いませんでした、これからの展開の期待感が高まりすぎてやばい
あと地味に三郎さんが小梅にオムライス渡すシーン、
珍しくすず川が大量の客で賑わってましたね
客はキレンジャーおっさんだけじゃなかったんだ!(えー  というわけで次回に続く


■大正野球娘。 第7話「麻布八景娘戯」
 

ビュオオッ!!

「うっ!?何奴!姿を現せい!!」

「富士見中学のピッチャー、井沢殿とお見受けする…ひとつお手合わせ願いたい」

「なに…?辻打ちと言うわけか…面白い、返り討ちにしてくれるわ!」

深い深い夜の闇に包まれていたある日の晩、名のある投手を待ち伏せしては野球勝負を挑んでいた怪しい2人組。
辻斬りならぬ辻打ち…このところ市中を騒がせている正体不明の人物です。
一体こいつら何者なんだ…(えー

「ふ…今宵の虎徹は…血に飢えておるわ…」

言うなりスラリとバットを抜いて打撃の構えを取る辻打ち。近藤勇の真似っことは気分を出しておりますな
しかし”こてつ”が漢字で書けてないところを見ると
あんまり頭はよくなさそうですね:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「聞いたか辻打ちの正体!なんでも身の丈六尺豊かの大男で手足は毛むくじゃら、
 頭巾から覗く瞳は赤くらんらんと輝き、その声は十里四方まで届くらしい…!」

「「ひいええええええええ!?」」

「な、なんだかケダモノみたいね…」

そんな辻打ちの噂は桜花会にも聞こえていましたが、噂に背びれ尾ひれがついて
完全にモンスター扱いをされていました。
単なる「野球勝負を挑んでくる変な女」だっていうのに!それにしても環、巴でさえきっちり正座をしているというのに
一人だけ
こんな堂々とあぐら座りをするなんて…なんて男らしいんだろう…(えー

「小梅さーん、晶子さーん!ちょっといいかしらー?」

「はーい!」

「あなた達の最近の上達には目ざましいものがあります、小梅はバッターの間合いを外すリード、
 晶子は制球力を身につけました」

「てへへ…」

「でもそれだけじゃ朝香中を抑えることはできないわ。だから魔球を覚えてほしいの」

「魔球…?」

えーっ!?スノーミラージュボールをですかァ!?
あれを覚えるにはまずドーム球場を建設するところから始めないと:;y=_ト ̄|○・∵. ターン
それともエリプスハンター?あれを覚えるにはまず
サメを手投げのモリで仕留めるところから(ry
冗談は置いといて、乃枝が言いたいのは要するに変化球を覚えろということのようです
確かに変化球がほとんど生まれていないこの時代、それが出来ればすさまじい武器になると思いますが…

「曲がったり落ちたりする球、カーブやドロップのことよ」

「は、はあ…」

「心配することはありません、カーブなんか子供でも投げることができます!」

「わあ…!アンナ先生、ご指導よろしくお願いします!」

「でも私はストレートしか投げられません。だから2人で工夫してちょうだいね!」

「へ…!?」

な、なんてこと!アンナ先生は変化球にも詳しいようですが、投げ方のコツなんかはさっぱり分からず2人に全部丸投げ!そんなー!
ところで当たり前のようにカーブだドロップだと言っていますが、初めてカーブが投げられたのは小梅達の時代の30年くらい前だそうですね
30年…むーん、それだけあれば割とそれなりに知られた変化球って感じなんでしょうかね?

 

「はあ、はあ、はあ…てえいっ!」

スパアアアン!!

「ど、どう?曲がったかしら!」

「全然ー!!」

「むぐぐ…!」

「握り方を変えてみたらどうかしらー!」

「う、うう〜ん…」

ところがその日、一日中バシバシ投げまくってもさっぱり曲がらない晶子のカーブ。
有効な握り方さえよく分かっていないようで、うんうん悩みながら自分達で試行錯誤しているようです
それにしても、横回転を意識するせいか晶子の投球フォームがかなりサイドスローに近くなってきましたね
確かに横へ変化する球はサイドスローの方が投げやすいそうですし、結果は出てなくても一応は前進しているのかも…

↓数日後

「はあ、ふう、はあ…てえいっ!」

スパアアアン!!

「ど、どう?今度は曲がったでしょう!」

「全然ー!!」

「そ、そんなはずありませんわ!今のはボールが少し落ちたでしょう!」

「そうかなあ…引力だけで落ちてるように見えたけど…」


(C)井上和彦/集英社

まるで成長していない…(えー

なんてこと!それから来る日も来る日も散々投げ込んでいるというのに、無情にも晶子のカーブはさっぱり曲がってくれません
とうとう
「はい今のめっちゃ曲がった!めっちゃ曲がった!」などと、ただの棒球を変化球だと言い張り始めた晶子。
これには小梅もどうしていいか分からず困ってしまいますが…

「ねえ、だったら私が判定してあげようか!」

そこに声をかけてきたのはなんと巴!打席で晶子の投げた変化球と勝負して、打ち取れるかどうか試してみようというのです
まあ巴の魂胆としては、変化球がどうとか言うより
単になんでもいいから小梅と話してハァハァしたいだけだと思いますが:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「ふ…いいでしょう…私の魔球で打ち取ってみせますわ!!」



見よこの魔球の握りを!闘志満々の晶子が見せた握りは…なにィィィ!?ドキドキボールの握り!!
こ、これは2008年にレッドソックスの岡島が開発したという超最新魔球!
こんな未来を往く魔球をこの時代に掴んでいたとは!?とんでもねーぜ晶子!
ちなみにこのドキドキボール、去年のシーズンが始まる前に岡島が練習していたら
手首を痛めてしまって
シーズンをまるまる棒に振るハメになった
という、なんとも縁起の悪い魔球であります:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「ええいっ!」

パッカアアアアアン!!

「なぁ…!?」

「へっへーん!」

「素敵です巴お姉様ぁ!」

「…(#^ω^)ピキピキ」

が、ドキドキボール完全不発!やはりというか、ちっとも曲がってない球を完璧に打たれて打球はスタンドイン!
ああ…しかし辻打ちの時もホームラン性の当たりをパカパカ飛ばしてたし、巴の長打力も相当上がってきてますね
そしてただでさえ変化球が投げられなくてイラついているのに、こんな風に無惨に打ち砕かれた晶子は
おだやかな心を持ちながら激しい怒りに目覚めてしまいます。完全に目が据わってるよ!

「ええいっ!!」

パッカアアアアアン!!

「えええいっ!!」

パッカアアアアアン!!

「ええええいっ!!」

パッカアアアアアン!!

「全部まっすぐだったわよー?」

「………(´;ω;`)」

ピッチャーの自信失わせてどうするー!!その後投げまくったボールもメッタクソに打たれて晶子完全粉砕!
「どう見てもちゃんと曲がってます!」と言い張っていた意地も、少しは持ち始めていたピッチャーとしての自信も粉々です
巴めなんてことを!これで結局は、晶子のカーブがまるで曲がってないことが証明されてしまいましたが…

「はーい今日はここまで!道具をしまって帰りましょう!」

「「「はーい!!」」」

「…」

やはりそんな巴との勝負の結果にショックを隠せない晶子。練習が終わりになっても、心ここにあらずで能面のような顔をしております

「えええ!?こ、今夜も!?」

「しーっ!じゃ、いつも通りにね!」

「…?」

そんな晶子の耳に聞こえて来たのは、今日もまた辻打ちに出かけようと無理を言っている巴達の会話!
変化球の夢を打ち砕いたことに加えて小梅の周りをチョロチョロと…それを見ているうちに
「あのアマぁぁぁ!」
晶子の中でふつふつ何かが沸き上がってきてしまい…

「毎度ありがとうございます、またどうぞー!」

「(こそこそ)」

「あ〜ら、こんな時間にどこへいらっしゃるのかしら、小梅さん?」

「ひゃっ!?あ、そ、そのう…」

そしてその日の晩、辻打ちのためにすず川を抜け出す小梅の前に現れた晶子!どうやら小梅と巴の辻打ちを妨害する気満々のようです
ところでさっきの巴は
「いつも通りに」って言ってただけで何時に集合とかは言ってないんですが
もしかして
練習の後から何時間も小梅ん家の前で待ってたのか晶子さん。なんて執念だ!
それと関係ないんですが、小梅ママに
「またどうぞー!」と見送られて帰っていったのは例のキレンジャーおっさんです。
あんたまた今日もカレー食いに来てたのかよ!どんだけカレー好きなんだ!

「バッテリーは夫婦も同然、それなのに巴さんと辻打ちだなんて!」

「す、すいません…ねえ、どうしてもやるつもり?」

「当たり前です!私は実戦の中で魔球に開眼するのです!」

ガミガミと小梅に説教を始めた晶子でしたが、なんと小梅を巴のところへ行かせない代わりに自分が覆面つけて辻投げを開始!
なんじゃそらー!!
「実戦の中で魔球開眼」とか言って、ちっとも曲がらん今の変化球で勝負する気ですか!なんという無謀な…
そんな晶子達の前に、とある学校の野球部員らしき男が通りがかります。恰幅のいいドカベン体型で、いかにもパワーヒッターという感じですが…

「ふっふ〜ん♪くっちもっとしっまりってくっれなっいの〜♪」

ぶおんぶおんぶおん

「むっ!?何奴!姿を現せい!」

「富士見中学の4番バッター、斎藤殿とお見受けします」

「いかにも!僕が斎藤だが…はっはぁん、さては井沢を負かしたという
 件の辻打ちとやらは、お前たちか!」

「いいえ!私はそう…辻投げとでも呼んでもらいましょうか!」

「ほほう…辻投げとな!」

「一球お手合わせを!」

「是非もない!このバットの錆にしてくれるわっ!!」

そして晶子から投げつけられたバットを受け止め、一球勝負を受けて立つ斎藤!
冒頭の辻打ち巴に絡まれた奴といい、今度も富士見中学のメンバーですか!
それにしても普通なら
「え…何この頭おかしい覆面変質者…」とドン引きしてもおかしくないところですが
「返り討ちにしてくれるわぁ!」とか「バットの錆にしてくれるわぁ!」とかノリがよすぎて最高です富士見中

「その余裕…私の魔球で打ち消してみせますわ!てぇいっ!!」

「ふん!!」

パッカアアアアアン!!

「…」

「…い、今の球、曲がってました?」

「え、いやぁ全然」

「…(´;ω;`)」

つ、辻投げダメだこれー!!完璧に打ち返されたボールは空の果てまで飛んで行って晶子完全敗北!
なんつー立場のない辻投げ!結局
「実戦の中で魔球開眼」というもくろみはバラバラに砕け散り、
晶子はこの日もまったく上達せずに終わってしまうのでした

「0対15で朝香中学の勝ち!」

「「「ありがとうございました!」」」

「やっぱ朝香中は強えなぁ〜!」

そんなある日のこと、何やら野球の地方大会らしきものに参加していた朝香中は、対戦相手をまるで寄せ付けずに快進撃を続けていました
どれどれそんな朝香中にボロ負けした学校の名前は、スコアボードによると…
ふ、富士見中ー!!(号泣)
そ…そんなー!あれだけ辻打ちやら辻投げやらの酔狂にさんざん付き合わされたあげく、朝香中にもこんなフルボッコにされてしまうなんて!
一体富士見中がなにをしたー!

「は〜あ…詳しくって言われてもねぇ…」

って、そんな朝香中vs富士見中の観客席で溜め息をついているのは新聞部の記子。
どうやら桜花会に頼まれてこの試合の偵察に来たようですが、試合の様子をどう書けばいいか分からず悩んでいるようです
それもそのはず、実は記子はこの前の試合でも朝香中の偵察をやらされていたのですが…

「”左翼手がもたつく間に、一塁走者・高原は韋駄天のごとき快足を飛ばし長躯生還、
  初回からの得点に朝香中応援団は沸きに沸く”…なにこれ」

「第十一回全国中等学校優勝野球大会!地区予選での朝香中の試合ぶりよぉ」

その時の様子がこれ、試合の様子を原稿用紙にまとめて持ってきたのですが、乃枝の反応は激しく微妙でした
というか朝香中が参加してる大会は、やっぱり全国大会への出場を賭けた地区予選だったみたいですね

「これはただの観戦記じゃない!」

「へっ?」

「私がお願いしたいのは作戦を立てる助けになる資料!応援団の様子とかは必要ないの!」

「えええ…?お、面白く書けたのにぃ」

「面白さなんてカンケーないの!必要なのは誰がどこにどんなボールを投げて、
 何球目にどうなったとか!もっと冷静で詳しい資料!」

「し、新聞部の仕事で忙しい中、やっと時間を割いて行って来たのに…」

「(ポイッ)これじゃ使えないわ。次からはよろしく」

「ええええ〜!?」

な、なんてこと!微妙な反応どころかメッタクソにダメ出しをして、
「こんな紙クズいらねー」とばかりに
山ほどの原稿用紙をたたっ返す乃枝!てめえの血は何色だー!!
いくら作戦に使えない内容とはいえ、忙しい中これだけ大量の原稿用紙を書いてくれた記子に対して、この態度はひどいですよ
もう少しやんわりとした言い方ってもんが…

そんなわけで一生懸命書いた原稿を紙クズ扱いされた記子は、乃枝が満足するような書き方が分からず途方に暮れていたのです

「は〜あ………ん?」

「今日は6の5か、あのピッチャーならこんなものかな」

って、その時たまたま記子の視線に入ったのは朝香中の最強4番バッター・柳!
何をしているのかと思えば、スコアブックを読みながら今の試合を振り返っているようです
というか地区大会とはいえ6打数5安打のメッタ打ち!?それで
「こんなものかな」と全然満足してないあたり凄すぎます柳
ちなみに乃枝に紙クズ扱いされた前の試合のレポートでも、
「柳の打った打球は空へと吸い込まれていった」的なことが書かれてるので
どうやら前の試合でも超特大ホームランをブチかましたようです、こりゃ到底晶子が打ち取れる相手じゃないな:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「あのう、すいません」

「あっ、君は確か練習試合の時の」

「えへへ、そのせつはどうも(ぺこり)」

「あっ、こちらこそ(ぺこり)」

そんなスコアブックが気になって柳に話しかけてみた記子。どんな反応が帰ってくるかと思いきや、
ぺこりとお辞儀しながら
「どうもこんにちは」凄く人柄のよさそうな感じです

「あのっ、それはなんですか?」

「これはスコアブックと言って、試合の記録簿みたいなものさ」

「え!?」

「これ、僕が書いているんです!」

「よかったら見てみるかい?」

「あ…はい!」

な、なんと!にこやかに記子へスコアブックを手渡したかと思えば、丁寧にその書き方まで教えてくれた柳たち!
いい奴らすぎるぞ朝香中!!なんかもう朝香中の描写を見るたび好感度がどんどん上がっていってしまうな
小梅達の言うように女を舐めてるような奴らだったら、
顔を合わせた時点で「うわこいつ、性懲りもなく偵察に来てるよ(笑)」とか
「スコアブックなんか知ってもお前らじゃ無意味だろ(笑)」とかバカにした態度を取りそうなものですが、
実際は物腰柔らかで気持ちのいい奴らって感じだしなあ、こりゃ差別意識の強すぎる晶子達にも問題がありそうな気が…

「昨夜はどうして来なかったの?ず〜っと待っていたのに…」

「ご、ごめんなさい、急な用事ができちゃって…」

「それならそうと連絡してくれれば…」

「小梅さん、今夜もよろしくお願いしますわねぇ」

「え?な、なんのこと?」

「昨夜から魔球の実践練習を始めましたの。小梅さんと」

「ええ!?わ、私との約束を破って晶子さんと!?」

「それはそうでしょお〜?夫婦ですもの。浮気をしている暇などありませんものねえ」

「は、はい…」

「ダメよそんなのずるいわ!私が先約だもの!ねえ小梅さぁん!」

一方その頃桜花会のグラウンドでは、お互いに小梅を独占したい晶子と巴がみにくい言い争いを繰り広げているところでした
こいつら…あの爽やかな朝香中に比べて
なんと見苦しい奴らなんだ!(えー
もう俺の心情的には完全に朝香中がんばれとしか言えないな:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「ちょっと、何をなさるの!小梅さん、今夜は私と参りましょ!(ぐいぐい)」

「いいえ!私と!(ぐいぐい)」

「私とですっ!!(ぐいぐい)」

「いいえ私とよ!!(ぐいぐい)」

「え、え、えええええ…!?」

「小梅さん!私とに決まってますわよね!?」

「う…う、うん…」

「ええ!?私はどうなっちゃうの!?」

「あ、あああ、ご、ごめんなさぁい…!」

「「ねえっ!!一体どっちを選ぶの!!」」

三郎さんに決まってるだろうが!お前らもう帰れや!(えー
私が私がとお互い一歩も引かずにぎゃーぎゃーと言い合いを続ける2人、どっちか選ぶなんて出来ない小梅はほとほと困り果ててしまい、
結局その日は三人で夜の街角に潜み、野球部員を待ち伏せすることになってしまいます

(ちょっとぉ、もう少し詰めてもらえない!?)

(もう十分詰めてますわっ!)

(あら失礼、投球練習でついた筋肉がジャマをしていらっしゃるのね)

(居合とかのおかげで二の腕が太い誰かと、一緒にしないでいただけるかしら)

(なんですってぇぇぇ!?)

(うう…)

夜になっても相変わらずの言い合いを続ける二人、ずっと間に挟まれっぱなしの小梅が哀れすぎます
そんな2人がいつまでもケンカを続けるうちに、とうとう道の向こうから野球部員の歩いてくる気配が…

(よし!行くわ…よ!?)

「馬見山中学の方とお見受けします!いざ勝負!!」

「よろしくお願いします!」

「待てぇい!勝負はこちらが先だ!」

「考えることはみんな同じなのね〜」

「はぁ…なんで私まで…」

って、そんな巴達と同時にあちこちから飛び出した5人の人影!鏡子に胡蝶に環に雪に静に…お前らみんな辻打ちかよ!
まあさっきはみんなの目の前で
「私と辻打ちやるんだい!」「私と辻投げやるんだい!」とさんざん大ゲンカしてましたからね、
それで辻打ちの正体に気づいて、自分も混ざろうとする気持ちも分からなくは…って、
あれ?もともといた小梅達が3人、続いて現れた鏡子達が5人、足して8人…?あれ…?
の、乃枝だけハブられとるうううううう!!
マジかよ乃枝!一人だけ仲間外れ状態だなんて!というか静が「なんで私まで」と言ってるところを見ると、
静自身は来る気なかったのに誰かに誘われて来たわけで…
つまり乃枝にはその誘いすら来なかったと…乃枝ええええええ!!
そういえばこんなこともありました、前回アンナ先生の話を聞いて2人ずつ「わぁーい」って顔を見合わせるシーン。
9人のうち2人ずつ…となれば最後に1人あぶれてしまうわけですが、当然それは乃枝でした。乃枝ええええええ!!

 

まあしかし乃枝も哀れではありますが、いきなり8人のバット持った変質者に襲われた野球部員の人も相当哀れです(えー
そんな哀れな野球部員の人は一体どんな顔をして…って、こ、これは!?
明らかにただのコソ泥2人組!野球部員じゃねえ!
そう、何を間違ったのか桜花会が取り囲んだのは、野球部員ではなくどこかの家を襲ってきた泥棒2人組だったのです

「え…?ど、泥棒!?」

「どひっ!?やべえ!」

「「「「待てえええええええーっ!!」」」」

そして小梅達に気づかれた次の瞬間、目にも止まらぬ速さで即座に逃げ出した泥棒達!
すかさず小梅達も全速力でこれを追跡しますが、特にスピードの速い胡蝶と巴が一気にグループから飛び出す結果に!
残りのメンバーは横並びになるような感じでドタドタ駆けていきますが、たった一人だけバテバテになってみるみる遅れていく人物が…
誰かと思えば
晶子です。相変わらず全然スタミナがねえええええ!!

「はあ、ひい、はあ…!」

よじよじ よじよじ

「待てえええーっ!!」

シュババァッ!!

「と、巴お姉様ぁ!ふん!ふん!ふん!ふんぎぎぐ!」

「鏡子ちゃん…無理、普通の人には無理よ…」



巴&胡蝶すげえー!!泥棒が必死こいて登っていた壁もなんのその、軽くひとっ飛びで一気に差を詰めていく!
後ろについて来た鏡子はいくらがんばっても登れそうにありません、あいつら2人の敏捷性はハンパないな…

「巴先輩!私が先回りしますから挟み撃ちに!」

「頼むわよ!」

ドダダダダダダダダズザァッ!!

「どわあーっ!!」

「そこまでよ!もう観念なさい!」

さらに留まるところを知らない胡蝶の驚異的な快足!とんでもない速さで回り込みついに泥棒の行く手を阻む!
まったく凄いと言うほかないな…階段を飛び越える胡蝶と巴の動きとか
まるっきり忍者ですよ!



「そうよ観念しなさい!警察に突き出してあげるわ!」

「ぐ、ぐぐぐ…!」

「なんじゃ騒がしいーッ!!こんな時間に何をしとるのかね!!」

ゲェー!?いよいよ泥棒がお縄を頂戴しようという時
いきなり空気読めてないジジイが登場!
「お前ら近所迷惑じゃボケー!!」と小梅達のド真ん中に怒鳴り込んできましたが、
その途端泥棒に組み付かれた爺さんは人質にされてしまう!どあほー!

「てめえら近寄るんじゃねーぞォ!さあ道を空けろ!」

「…」

「す、鈴川さん…!?」

「お、おい…!」

爺さんに刃物をつきつけられて手を出せなくなってしまう桜花会。しかしその時、なぜか小梅だけはまるで動じずに泥棒へと歩み寄って行く!
そ、そんな!
まさかの爺さん見殺し!?まさか小梅にこんなドライな一面があったなんて:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「く、来るな!こいつがどうなっても…」

「あー!!空飛ぶ円卓!!」

「「「「ええっ!?」」」」

バカが見るブタのケツ!その時なんとよそ見戦法で泥棒の注意を逸らした小梅!
そんな空飛ぶ円卓発言にはその場にいる全員が引っかかってしまいます。こ、こんな古典的な手に…はっ(゜д゜)ま、まてよ、
これは100年くらい前の話だから、当時としてはこれも
物凄く画期的な戦法だったのだろうか…(えー

「晶子さん!」

「てぇえいっ!」

そんな小梅が作った隙に、泥棒めがけてボールを投げつける晶子!一度はかわされてしまったものの
すかさず巴が上手く打ち返して泥棒1人KO!そして残る1人も片づけるべく、ふわりと上がったボールに駆けつける晶子でしたが…

「はぁはぁ…!えええいっ!!」

投げ方も握り方も何もかもが無我夢中!とにかく泥棒にぶつけることだけを考えて投げたそのボールは、
なんと
泥棒の目の前で鋭く曲がり落ちて急所に直撃する!こ、これは!?この指先だけで掴むような握り、
そして無回転のボールが打者の手前で急降下する軌道はまさか…!

あれが相原の…
タイガーナックルだ!!
(えー

タイガーナックルかよ!!爪先でボールをはじき出し驚異の変化を生み出す必殺のナックル!
まさに魔球としか言いようのないこの球を習得するとは、晶子も相当なもんだな…現在のプロ野球で投げてもメシが食えますよ(えー

「ねえ!昨夜魔球を投げたっていう話、本当なの!?」

「ええ!」

「すっごいの!がくぅぅぅんって落ちたの!」

というわけで、この泥棒騒動のおかげでついに魔球を自分のものにした晶子。翌日には
昨夜ハブられていた哀れな乃枝にも
それを見せてやろうと、再び巴相手のバッティング勝負を行うことにします

「行きますわよー!ええいっ!!」

「ふん!!」

パッカアアアアン!!

「…」

「ちょっと、全然落ちないじゃない!」

あ…?あ…?ところが自信満々で投げた晶子の球は、まったく変化せず空の彼方へ弾き返されてしまう!なぜにー!?
って…よくよく見てみたら、巴に投げる時の晶子はタイガーナックルじゃなくて
普通のナックルの握りで投げてるじゃないですか!
ダメだよこれじゃ!タイガーナックルを投げるなら、指で握るんじゃなく爪で握るように投げないと…
とりあえず晶子は
八木沼さんにタイガーナックルの説明を受けるべきだと思いました(えー  次回に続く


 

(C)こせきこうじ/集英社






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