■食戟のソーマ 第26話「ひと皿の記憶」
「はっ…残念だったな。まあ落ち込むことはないさ、
当然の帰結ってやつなんだからな」
「…」
「んじゃ、明日も早いし俺は失礼する。お疲れさん」
さて前回、四宮との食戟に0−3で完敗を喫してしまった恵ちゃんでしたが…
今回もまだ硬直したまま、軽口を叩く四宮になんの反応も返せませんでした
というか今回のカラーイラストは四宮単体とは…たぶんソーマ以外の男キャラでこれほどの扱いを受けたのは
四宮が初めてじゃないでしょうか。そう考えると破格の扱いだなー
(…ダメ…だっ…た…)
「田所…わりーな、力に…なれなかった」
「でもお前は胸張れよな、あんないい料理作ったんだからよ」
「ひぐっ…!」
(そんなっ…!違う…創真くんは悪くないの…私のせいで…私のせいで創真くんまで…ごめんなさい…!)
そして敗北を受け入れたソーマが最初にしたことは、恵ちゃんに謝ることでした。
「俺の力が足りなかった、お前はいい料理を作った」と…ああ、この結果でソーマ自身も退学という目に遭ったのに
恵ちゃんへのねぎらいの言葉が真っ先に出てくるとは…ソーマいい奴すぎんだろ…
「実力の差は歴然…四宮の圧勝…というところだな」
パチッ…
「…!?」
「勝負はもうついたはずですが、それは何の真似でしょう?」
「む、いやなに。俺はこちらの品を評価したいと思ったのでな。
票を投じさせてもらったまでだ」
って何ィー!?その時「四宮の圧勝だな」と口では言いつつも、自らコインを恵ちゃんの皿に置く堂島さん!
明らかにこの結果に異議を唱える行為!これには「俺の勝利に文句でもあんの?」と四宮も黙っていられません
そしてお互い、薄ら笑いを浮かべながらも目が笑ってない状態で緊迫した空気が流れることに…
「審査員でもないあんたが何を言い出すんだよ。
しかもそっちの料理を評価するだって?理解不能だぜ堂島さん」
「本当に分からないか?」
パシイッ!
「!?」
そもそも堂島さんは審査員ではないので、「あんたの票とか関係ねーだろバカなの?」と強気な態度の四宮。
しかし堂島さんは「このたわけが!わからんのか?」と、不破刃のように四宮へコインを投げつけます
「田所くんが作った料理…その中に答えはあるぞ」
「…?」
「四宮…お前今…」
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「停滞しているな?」
「…!!」
そしてついに、堂島さんの核心を突く一言が炸裂!停滞している…具体的にどういうことかはともかくとして、
それを言われた瞬間、今まで余裕の表情だった四宮がすっかり青ざめて硬直してしまいます
どうやらよほど痛いところを突かれてしまったようで…それにしても「停滞している」というこのフレーズ、
「天」でのアカギとひろのやりとりを思い出さずにはいられんな…
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(どうしてこの人は知っている…?
俺のこの停滞を…!どうしてっ…!?)
「堂島さん…どうして…そんなこと言い出すんですか…?」
「どうもこうもねぇ…ただそう感じたんだ、
今日会って一見…朧だなって…!」
「朧…?」
「命が煙っている…!お前の全体から、
まっすぐ生きてない淀み…濁りを感じた…!
苦戦の臭い…立ち止まりを感じたっ…!」
「…!」 |
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「たぶんお前は…」
「そんなっ…!よしてくださいよ…!
勝手に…!それって印象じゃないですか!?
根拠も何もない、ただの印象っ…!」
「ククク…そう、印象だ…!
でもそれで十分…難しく考えることはないんだ…
輝きを感じない人間は、
命を喜ばしてないんだなってすぐ分かる。
どうして命が喜ばないかと言ったら…
これまたひどく単純な話…
要するに動いてないのだ!」
「…!」 |
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「命の最も根源的な行動は活動…
動かなくなったら…即、死なんだからよ…たぶん、
お前は遠月学園の卒業からこっち…約数年…
半死っ…!」
「うっ…!」
「わけ分からないんじゃないか…?
自分でもこの数年、何をやってるんだか…」 |
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どこまでも続いてしまいそうなのでここらで止めますが(えー
苦戦だらけの人生で立ち止まってしまったひろに対し、新たな人生の見方を教えるアカギの超ウルトラ名シーンであります
ここから先のアカギのセリフは、読んでてもう本当に目から鱗がボロンボロン落ちるので
まだ見たことがない人にはぜひとも見てもらいたい。「読んでない人は人生損してる」ってよく漫画の褒め言葉に使われるけど
これは本当に読んでない人は人生損してると思う
大分話が脱線してしまいましたが、四宮の「停滞」というのが具体的に何かというと…
『ヒナコ…寂しいのは分かるけど、もう泣かないで。四宮さんを笑顔で見送ってあげないと…』
『だっで…えぐ…卒業してすぐフランスに行っちゃうなんて…聞いでないでず…』
ってなにぃーッ!?なんとここで、これまでの四宮について語られる四宮過去編が開始!
時期は遠月学園卒業式の日、3年生の四宮が卒業していく中、2年生の悟桐田さんと乾さんが見送っていたという…
この2人って四宮の1個下だったのか…そして何より驚愕なのは、四宮との別れを
号泣しながら悲しんでいる乾さんの姿!なんですとー!?
「卒業した四宮先輩がフランスに行っちゃう」のが寂しいってつまりあれか、四宮がそのまま日本に残っていたら
卒業後もいっぱい会いたかったってことなのか!?マジか!?
この2人ってもしかして、在学中は普通に恋仲だったのか!?少なくとも片思いくらいはしてそうな…ひええー
確かに今でも、乾さんは妙に四宮と2人で喋るシーンが多かったし…やっぱりいい仲だったんだろうなー
というか乾さんが現在ガチ百合キャラになってしまったのは、四宮が海外に行くことになった後
四宮以外の男を好きになれなかった→女に走ったとかそんな感じの流れが…?(えー
『四宮先輩愛想ないから、絶対友達できないです!
スタッフともケンカするに決まってます!』
『それは同意…』
『てめえら…はなむけの言葉とかねぇのかよ!?』
『本気なのね…?』
『ああ…フランスで自分の店を持って、プルスポール勲章を獲る。
その年最もフランス料理の発展に貢献したシェフへ与えられる、プルスポール勲章…
もし獲れれば日本人初の快挙だ、やってやる!!』
そしてとくとご覧あれ、これが当時18歳のきれいな四宮の姿であります
というかそれより水原さんがうおおおお!水原さんがうおおおおおおおおおお
可愛すぎんだろおおおおおおおおおおお
なんやこれ!めちゃめちゃ美人やないかい!18歳時の水原さん美少女すぎてびびる
というか四宮とは同級生なのね、どうりで今でもあれだけ好き放題言い合ってるわけだ…
それと「本気なのね…?」って言い方は、なんか四宮に行ってほしくないみたいだし
やはり水原さんともいい仲だったのか!?水原さん=正妻、乾さん=愛人の関係なのか!?(えー
(日本人がフランスで店を開く…それは想像を絶する苦難の道だ、
俺は6年間の修行を経て、有名店がしのぎを削る美食の一等地パリ8区に
SHINO'Sをオープンさせた)
『驚いたよ、その若さでオーナーシェフとは…!まったく見事な料理だった!』
『ありがとうございます…!』
ともかく、そんな水原さんや乾さんを置いて、自らの夢のためにフランスへと渡った四宮。
6年間の修行の後、ついに自分の店を持つことに成功します
というかこの「ありがとうございます…!」って頬を染めてる新人四宮がめっちゃ可愛いんだが
四宮のやつ当時はこんなに無垢な性格だったのかよ!なんかナデナデしたくなるわ、これが後にああなってしまうとは…
『チッ…日本人(ジャポネ)が…!』
(はじめは小さな歪みだった…)
『おいっ…!誰だ!?ソースのルセットを変えたのは!?』
『(ニヤニヤ)パリではこちらの方が好まれますよ?』
『ムッシュ四宮の味作りは、いささかオリエンタルに過ぎると思いますねぇ。
ま…日本人(ジャポネ)には分からないか』
『ハハッ、聞こえるぞ』
がしかし、順風満帆に思われた四宮の店は、思わぬ形で歯車が狂い出してしまいます
「チッ生意気なジャップの小僧が」と嫉妬した店のメンバーが、嫌がらせにルセットを変えて好き放題な料理を始めたという…
なんてこった…四宮が今かたくなに「ルセットを変えたらブッ殺す」と言って聞かないのは、こんな苦い経験をしていたせいだったのか…
(よそ者への差別意識…若すぎる俺への反発、嫉妬…
それは次々と大きな裂け目を作り出し…)
”SHINO'S、日によって安定しない味、サービスに難あり。
5段階評価で3以上を与える客はいないだろう”
『この店にしようか?』
『あまり良い評判聞かないわ、他へ行きましょ』
(店の経営は傾いていった…)
『これ以上入金が遅れるようなら、もう取引はできないよ!』
そんな店のメンバー達の嫌がらせは、最初は些細な問題だったものの…どんどんそれが大きく膨れ上がり、
最後には店が潰れる寸前にまで追い込まれてしまったという…お、おいこれって…
「たったこれだけのことで客を失うこともある。テメェ俺の店を潰す気か?」と
四宮が最初にクビにした生徒に言っていたあのセリフ!?これも実体験からくるものだったのか!?
なんてこった、初めて聞いた時は「なんて理不尽な奴だ」と思いましたが…こんな事情があってのセリフだったとは
ただの悪党かと思った四宮ですが、今回どんどんそのしっかりしたバックボーンが明らかになってますね…すごいぞ疾駆先生
そして来る日も来る日も苦悩を重ねた四宮は、とうとうダークサイドに覚醒してしまいます
ドガッ!
『愚図は俺の厨房に必要ねぇ。消えろ』
(信じられるのは自分だけ…スタッフすら敵と考えろ)
『ダメだ。俺のルセットは崩させない、ルセット通り最後にミロワールして仕上げろ』
『お、お言葉ですがシェフ!この方法でも十分高品質に仕上がります、
それに原価率と作業効率はこちらの方が…』
『料理長は俺だ。不満なら出て行け』
『(ゾク…)ウ…ウィ…シェフ…!』
その後は嫌がらせメンバーを容赦なくクビにし、何があっても自分のルセットを変えさせないという
暴君スタイルを確立した四宮…ここのセリフも全部現在の四宮に繋がりますね
ソーマ達に課題を課した時のアドバイス「周りの奴ら全員敵と思って取り組むのが賢明だぜ?」
恵ちゃんにクビを言い渡した時の「料理長は俺だ。俺の創ったルセットに手を加えることが、
下っ端に許されるわけ無ぇだろう!」というセリフ…全部過去の経験によるものだったのか…
(張り詰めて…張り詰めて…張り詰め通して…)
『美味い…!こんな料理があったのか!フランス料理の王道を外さず、
野菜の扱いで日本的なエッセンスを散りばめている!』
『まさしく魔術級の仕事だっ…!魔術師!レギュムの魔術師!』
(俺はそこまで辿り着いた…)
ワアアアアアアアア!!
しかし、そんな暴君スタイルがあってはじめて大成功を収めた四宮の店。
みるみるうちに料理の評判は国中へと広がり、レギュムの魔術師という二つ名と、あの夢に見たプルスポール勲章を
手にすることになったという…
というか「フランス料理の王道を外さず…」ってやっぱ王道って大事だよねうんうん(えー
漫画界ももっと王道を大事にしろよな…むやみやたらに王道から外しゃいいってもんじゃないんだよ…
ともかく勲章を手にした四宮ですが、むしろそこからが新たな苦悩の始まりだったという…
「本当は気づいているんだろう?
勲章を獲った今、次にどこへ向かえばいいのか分からなくなっている事。
頂に立ち尽くしたままで、一歩も前進できていない事に」
「料理人にとって停滞とは退化と同義、
この勝負で看板料理(スペシャリテ)を出さなかったのは…
自分の料理が止まってることを、
俺達に知られたくなかったからだろう」
「…!!」
そして時代は現代へと戻り…堂島さんの言っていた「停滞」とはこういうことだったんですね
念願の勲章を手にした四宮ですが、そこから先どうしたらいいのか分からなくなってしまったという
結局どこを目指すこともできず、同じ場所で立ち尽くしたまま進化のない毎日を送っていたと…
これはあれですね、ゾイドジェネシスで言うところの
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君はいい料理人のようだが、
私の心は踊らない!
何故だかわかるか?
それは君がすでに
道を極めてしまっているからだ!
進化の止まった料理を
食べていても退屈なだけだ!! |
とかそういう感じか…アイカツでも「”これでいい”と思ってしまえばそこで終わり、
でもアイドルは常に前に進まなきゃ」というセリフがありましたね。
アイドルでも料理でも、トップに立つ人間の考えることは同じってことか…
「黙れェェッ!!あんたに何が分かる!?
遠月グループの雇われシェフやってるあんたなんかに!
この俺の何がっ…!!」
そしてついに、図星をグサグサと突かれ続けた四宮大激怒!
そうか…堂島さんは遠月グループに雇われている身、言わば会社に守られているわけですから、
四宮のように1人だけで店を経営して後ろ盾のない人間とは立場が違うんですな
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「分からない…
堂島さんには分からないっ…!
へこたれる人の気持ちが
分からない…!」 |
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「やろう…と思っても萎えてしまう…
心ならずも停滞してしまう…
そんな人間の気持ちが
分からないっ…!」 |
「食ってみろ。田所くんの料理…」
「…」
しかし、そんな自分の苦悩を吐き出した四宮に対して、もう一度「田所くんの料理を食え」と勧める堂島さん…
そういえばこの料理の中に答えがあると言ってましたっけ、本当にそんなことが…?
「こんなもん食って何になるんだよ…」と言いたげな四宮ですが、とうとう恵ちゃんの料理を口に運ぶことになります
カチャカチャ
「ハ…火入れが甘ぇ」
「…」
「盛り付けも、パテの繋ぎもなってねぇ。堂島さんもヤキが回ったな…」
そんな四宮の口から出てきたのは、「なってねーなこの料理」という余裕のコメント。
しかしその言葉とは裏腹に、食べていくうちにどんどん四宮から余裕が失われていきます
まるで今まで虚勢を張っていたものが、だんだんと剥がされていくような…
モグ…
(……ッ……なのに…なのに何故…こんなにも心に染みるのか…!
拙さはある、だが工夫のひとつひとつに食べる側への気配りが込められて…
張り詰めた心をほどいていくような…この味は…まるで…)
『小次郎ー!!あんたまたケンカしたと!?どーせつまらん意地ば張ったとやろ!』
『ふん…!しゃあしか!俺はひとりでよか!
誰にも分かってもらえんでもよかったい!』
そんな四宮の脳裏に浮かんできたのは、まだ自分が小さい頃の母さんとの思い出。
友達とケンカしてしまい、「別に俺は一人でもいいし」と強がりを言っていた四宮ですが…
きゅっ
『アンタはいつもそげんしてつっぱっとるけ、誤解されやすいばってん…
ホントは優しか子やって、お母さん分かっとるけんね』
『…』
『さ、もうすぐ暗くなるばい…今夜はアンタの好物ば作ったけん、
はよぉ帰って食べようね』
『お…おかぁ…ちゃーん…』
しかし、そんな強がりの態度は虚勢を張っているだけであり、本当の四宮はそうじゃないことを見抜いていた母さん。
「お母さん分かっとるけんね」と優しく四宮の手を取り、四宮もついに本来の自分をさらけ出して泣き始めてしまいます
恵ちゃんの料理もそういうものだということでしょう
「もう虚勢を張らなくていい」という癒しの味…優しさに包まれるようなおふくろの味です
『ほら小次郎見てみぃ!虹の出とらすばい!』
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(この味は…まるで…母の愛…!!)
そしてついに、恵ちゃんの料理で心震わす四宮。
それにしても、ここでレギュムの雪ん子、座敷わらし、コロポックルが勢ぞろいするとは…
それとこの虹がかかるシーンは、シチュエーション的に魔神英雄伝ワタルのOPを思い出すなあ
君の涙、最後にするわけは、虹の橋がもうすぐ架かるから
きらめくRainbow、心の奥の 鍵を開ければ輝くのさ
泣き始めてしまったショタ四宮と、その強がりを「心の鍵」と見ればピッタリの歌詞ですな
カチャン…
そして現在の四宮もまた、優しいおふくろの味に包まれて涙を流していました
ついに四宮を包んでいた虚勢が取り払われ、素直な自分を取り戻したということか
夢を求めてくじけた時は、新しいSTEPで、素直になればいい
なんというワタルOP。というか久しぶりにワタルOP見たけど、龍神丸に乗り込む時のドルゥゥゥゥゥンって音いいよね(えー
そんなわけで今回の話は終わりのわけですが…正直この話はすごいね、脱帽ですよ
まさか四宮にこれほどしっかりしたバックボーンがあったとは…
これまで全部の理不尽な言動にちゃんと理由があって、四宮に対する印象が大きく変わった回でした
なんというか…王道はいい、王道最高と言って何度も誉めてきましたが今回は王道を超えた感あるよね
そもそもソーマが四宮を倒すと宣言したシーンを王道と言っていたわけですが、
結局はそこから派生して別のストーリーを展開していったわけで。
あのままソーマが四宮を倒したら王道で盛り上がっただろうけど、作中のパワーインフレがひどいことになってしまうから
バランスを取るために路線変更したわけですよね。四宮には勝てない流れにして、恵ちゃんの力で勝つのではなく癒すという
展開に持っていき、四宮が病んでいる原因はなんだったのかということを明確に描写したという…
とにかく四宮というキャラを描くのが非常に上手くて素晴らしかった。
今までの理不尽にしか見えなかった言動に、こんな理由があったというのは度肝を抜かれました
それがあったから、この王道から外れた展開でもとても綺麗にまとまりましたよね
単に小手先の展開じゃなくて、最初から最後まで四宮というキャラが一貫しているのが凄いと思います
疾駆先生の手腕すごすぎるだろ…四宮編に入ってから神がかってるわ
今回またこんな神回になるとは思わなかったな…疾駆先生の評価が上がりすぎてやばいぞ…次回に続く!
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