こないだから月刊マガジンでやってる修羅の刻・昭和編が面白いですね
このシリーズは正直、つい最近までやってた修羅の門・第弐門が「いまいち微妙だなー」って印象を拭い切れなかったんで
新しく始まったこの話もあんまり期待してなかったんですが、読んでみたら意外に面白くて今では結構楽しみにしてます



今回のシリーズの何がいいかって、ケンシン・マエダが主役級の扱いなんですよね
ケンシン・マエダは修羅の門・第弐門に登場したキャラなんですけど、俺にとってかなりお気に入りのキャラなんですよ
さっき「第弐門は微妙だった」と言ったわけですが、その第弐門の中でも
ケンシン・マエダと九十九がバトルする回だけは好きだったというか
この回だけはケンシン・マエダが勝つのか九十九が勝つのか、勝敗の行方が分からなくてドキドキしながら読んでましたね

ケンシンの良いところは、変な能力だとか小細工に頼らなくて純粋に強いっていうところかなあ。
たとえば第弐門のラスボスだった海堂は、最終的に「一切の因果を受け入れ飲み込む」というよく分からないチート能力
目覚めてしまって
、相手のどんな攻撃も食らわない・当たらないという、なんだか超能力者みたいなキャラになってしまったし。

あともう1人、第弐門の強敵といえば姜子牙がいますが、こいつはなんというかとにかく戦い方がセコかったというか
正攻法で戦っても九十九に勝てないってんで、ルール違反の暗器をひたすら使いまくったり
あげくの果てには観戦していたヒロインに攻撃して九十九の注意を逸らすとか、そんなゲスい真似しないと勝てないのかよってくらい
セコくて汚い戦術のオンパレードだったんで、正直こいつの戦い方には魅力を感じなかったし早く負けろと思ってましたね

そんな中でケンシン・マエダは、チート能力もセコい小細工もなくとにかく地力が高いってところが好きでした
こういうキャラを好きになるのって、キン肉マンとか読んでても同じ傾向がありましたね
たとえばチート無敵技のおかげで強い時間超人だとか、セコい小細工を多用するキン肉マンスーパーフェニックスよりも
とにかく地力が高くてひたすらに強いガンマンの方が、強敵ってイメージあったしキャラとしても好感が持てるっていうね。

ケンシンの具体的な強さについては、実際に戦った九十九が
「俺はケンシン・マエダと仕合った…そいつの拳はボルトより骨に効いた…
 そいつの投げはライアンより疾く巧みだった…そして宮本より危険を読む勘が優れていた…
 その上で毅波よりも踏み込んできた…」とかって、これまで第弐門で九十九が戦ってきた連中を
ケンシンはあらゆる点で凌駕しているという説明が印象的でした。

こういう「今まで登場したキャラの長所を併せ持っている」って、すごくボスキャラっぽい雰囲気ありませんか?
たとえばキン肉マンの悪魔将軍も「力はサンシャイン!テクニックはザ・ニンジャ!スピードはプラネットマン!
残虐性はジャンクマン!ボディの強靭さはスニゲーター!」
とかって特徴があったし。
なんかさっきからキン肉マンの話ばっかしてるな(えー



さて、そんな風にあらゆる能力が高いケンシンですが、特に投げ技に関しては絶対の自信を持っていて、
「生まれてこのかた稽古以外で投げられたことがない」って豪語してましたよね
普通はこういうセリフを言うのって、その自信を粉砕されるフラグみたいなもんだと思うんですが
(たとえば「この技を破った格闘者は1人としていない!」って技をディオに破られて死んだダイアーさんとか)

ただしケンシン・マエダに限っては、そんなフラグもクソもなく本当に破りようがない投げの実力を持っていて
特に「稽古は終わりだ。お前が俺を投げることは二度とない」って宣言してからは、
本当に1回も九十九の投げを食らってないですよね。そこもやっぱりインパクトでかかったです

何しろ九十九の戦闘スタイルとして、今まで印象的だったのが
あえて相手の得意分野で勝負して、それを打ち破って勝つってことなわけで。
これまで九十九はそういうスタイルで勝ってきて、並の相手なら何が得意だろうが九十九のほうが上を行くんですが
でもケンシンの投げに関しては本当に強すぎて最後まで打ち破れなかったってのが衝撃でしたねえ

あとケンシンと戦った時の九十九って、戦いが始まって割とすぐに眠れる修羅が目を覚ましたわけですが
そんな修羅モードの九十九を相手に、ケンシンはしばらく稽古モードのままで互角に戦ってましたよね
そしてしばらくした後に、例の「稽古は終わりだ」から本気を出し始めて
そうしたら修羅モードの九十九を完全に圧倒してしまったという。

これまで九十九が苦戦する時って、修羅が起きるのに時間がかかったり、半分くらいしか起きてなかったり、
要するに修羅が起きる前の段階でいろいろと苦戦してたわけですよね。で、それが完全に起きた時は相手を圧倒できるっていう。
仮に相手が修羅モードについてくるぐらい強かったとしても、圧倒までは行かないにしろ互角以上までは持っていけたと思います
しかしこのケンシンに関しては修羅が起きようが起きまいが関係ないレベルであしらわれてしまったというか、
修羅の九十九をあそこまで地力で上回った奴って、他にいないんじゃないですかね。(ラスボスの海堂は置いといて)
何しろ戦いが終わった後に、ケンシンに勝利した九十九が
「俺よりあんたの方が強い。俺はあんたより臆病だっただけだ」って言うぐらいですからね。
素の実力ではケンシンの方が上だってことを明言しちゃってるという。それぐらいケンシンの強さは印象的だったなー

話が長くなりましたが、まあともかく俺の中でケンシン・マエダってのはすごく存在感のあるキャラなわけです
それが主役級の扱いで、しかも若くてイケメンな時代が描かれるってんで、今回の外伝は興味ありますねー
それにケンシン1人じゃなくて、飄々とした性格の山田さんと一緒の旅をするっていうのもいい味出してます。

山田さんにバッグをパクられそうになって慌てたり、「ケンちゃん」とか呼ばれて調子が狂ったり
こんなケンシンの姿を見られるってのは貴重ですよ
ただ強いだけじゃなくて、こういう人間味のある一面が見られると面白いですよね。特に北国に2人でやって来た時の

「うわっ寒いなぁ、四月が近いのに雪積もってるわ。今さらだけどケンちゃん寒くない?」

「寒い!!」

「だよねぇ、半袖だもの。バッグに服ないの?」

「道着しかない…」

「え、じゃあそれ着れば?」

「いま着る!!」

とかいうやり取りで笑ってしまいました。ケンシンマエダ萌えキャラかよぉ(えー
作中最強格のキャラが「道着しかない…」とか半袖で寒がってるの面白すぎるんだが。もっとこの2人の旅見てみたいわ

 
 

それと今回はやっぱり、九十九の母ちゃんの静流が出てくるってのもポイントですよね
ケンシンや山田さんと一緒に、静流が鍋を囲んで談笑するシーンとか読んでてニヤニヤしてしまいました
なんと言っても静流は陸奥の一族で、山田さんは不破の一族。陸奥と不破と言ったら
お互いに出会ったが最後、血で血を洗う殺し合いが始まるみたいな
天敵の一族ってイメージありましたが、こんな風に鍋を囲みながら
「いや陸奥ってマジ貧乏なんすよ〜」「ありゃ〜不破はどうかなぁ」みたいなこと話してるのめっちゃ笑ってしまうわ

しかもこの後に山田さんと静流が子作りして九十九が生まれるってことが分かってるから
余計にニヤニヤしちゃいますよね。結婚とかじゃなくて、単に陸奥の後継者のための子作りって話でしたが、
実際のところどんな関係だったのか気になります。あとケンシンはそこにどう関わってくるのかとか。

ケンシンと静流のやり取りも結構見どころあるしなー。特に今回の食事シーンが終わった後に
「それじゃお風呂沸かしますね、ケンさんは鍋を片付けましょう」「お、おう」とか言ってるの笑ったわ
台所で皿洗いしてるケンシンマエダの図とか考えると面白すぎるんだが
あんな最強クラスのキャラが皿洗いとか微笑ましすぎるだろ。やー面白い、このシリーズには今後も期待したいですね

 


■月刊マガジン感想:修羅の刻・昭和編 第参話



「じゃ、朝ごはんにしましょう。卵が6つもあるんですよ、
 
1つは茹でて、もう1つは麦飯にかけて食べましょう」

「お、おう」

「いいですねぇ」

-----------------------

「今日は山に入りましょう、大きな倒木があるんです。
 1人じゃ無理なんですけど3人なら運べるし、それを薪にしてください」

「お、おう」

「いいですねぇ」

-----------------------

「今日はイノシシを獲ります、このあたりイノシシは多くないんですけど、
 昨日大きな足跡を見つけましたからまだいますよぉ」

「お、おう」

「いいですねぇ」

-----------------------

「明日からは燻製まつりです、この前の肉は塩漬け済んでますから、どんどん燻しますよぉ」

「お、おう」

「いいですねぇ」

月刊マガジンでやってる修羅の刻ですが、今回もまた面白かったので感想書くことにします。
最強と名高い陸奥の一族を倒すために、前回陸奥の里にやってきたケンシンですが
あいにくお目当ての陸奥が留守だったために、陸奥の娘である静流、不破の一族である山田さんと一緒に
陸奥の帰りを待ちながら、しばらく共同生活を送ることになります。

その様子が冒頭のやり取りなんですが、
「今日は○○しましょう」「お、おう」「いいですねぇ」「明日は△△しましょう」「お、おう」「いいですねぇ」って
毎日3人仲良く色々やってるのがなんか微笑ましいですね

ケンシンは陸奥を倒すことが人生の目標だし、山田さんは陸奥と相容れない不破の一族なんですが、
そんな風に本来ならギスギスしてもおかしくない3人が、こうやって仲良く共同生活を送ってるというのは
見ててなんだか感慨深い気持ちになってしまいます

「今日は何をするんですかね?」

「今日は稽古をします」

「稽古?」

「私が陸奥になるためには、もっと強くならないといけませんから。
 山を駆けたりイノシシを獲ったりで自然と力はつきますが、技は稽古しないと身になりません」

そんなある日、いつもの薪割りやイノシシ狩りではなく「稽古をする」と言い出した静流。
陸奥の一族としてその名を継ぐためには、それに見合うだけの強さが必要だというわけですね
そして稽古相手には、「陸奥を超えたいんでしょ?」とケンシンを指名しますが、ケンシンとしてはあんまり気が進まない様子で…



「大丈夫です、私はまだ陸奥じゃないし気楽に…
 ケンさんが勝っても陸奥を超えたことにはならないし、なにより稽古ですから、
 私が一本取ってもマエダの負けにはなりませんよ」

「(ピク…)俺から一本取る?あなたが?」

おっとこれは静流のなかなか挑戦的な発言ですよ、「私が勝っちゃってもノーカウントでいいんで」みたいに言われてしまっては
さすがにケンシンも「俺に勝てると思ってんのかコノヤロー」と少々カチンときた様子。
もしかすると静流としては悪気はなかったのかもしれませんが…
だが それが逆に
ケンシン・マエダの
逆鱗に触れた!!
(えー

(C)荒木飛呂彦/集英社

 

(やっぱり若いなケンちゃん、舐めてるんだろうな静流さんを。でも舐めてるのは、静流さんも同じかな)

そんな風に静流に乗せられたケンシンの様子を見て、「若いな〜」と笑っていた山田さん。
ケンシンが思っているほど静流は弱くはないってことなんでしょうね、そしてその逆に、
静流が思っているほどケンシンが弱くないこともまた事実。それに気づいているのは山田さんだけだということか
これは山田さんの眼力が優れているのか、それとも陸奥の強さとケンシンの強さ、両方を知ってるのが山田さんだけだからか?

ヒュン!

(かわした?いや…)

ドオ!

(俺が…投げられ…た!?)

 

(やば…!ケンちゃんその目は…!)

そして始まった2人の稽古ですが、完全に舐めプモードで静流に近づいたケンシンは
不覚を取ってあっさり投げられてしまう結果に!しかしその瞬間にスイッチが入ってしまうケンシン
後のケンシンで言うところの「稽古は終わりだ」のスイッチが入ったということでしょうか
陸奥すらも圧倒する殺人技の数々をいよいよ出してしまうことに…

それにしても、第弐門でケンシンの言っていた「生まれてこの方、稽古以外で投げられたことがない」っていうのは
この静流に投げられた時のことを言っていたんですね、まさかあれが静流に繋がる言葉だとは思わなかったな
これから数十年後、静流の息子の九十九と稽古で追体験すると思うと、なかなか感慨深いものがあります

(この人、本当に鬼…!そして恐い…!でも…!)

いよいよ本気になったケンシンが放つ凄まじい殺気、そして容赦のない殺人技ですが
それを恐いと思いつつも「ニィ…」と思わず笑みがこぼれてしまう静流。それはケンシンも同じです
そう、これこそ命がけの戦いに恐怖と歓喜を感じてしまう鬼の性質。
静流も陸奥の一族なだけあって、心の中に鬼が棲んでるというわけですか

ドクン…!

(え…!?)

 

(あれ…!?)

「やめろケンちゃん!!」

「!?」

がしかし、そんな死闘の最中に体に変調をきたしてしまう静流!
さっきまでケンシンと互角の戦いを見せていたのが、急に力が抜けたように体が動かなくなってしまいます
それを察した山田さんの乱入で事なきを得ましたが、静流の苦しみようは普通ではないようで…

「ハッ…ハッ…!」

「どうした!?俺の投げで…」

 

「違う…」

(やはり…この人は心臓が…)

なんということでしょう、静流は生まれつき心臓が弱かったようで、時たま心臓発作が起こるとこうなってしまうという
キャプテン翼の三杉くんだったのです(えー
そんな自分の弱い姿を見せたくないのか、フラフラとケンシンの傍から離れる静流でしたが…

「ダメですねぇ私…私は陸奥になれませんかねぇ」

「陸奥にはいたんですか、女の陸奥…」

「さあ…」

「不破にはいなかったはずです…」

「じゃあやっぱり無理ですね…私、女でその上できそこないだから…」

そして後を追ってきた山田さんと会話する静流。静流は陸奥を継ぎたいと思っているようですが、
強い者でしか陸奥を継ぐことはできないので、この弱い心臓と女の体では、とてもそれは出来そうもないと…
それと「陸奥を継ぎたくても強さが足りなかった」というキャラといえば、修羅の刻シリーズで葉月というキャラがいましたよね

これがその葉月です。江戸時代に生きていた静流のご先祖様ですが、技やスピードがあっても女性だったためパワーが足りず、
陸奥を継ぐことができなかったという…まさに静流はこの葉月と同じ悲哀を背負ってますね
それにしてもこの葉月、戦いの最中におっぱい見られて赤面したり、
「あたし弱いから陸奥を名乗れない…」と涙目になったりなんかそそるキャラですよね(えー
ちなみに葉月はロリ状態でも登場するんでロリコンにも優しいキャラですよ、さあみんな修羅の刻15巻を買ってくるんだ!!

「ケンさんは強いですね本当に…一瞬だけど心の底から恐かった」

「あなたも強いですよ」

「嘘つきですね、現さんは」

「あなたは強い。あなたが強いからケンシンは鬼の目になった…
 多分あいつ、投げられたこと自体なかったんじゃないかな。
 あなたも投げられた時笑ってましたよ、あれも多分鬼の笑みだ」

さて今回の本編に話を戻しまして。落ち込む静流に対して、「あなたは強い」と励ます山田さん。
なぜなら、静流の中にもケンシンと同じ鬼が棲んでいるから。そしてもうひとつ、ケンシンが投げられたのは
さっきの稽古が生まれて初めてだったから…っておいいいい!!
ケンシンそんなに投げられたことなかったんかい!?さすがに小さい頃とか身内に投げられてたんじゃないのかと思うんですが
山田さんの言葉を信じるなら、ケンシンを投げたのは静流と九十九の2人だけってことになりますね
なるほど九十九と対峙した時も、ケンシンは静流のことをいろいろ思い返してたんだろうなあ
そう考えるとケンシンVS九十九のバトルも、より一層味わい深いものだった気がしてきますね

「できそこないという言葉は僕の方にこそふさわしい…
 あなたとケンシンに棲んでいる鬼が、僕の中にはいない。
 だからすぐ逃げ出すし、恐怖も歓喜もよくわからない。兄がいなければ親父に泣かれてたとこです」



そしてここで、自分の持っていたコンプレックスを静流に明かす山田さん。
そう、山田さんも不破の一族に生まれ、本来なら不破の名を継いでいくはずでしたが
心の中に鬼が棲んでいないために、修羅の戦いを行うだけのメンタルがなく、不破を継げなかったんですな
不破に生まれていながら「山田」と名乗っているのも、不破を継げなかったから仮の名を名乗ってるってことだったと思います

それとこんな風に、精神的に修羅になり切れず後継者になれなかったキャラというのも
やはり過去の陸奥で1人いましたよね。修羅の刻第4巻・アメリカ西部編に登場した雷(あずま)がそれです



「俺は臆病な弱虫で、この手が血で汚れるのが恐い。だから戦わずに逃げてしまう」というのが雷のセリフ。
なので陸奥の後継者については兄に任せた…というのが雷の設定だったわけです。そう考えると
「僕は心に鬼のいないできそこない、だからすぐに逃げてしまうし、後継者は兄に任せた」って
山田さんとかなり似たことを言ってますよね

静流と葉月、山田さんと雷っていうのは、あえて似たように設定されたキャラなんじゃないでしょうか
後継者になることができない悲哀っていうのを、強く読者に感じさせるためにそうなってるような気がします

まとめると陸奥や不破を継いでいくためには、それにふさわしい心・技・体が揃っていないとダメってことですね
静流には心と技がありますが、体が足りなかった。激しい戦いにも耐え得るだけの強靭な体がなかったわけで
山田さんには技と体がありますが、心が足りなかった。命がけの死闘に喜びを感じる鬼の精神がなかったわけです

まあ正直、こういう鬼の精神なんてものは持ってないほうがよっぽどまともなんですが
陸奥や不破のような修羅の世界では、まともではやっていけないってことなんでしょうね

「あなたの技は本物で強い。心臓もいずれ治るかもしれないし、きっと…きっと陸奥になれますよ」

「…根っからの嘘つきなんだなぁ、現さんは…」



そして静流に対して、「あなたは強い、心臓もいずれ治る、きっと陸奥になれる」
ポジティブな言葉をかけ続ける山田さんでしたが…しかし静流は、それが山田さんの優しい嘘だと気づいていました
自分の心臓はきっと治らず、陸奥にもなれないだろうと察した静流は、こうして涙をこらえきれず大泣きしてしまったという…

それにしても山田さんって、いつも嘘ばかり言ってる腹黒そうな食えない奴に見えますけど
実のところは他人のためを思って行動する良い人ですよね
よく嘘をつくけど、それは他人を陥れたり騙したりするためじゃなくて、
基本的に他人を傷つけないための嘘をついてる気がする。
それもやはり、心に鬼のいない優しい性格のなせる業なんだろうか。なんだか山田さんを第弐門からもう一度見返したくなってきたな

「あ…大丈夫か!?」

「大丈夫じゃないです、痛かったですよあの投げ」

「す…まない」

「でも…平気です」

「お、おう」

「ケンさんは強いですね…いいなあ…本物だ」



そして最後に、静流のことを心配そうにしてやってきたケンシン。「痛かったですよ」とか冗談で返す静流でしたが
しかし静流に足りないものを持っているケンシンの強さを先ほど目の当たりにしたことで、
「いいなあ…本物だ」と羨望の眼差しで見つめるのでした

そう、さっき「陸奥を継ぐには心・技・体が揃ってないとダメ」と書きましたが、
それ全部揃ってるのがケンシンですからね
命がけの戦いを躊躇なく繰り広げる鬼の心、陸奥や不破に引けをとらない卓越した技、激しい攻防にも耐え得る強い肉体…
正直なところケンシンを陸奥の養子に欲しいレベルだと思いますが
まあケンシンは陸奥を倒すのが目標だから、養子になるなんて有り得ませんけどね

それと静流が、山田さんとケンシンに対してそれぞれ恋愛フラグ立ててるのがやっぱり気になりますよねー
山田さんに対しては、自分と同じように修羅にはなれなかった者という意味での共感、
ケンシンに対しては、自分と違って本物の修羅になれる者という意味での憧れ、
という風に、それぞれ違った思い入れを持っているように思います。果たして静流がより強く惹かれているのはどっちの方なのか

あと気になるのは、これまでの話でまだ山田さんのバトルが描かれてないってことなんですけど、
どうにか今後の話でそれをやってほしいところですよね。できるならケンシンとの稽古シーンとか見てみたいよなー
山田さんは第弐門でも「言っておくが、俺は稽古なら強いぞ」と九十九に言ってましたが、
それと同じセリフをケンシンにも言うシーンがあったら面白そうな気がします

もしくは逆に、ケンシン相手に稽古じゃなくてガチの果たし合いを申し込むっていうのもアリな気がしますね
なぜならケンシンは強い陸奥を倒すのが目的なわけですが、この時代の陸奥は年老いて衰えた継承者しかいないし
静流も心臓に問題があって戦えないわけで。だから山田さんが代わりになろうとするって展開とかあったら熱いよなー

山田さんは第弐門で、「僕は逃げるのが得意なんだ、逃げるから恐怖も歓喜もあまり知らん…ま、一度あるかないかだ」
語ってましたが、この「一度あるかないか」がケンシンとの果たし合いだった場合は
すげえカッコイイ流れになりそうだなと思ってます

うーんそう考えると次の展開が待ち遠しいですねえ。正直言って、修羅の門・修羅の刻をこれまで読んでて
今が一番面白い気がします。なぜなら今までのシリーズで積み重ねてきたものの集大成って感じがするからね
陸奥や不破を継ぐのに必要なもの、それを継げなかった者たちの悲哀、
これまで断片的な情報しかなかったケンシン、山田さん、静流の過去…といったものが次々に折り重なって
面白いストーリーを構成しているので、このシリーズ読んでてよかったと思えるだけの内容になってるというか
あの微妙だった第弐門も、色々と今作の伏線になってるから読み返したくなるんだよね。
つまり第弐門再評価の流れにも繋がっているという…うーむ上手いぞ川原先生、この調子で頑張ってください。次回に続く!


■月刊マガジン感想:修羅の刻・昭和編 第四話

「ではケンさん、脱いでください」

「えっ」

「寸法を測ります、服作るって言いましたよ。正しくは仕立て直しですけどね」



さて今回の修羅の刻ですが、いきなり静流が「脱いで」と言い出すという驚きのシーンで始まりました
というのも、前回ケンシンと静流が組手をした時に、ケンシンの衣服が破れてしまったんですね
なので静流が服を直してあげるという流れになったわけです
まあなんにしても2人がイチャイチャしてることには変わりませんが…そして、この様子を見せられてしまった山田さんはというと

「…」

「ケンさん、服ができるまでこの着物着ててくださいね。これ昔、私が初めて父さん用に作ったんですよぉ〜」

「お、おう」

「…」



「あ〜〜、僕の長半纏もなんだか傷んできたなぁ」

「(ケンシンとイチャイチャしながら)…え?現さん何か言いました?」

「…嘘を言いました」

「またですかぁ〜、困った人ですよねぇ」

「お、おう」

「ハ、ハッハッハッ!」

ああ、自分もかまって欲しくて「あっ僕の服も傷んできてるわ〜(チラッ)これだいぶ傷んできてるわ〜(チラッチラッ)」
露骨にアピールする山田さんですが、「え、何か言いました?」と完全スルーされる哀れな結果に!
や、山田さーん!!山田さんもけっこう静流には気がありそうなのに、静流にはてんでその気がないのか!?
そんなわけで、イチャコラする2人を指をくわえて見るという悲しい夜を過ごした山田さんは、そのまま翌朝を迎えるわけですが…

「ふう、これでよしっと…ケンちゃんの方できたかい?」



うわああああ!なんてことだ、この朝山田さんはケンシンと手分けして大工仕事をしていたわけですが、
ケンシンの仕事が終わったか見に行くとそこにはまたもイチャイチャしている2人の姿が!
ぐおおおお!これはきつい、この山田さんの立場はきつい、まあ落ち着いて考えれば
静流が作った服をケンシンに渡してるだけなんですけど、山田さんとしては
気になる女の子が自分に見向きもせずに他の男とばっか話してるわけなんで、
これは嫉妬の炎がメラメラと燃えてきちゃいますよねー、マジの三角関係じゃないですか!いやあ面白くなってきたな

「あっ…父さん!」

「あ…ケンちゃん、帰ってきたよ陸奥が」

「…!(ニィ)」

って、そんなラブコメムードが3人に広がる中で、とうとう家に戻ってきた陸奥の継承者・真玄!
「ラブコメは許しまへんでー!!」と言わんばかりの登場タイミングですね
実際に今までの空気が一変してしまいます。これまでの生活で穏やかになりつつあったケンシンも、
「オレの獲物がようやく出てきたか」と不敵な笑みを浮かべ、みるみる鬼の表情に変わってしまうことに…

「オレは前田光世の遺志を継ぐ者、ケンシン・マエダ」

「ほう、前田光世ときたか…」

「名を聞こう」

「陸奥真玄。それが名じゃ」

そしてお互いに名前を名乗りあう2人。真玄の方も「前田光世」と聞いて、ケンシンの素性にすぐピンときたようですね
何しろ前田光世といえば超有名な格闘家なので…この名前を知らない人にもグレイシー柔術の開祖と言えば
その凄さが伝わるんじゃないでしょうか。というわけで真玄も「えっあのグレイシー柔術の人?マジすげー」と反応し、
その技を受け継いだケンシンが来たとなれば、自分に挑戦しにきたと察したという…
となれば、あとはもういざ尋常に勝負と行きたいところですが…

「…」

がしかし、真玄の様子をまじまじ見るうちに、さっきまでのギラギラした笑みが消えていぶかしげな表情に変わっていくケンシン。
そう、その心境をたとえるなら「えっ、この真玄ってよくよく見たらただの老いぼれジジイ?」
言いたげで、「オレの想像してた陸奥と違うんだけど…」とギャップを感じているような…

 

(陸奥真玄…か。確かに強そうだ…でもうちの親父と同じくらいの歳か?
 うちじゃとっくに兄に名を譲ってるんだが…)

ああ、そんな真玄のことを「ジジイすぎるでしょ…」と思っていたのは山田さんも同じのようです
不破の一族にも同年代のジジイがいるようですが、もうとっくに若い奴に跡を継がせて引退してるということで
とても現役で戦うような年齢じゃないってことですな…陸奥とほぼ同類の不破がそうなってるんだから、説得力ありすぎてヤバイです

「陸奥真玄…歳はいくつだ」

「五十は去年超えた」

「………静流さん世話になった。帰る」

「え?」

「オレは陸奥を超えたいがために海を渡ったのだ。
 技の衰えた”元”陸奥に勝つことに意味はない」

ああ、そしてついに「こんなジジイに用はない」と失望して背を向けてしまったケンシン!
このケンシンのセリフは、すでに以前のシリーズで断片的に描かれていたものですよね。こういう流れで言うことになったのかー
まあケンシンが帰り支度を始めてしまったのも無理ありません、
ブラジルからはるばる「オレより強いやつに会いに行く」って気持ちで海を渡ってきたのに、
いざ出てきたのはなんかもう現役引退したような老いぼれジジイだったので、
「ふざけんなよブラジル帰ってブランカと戦ったほうがマシ」と思ってしまうのも当然か…(えー

「ケンさん、それは傲りです」

「…」

「傲りです」

 
 

がしかし、自分の父親が「ブランカより弱い」と言われたことが我慢ならない様子の静流!ヒャー怖い
今までずっと笑顔を絶やさなかった静流が、この時ばかりはめっちゃケンシンを睨みつけてますね
考えてみれば、静流は陸奥になりたくてもなれなかった女で、真玄は腐っても陸奥になった男ですからね
静流にとっては自分にできないことを成し遂げた存在、おそらく憧れそのもの…
それをコケにするなんて、誰であろうと絶対許さないということじゃないでしょうか

(そうだ…最初からその顔だったら、オレの身に棲む鬼も牙を向けたろう。
 しかしあなたは笑った…オレはその笑顔を、自らの手で泣き顔にすることが出来ない)

とその時、戦いを避けた本当の理由を心の中で明かしたケンシン。
静流が最初からこういう「テメー陸奥にケンカ売ってんのかコラ、陸奥なめてんのかコラ」という
敵意の目を向けてきたなら、ジジイの真玄をボッコボコにするのもアリだったと思っているみたいですね

しかし、今まであれだけ屈託のない笑顔を見せられたことで、ケンシンもずいぶん静流に惹かれてしまったようです
もし今ここで真玄をボコボコにしたら、静流の笑顔が泣き顔に変わってしまうわけで…
それが嫌だから戦えないってことみたいですね、それだけ本気で静流を好きになってしまったということか

「いや…そうだな、やってもいい。ただし条件がある」

「え?」

「オレが陸奥真玄、あんたに勝ったら…静流さん、あなたをもらう」

って突然のプロポーズキター!!おいいいいいい!!マジかよケンシン!
ついさっき「静流のことが好き」と意識した結果、「あ、そうか好きなら求婚しちゃえばいいじゃん」
一気に発想を転換させる結果に!なんて大胆な!こうなると真玄が瞬殺されて静流はケンシンの嫁になるのが確定に…

「ならその相手、僕が代わりに受けようか」

ってこっちもキター!!うおおお今度は山田さんかよ!
このまま戦えば静流がケンシンの嫁になるというその時、「させるかよ静流さんは渡さねーぞ」
すかさず待ったをかけた山田さん!いやぁ〜ここまで山田さんの嫉妬展開が続いてきただけありますね
普段は飄々としてる山田さんも、あれだけ嫉妬が重なって悶々としてるところに、こんな結婚とかいう爆弾発言を聞かされちゃ
「僕だって静流さんが好きなんだよ!!」って言わずにいられなかったってことでしょうね

「って…あ、あ〜〜、ま、またウソをついてしまいました」

「ウソ…か」



「ハッ…ハッハ」

(こいつ…)

ああ、しかし静流を好きと公言するのが恥ずかしいのか、「あ、いや今の嘘だから、今のなし、ハハッ」と慌ててごまかす山田さん!
おいおい何をみっともないこと言ってんの!好きなら好きでそのまま堂々としてりゃいいだろ!
ケンシンがまさにそういう堂々とした態度を取ってるだけに、余計山田さんの軟弱ぶりが際立ちます
山田さん…告白する時に「恥ずかしいからごまかして逃げ道を作る」っていうのは、
ものすごくかっこ悪く見えるんでほんとやめてくださいよ!

「変わってるなおぬし」

「いや〜褒められるほどでは」

「”できそこない”…か、うちのと同じ…心と心臓、働きは違うがどちらもできそこない…」

「(ピクン)」

 
 

とその時、「いや〜あんた、せっかく強そうなのに逃げ腰なんすね〜、できそこないっすね〜」
山田さんにきつめの言葉をかけ始めた真玄。というか「うちのと同じできそこないだわ」って話を聞いて
一番ダメージ受けてるの静流ですよ!その話やめてやお父ちゃん!

うわぁ、静流めっちゃプルプル震えながら目がうつろになってるじゃないですか
やっぱり静流としては、自分ができそこないってことを相当気にしてるみたいですね
そんなコンプレックスをガッツンガッツンえぐられて精神的ダメージがやばいですよ!誰かこのクソ親父を黙らせてくれー!

「静流さんはできそこないじゃありません」

 
 

キター!!ここで山田さんが真玄を一喝!
さっきまでのヘラヘラ顔はどこへやら、「黙れよこのクソ親父」と大マジな顔で真玄に睨みをきかせる山田さん!
静流をバカにすることは、実の親であろうと許さんということでしょうか、なんだかさっきの静流と似てますね
自分の尊敬する相手好きな相手をバカにされたことで激怒するっていう。ほんとにあんたら似たもの同士やな

そしてそんな山田さんの姿に、「やだ…かっこいい…」と言いたげに静流も目を奪われていますよ
やったぜ山田さん!これまでスルーされ続けてたけどようやく意識してもらえたやんか!

「ふふ、目が本気になった。さっきの言葉、嘘ではないのだろう」

「あ…」

(こ、このじじい、わざと静流さんを貶めて僕を…)

「マエダよ、確かにわしは老いた。妻を亡くしたばかりで気力もない。
 そんなわしとやっても満足せぬだろう…不破のできそこない、お主にゲタを預ける」

がしかし、さっきの一言は山田さんの反応を見るための真玄の演技!
まんまと山田さんはそれに乗せられてしまい、静流が好きだという本心を見せてしまったんですな
まあしかしこれで良かったと思います、そんなわけでケンシンと山田さん、どちらが静流を嫁にするか
世紀の一戦がいよいよ行われることに…

ゴォッ!!

「組み技じゃない…!?打撃!?」

って、そんな2人の果たし合いが始まったその時、いきなり猛烈な打撃技で主導権を握りに行くケンシン!
これには山田さんや、観戦している静流も面食らってしまいます。なにしろ今までケンシンは組み技しか使ってませんでしたからね
ただし、ケンシンが打撃でも超一流なのは九十九と戦ったあの戦いでも描かれていたので…
今までは単に使う必要がなかったからあえて使ってなかったんでしょうね、組み技だけでも敵なしなくらい強いわけだしな

ゴオオ!!

(うわっ…!迅…!)

さあそして、単なる打撃だけでなく、そこから流れるような組み技、さらに頭突きのようなラフプレーまで
お構いなしに繰り出してくるケンシン!全ての攻撃に迷いがなく、全ての攻撃が繋がっているという怒涛のようなラッシュです
その激しい攻撃に、山田さんはなかなか反撃の糸口がつかめず、防戦一方となっていましたが…



(虎砲!!)

「(ゾク…)なんだ!?」

おっとここで来ました虎砲!ケンシンの攻撃の合間に滑りこませるように拳を忍ばせた山田さん!
虎砲っていうのは、相手の腹に拳を添えた状態から一撃必殺の超破壊力パンチを繰り出す技ですね
決まれば相手の肋骨がバッキバキに折れて腹が陥没するほどの破壊力があり、
一発で試合を終わらせるぐらいの凄まじい威力があります。ただしこの技の欠点は…

ゴアッ!!

「えっ…」

(今の虎砲…体が崩れすぎとったわ。
 しかもマエダは、あの刹那に体をずらしてそのまま投げに入った…!)

そう、この技の欠点は、強敵相手だと避けられちゃってまず当たらないってことですね(えー
なにしろ一発でも入れば試合が終わるぐらいの超絶パンチなので、「おっとあぶねー」と間一髪相手が避けてしまうのが
お決まりの技となっております。まあ要するにかませ技ってことなんですけどね(えー
いやぁ直撃さえすればほんと強い技なんだけどな…本人に負担もないから気軽に出せるし威力はすごいし…



ヴァ!!

とその時、虎砲を避けながらの投げに入ったケンシンでしたが、そんな投げを超高速の脱衣でかわしてのける山田さん!
これは山田さんオリジナル技の脱皮ですね。ものっそい速さで服を脱ぐというギャグみたいな技ですが
天下無双の投げ技を持つケンシンからもこうして逃れられるとは、なにげにすげぇ回避力だな

「へへ…帯がゆるかったかな?体が勝手に抜けちゃったよ」

「ワザとだろう」

「どうかな…ま、いつもならここで完全に逃げ出してる。
 でも…僕にも不破の血が流れてるのが分かった。ケンちゃん怖えわ」



「そうか…オレも少し、あんたが怖くなってきた」

おお、そんな激闘のさなか、ケンシンに対する恐怖と歓喜を感じ始めた山田さん!
そしてそれはケンシンも同じのようです、これこそが鬼同士の戦い!
相手の強さを恐ろしいと思いつつも、それほど強い相手と戦えるのが嬉しいとも感じてしまう修羅の性質です

やっぱり第弐門で山田さんの言っていた、「恐怖と歓喜を感じたのは今まで一度だけ」というのは
このケンシンとの戦いのことを言っていたんですね
そうだったらいいなと前回の感想で書いたわけですが、それが実現して俺もちょっと熱くなってきましたよ

(まったくねぇ…”負けたくない”って思いは、こんな感じかぁ…!)

いつもならとっくに逃げているはずの山田さんですが、それがこうして修羅の領域に踏み込んでまで戦っているのは
「負けたくない」という思いに突き動かされているからでした。
いやぁこの言葉は、今までのシリーズで九十九が繰り返し口にしていた言葉ですよね

その気持ちが誰よりも強いから、九十九は修羅の領域で戦えるしさらにそれを超えたりもできるという。
山田さんにもその気持ちが、この戦いにだけは芽生えているということか。
本当に今シリーズは過去の作品の伏線がこれでもかと活かされてて
これまでの話を読んでてよかったって思うなぁ

ヴァ!!

(マエダが仕掛けた…しかし)

「当たらない…!」



とその時、戦いを再開した2人ですが、みるみる動きが冴え渡りケンシンの攻撃を紙一重で避け続ける山田さん!
おお、さっきまで圧倒されていたケンシンの攻撃をこうも華麗にかわすとは、修羅が目覚め始めたことで
いよいよ山田さんの真価が発揮され始めたんでしょうか、さらに…

ドォッ!!

「ぐはっ…!」

「あのできそこないの身体能力と技…
 それだけならおそらく、不破でも百年に一人…!」

ただ避けているだけでなく、驚異的な動きで次々とケンシンに攻撃を当てていく山田さん!
真玄いわく、山田さんは「心に鬼がいない」からできそこないなだけで、
技や身体能力だけを見るなら百年に一人の天才ってぐらいメチャクチャ強いみたいですね



なんていうか、修羅の門のシリーズだと「心に鬼がいないキャラ」って別に弱いわけじゃなくて
むしろ基本能力だけなら鬼がいるキャラより強いってことが多いですよね
山田さんもそうだし、九十九の兄貴の冬弥なんかもそうだし、あと最たる例はイグナシオですかね
イグナシオは心に鬼がいない代わりに、基本能力だけなら完全にぶっちぎりのデタラメ最強キャラですからね

じゃあ逆に、「心に鬼がいるキャラ」は何が強いのかっていうと、ここぞという時の爆発力が凄いわけですね
ワンチャンスを掴んだら一気にそこで相手をオーバーキルして試合を終わらせるという、
相手を殺すことにためらいがないからとことんやってしまうわけです、いやーこう書くと主人公の性質とは思えねえな…(えー

「ハァ…ハァ…!」

「それでも、あそこで止まる…か」

(できそこないはできそこない…か…)

「フゥ…」

「ですねぇ、ケンさんに息つかせちゃいました。
 逆にケンさんだったら、もう1つ2つ危ない技を畳み掛けてましたよ」

って、華麗な技でケンシンを攻め立てる山田さんでしたが、完全には決め切れずに仕切り直すことになってしまいました
やはりそこが、心に鬼がいる者との違いというか…
鬼がいる者ならここで何が何でも相手を潰して勝っていたというのが、真玄や静流の弁ですね

思うに、山田さんの特徴はたぶん技が綺麗すぎるっていうやつじゃないでしょうか
たとえばスポーツとしての格闘技で、当てたり避けたりのポイントを競うなら山田さんが最強なんだろうけど
なんでもありの殺し合いで相手を潰したほうが勝ちってなると、
もっとえげつない戦い方で貪欲に勝ちに行くことも重要になるっていう…



それにしても静流のやつ、今の状況ってそのへんのヒロインだったら
「やめて2人とも!私のために争うことなんてないのよ!」とか泣き出しそうなもんですが
めっちゃワクワクした顔で「あっ、そこはもっと危ない技で畳み掛けなきゃ〜!」って
どんな思考してんねん!お前マジモンの修羅やな!さすが心に鬼を飼ってる女なだけあります
こいつを嫁にして暮らしていくのもかなり大変そうやな…命がいくつあっても足りないぜ

(甘いなウッちゃん…やっぱりお前は鬼じゃない!!)

とその時、山田さんの詰めの甘さを心の中で指摘するケンシンでしたが…
それより何より「ウッちゃん」って!ついにケンシンも山田さんをそう呼ぶようになったのか!
これまで「僕のことはウッちゃんと呼んでくれ」と言われながらも、一回もそれに応えることのなかったケンシンでしたが…
長い間山田さんと一緒に過ごすうちに、とうとうケンシンの中にも友情が芽生えていたんですね

個人的に、静流への愛情よりも山田さんへの友情のほうが感慨深いなぁ
お互い憎み合って戦うわけじゃなくて、奇妙な友情で結ばれた者同士が笑みを浮かべながら拳を交わすっていうのが、
まるで一種のコミュニケーションのようというか、あの鬼のような男だったケンシンが「ウッちゃん」と呼ぶほど
心を許してるっていうのが、なんかこうジーンときますよね。今のケンシンのウッちゃんへの心境をたとえるなら

き…きさまといた数ヶ月…
わ…わるく…なかったぜ…

(C)鳥山明/集英社

 

といったところでしょうか(えー

「ぬあああ!!」

ゴォッ!!

「ぐはっ…!」

ドゴォッ!!

さあそんな中で、山田さんの蹴りをあえて食らいながらも強引にマウントポジションへ持っていくケンシン!
華麗に避けながら戦う山田さんとは正反対の泥臭い戦術、しかしこれこそがさっき言っていたえげつない貪欲な攻め方であり、
一度有利を取ったらケンシンの殺人パンチが止まることはありません



(やはり…マエダは止まらない…!こやつ…わしより強いかもしれん…)

君が泣くまで殴るのをやめない!!というケンシンの容赦ないパンチ地獄を見て、
「やっべこいつワシより強いかも…」と冷や汗を流す真玄。
もしさっきケンシンの挑戦を受けていたら自分がこうなっていたので内心めっちゃビビってることでしょう

「ぐっ…!」

ザッ!

「逃げるのは本当に上手いな…」

「まったくだ…けど、やっぱり不破の血は…思っていたより濃い…」

「本気でやってもいいか?」「(ニィ)」

って、ケンシンのパンチ連打でKO寸前となった山田さんですが、これだけボロボロにされてなお
笑みを浮かべて「今から本気出す」との発言が!おお…こういう瀕死状態でようやくエンジンがかかってくるところって
息子の九十九にそっくりやな!あいつも毎回死ぬんじゃないかってダメージ受けてからが本番だからなー

いやーほんと、あらゆる場面が今までのシリーズを想起させるような話になってて、
修羅の門シリーズの総決算って感じですよね今作は。読んでて本当に面白いです

果たして本気を出した山田さんは何をする気なのか。まず考えられそうなのはやっぱり無空波を出すってことかなー
陸奥にしろ不破にしろ、奥義といえば無空波ですからね。それで勝負に出るのが一番最初に頭に浮かびました

もしくは不破の奥義の神威を出すっていうのもありそうですよね。山田さんが今回「不破の血は思ったより濃い」と言っているので
それに応じて神威を出すのもありそうな展開です。ただ神威はいつか陸奥を倒すための不破の秘密兵器なはずなので、
陸奥がめっちゃ見てる前でただの他人に神威使っちゃっていいのかって気はしますけどね

あとは山田さん独自の技の引っ掛け蹴りかなあ。修羅の門・第弐門の最終決戦で、重要な役目を果たしたあの技ですよ
山田さんの技と言えばあの蹴りというイメージが強いので、今回もどこかで使ってきそうという気はしますよね
ただ、あの蹴りを必殺技にまで昇華できるのは九十九だけなので、山田さんの蹴りではケンシンを倒すことはできないはず…
なので使うとしたら決め技じゃなくて繋ぎ技、引っ掛け蹴りでスキを作りつつ、無空波や神威に繋げるっていうのが
ちょっと可能性ありそうかなと思ってます

次回どっちが勝つかも注目したいところですよねー、ただどっちが勝つにしても
明らかに勝敗がつくことはないと思うんですよ
なぜなら明確にケンシンが勝った場合、静流はケンシンの嫁になってしまうので
その展開はありえないことが以前のシリーズで分かっているわけです

じゃあ山田さんが勝った場合はどうかというと、そうなったらケンシンが新たな陸奥を待つ必要がなくなっちゃいますよね
自分と本当の意味で互角に戦える相手が欲しいから、ケンシンはこの後九十九が生まれて育つのをずっと待ち続けるわけで。
だから山田さんが綺麗に勝つってことも多分ないと思う。たぶん2人の決着の瞬間に何かが起こるんでしょうね

ありそうな展開としては静流の心臓発作とか?決着の瞬間に静流が発作起こして倒れちゃって、
山田さんはそれを見て止まるけどケンシンは止まらないとかいうのがありそうな気がする
今回の話でも、戦いの最中に「止まってしまう山田さん」と「止まらないケンシン」は描かれていたので、
最後もそうなって不本意な形でケンシンの勝利ってことになりそうかなと。

で、ケンシンはいちおう勝ちはするけど、静流の身を案じた山田さんに後は任せて、自分は新たな陸奥が生まれるのを待つとか
そういう展開になりそうかなあ。ここまで全部ただの妄想ですけど(えー
でもこうやって予想するのも楽しいですよね、それだけこの話が良く出来てるってことなんで
次の最終回でうまく畳むことができたら、修羅の門シリーズで最高の面白さになりそうです。次回に続く!


 

(C)板垣恵介/秋田書店

 

今週のチャンピオン読んだら、刃牙道にいきなり前田光世が出てきて吹いた
前田光世って!前田光世って言ったらあんた、ケンシン・マエダのじーちゃんじゃないですか!
マジかよじーちゃん出てるわ…じーちゃんが他の漫画に出てるわ〜と思ってしげしげと眺めてしまいました

まあ前田光世と言ったら現実の格闘家で、しかも有名人なもんだから
こうやって他の格闘漫画に出てきても不思議ではないんですけども。ただ俺としては修羅の刻の感想書いてるから
どうしてもケンシンのことを連想せずにはいられないっすねー
コンデ・コマって名前も修羅の門で何度も聞いた名前だし。なんだかニヤニヤしてしまうわ

 
 




月刊マガジン感想:修羅の刻・昭和編 第五話

「本気でやってもいいか?」

「(ニィ)」

さて前回、ケンシンとの死闘の中で、かなりのダメージを受けながらもとうとう本気を出すと語った山田さん。
いよいよここからは、人としての自分を捨てて修羅の戦いに身を投じるということなのでしょう
そんな山田さんが、今回最初にやった事というのは…

「逃げるんだよォ!
 スモーキーーッ!!
 どけーッヤジ馬どもーッ!!」

「わぁ〜ッ!なんだこの男ーッ!!」

(C)荒木飛呂彦/集英社

 

「なっ…逃げた!?」

えええええええええええ!?ちょっと何してんの山田さん!?
ここから修羅の戦いが始まると思ったら、ケンシンから一目散に逃げ出すだとォ!?
これは一体どういうことなんですか、本気を出すっていうのは本気で逃げるってことだったんですか!?

「やはり、できそこない…か…」

「違います…あの人は、できそこないじゃありません」

って、そんな逃げ出した山田さんを見て、「やっぱりできそこないだわー」と失望した様子の真玄でしたが
即座に「あの人はできそこないじゃありません」と否定する静流!
おお…このセリフは、試合前に山田さんが言っていた「静流さんはできそこないじゃありません」
対になる一言ですよね。他人からなんと言われようと2人だけはお互いを認め合っているということか。
いやーこれは山田さんと静流のフラグが一気に加速したんじゃないですかね



「川原…と言うより石原だな」

「ああ…投げられたら痛いな…」

「オレは道着でそっちは裸…掴めなくて不利なのはオレか?」

「そんなことは狙っちゃいない。こっちもここでケンちゃんに投げられると、
 下手すれば死ぬ…そういう場所に、自分を追い込みたかっただけだよ」

そしてさっき逃げ出したように見えた山田さんですが、実はそうではなくケンシンを連れて川原へと移動していました
なるほどつまり、山田さんがさっき言いたかったことは

「場所をかえるぜ…」

「スキにしろ、同じことだ」

(C)鳥山明/集英社

 

っていうことだったんやな…(えー  そんな2人がやってきたのは、辺り一面石だらけの岩場です。
山田さんがここを選んだ理由は、下手すれば死ぬような場所に自分を追い込みたかったってことのようですが…
なるほど、俺が思うに、要するに山田さんは自分も修羅の戦いをするためにここを選んだんじゃないでしょうか

この漫画の修羅と呼ばれる連中は、自分や相手が死ぬかもしれないって状況でもなんの躊躇もなく戦えるような奴らだから
山田さんも「今だけは自分もその戦いをやってやる」という気持ちで、あえてこの危険な場所を選んで
自分も修羅として戦う覚悟を決めたかったんじゃないかと思います

というのも前回、ケンシンと戦っている最中に「やっぱりお前は鬼じゃない」と言われていたように
山田さんはさっきの場所だとどう頑張っても修羅にはなれなかったんですよね。
だからもっと危険な場所に移動して、自分を追い込むことで「これから命のやり取りをする」って覚悟を決めたんだと思います

ゴォッ!!

「いってぇ…!」

ガシッ!

(…!?かわさずに掴みにきた!)

さあそして見てくださいこの描写を。これこそまさに、前回の時とは山田さんが違うという最大のポイントです
今回の山田さんは、ケンシンの攻撃をあえて食らって掴みに行ってますよね。
そう、前回の山田さんは、ケンシンの攻撃をひらりひらりとかわしながら、あまり深追いをしない戦いをしてたわけです。
その結果、ケンシンに「やっぱりお前は鬼じゃない」と言われて、相手の攻撃をあえて食らいながら掴みに行くという、
ケンシンの猛攻でボコボコにされたわけです。あのケンシンの行動こそワンチャンスで相手を殺すための修羅の戦いなわけですが

今回は山田さんもそれと同じことをやってますよね。
これが修羅の戦い。自分を追い込むために岩場に移動してきた甲斐があったようです。
今の山田さんなら「お前は鬼じゃない」なんてことは言わせないでしょう
そしてここから山田さんが出す技は、当然ながらワンチャンスで相手を殺すための必殺技に他なりません



ヴァ!!

(巴投げ…!?だがオレは稽古以外で投げられたことなど…ない!!)

おおやっぱり!ここで山田さんが選んだ技は神威だこれー!!
神威とはこんな風に巴投げに見せた体勢から、一撃必殺の蹴りを相手の腹に叩きこむという不破の奥義です。

そう、神威とは投げをフェイクにした打撃技。投げを警戒している相手ほど、これに気づかずはまってしまうというわけです。
特にケンシンは「オレは稽古以外で投げられたことがない」と豪語するくらい投げへの意識が強い奴だから
それこそ神威は効果抜群でしょうね。こう書くとまるで神威はケンシンを倒すために用意されたような技だな

本当は陸奥を倒すための技なんだけどね…ちなみに「一撃必殺の蹴り」というのは、
前回登場した虎砲の要領での蹴りということです。虎砲は相手の腹に拳を据えた状態から、
ゼロ距離パンチを打ち込んで相手の肋骨をバキバキにへし折る技ですが、それを足でやるわけです。
要はゼロ距離からのキックですね。そして神威の囮に使っている巴投げは、相手の腹に足を据えて投げる技だから
神威を仕込むフェイクとしてはもってこいですよね。まさか据えられただけの足から、一撃必殺の蹴りが出てくるとは思うまい…
そんなわけで、これを食らったらケンシンもいよいよ終わりだな…というその時!



ドッギャーーン!!

なんということでしょう、今まさに山田さんが神威を出そうという瞬間、間の悪いことに静流が姿を現してしまいました
山田さんにとってこれはぎょっとする光景ですよ、なぜなら神威は陸奥を倒すための不破の秘密兵器なので
陸奥が見ている前でだけは絶対に使いたくないからです。今思えば、さっき山田さんが戦う場所を変えたのも、
神威を使うためには陸奥がいないところに移動したかったって理由があったのかもしれませんね

(くっ…一瞬遅れた…!)

ミシイッ!!

「…!!」

(なんだこの技…!?アバラが持って行かれた…!!)

そんなわけで、一瞬の躊躇によりわずかにタイミングを外してしまった山田さんの神威。
しかしそんなやりそこないの神威でも、ケンシンのアバラを粉砕するには十分な威力があったようです。さすがは奥義ですね
ただ、一撃KOとは行かなかったので、アバラを折られながらもまだ向かってくるケンシン。
山田さんもどうにかそれに応戦しようとしますが…



気がついたらこんなことに!!うわあなんてこった
両者ともにズタボロで余裕がなくなった結果、すぐそこが崖ということに気づかずに
2人で組み合ったまま真っ逆さまに落下してしまいます。こうなるとさすがに戦いどころじゃありませんが…

ドッパァン!!

(あぁ…まぬけだな…不破の血が騒いだからこその本気…
 不破の奥義を陸奥の前で見せる訳にはいかないと、あんな場所に誘って…なのに、決め切れない…
 あの瞬間、静流さんを見たからか…?いや、違うな…ケンシンを殺す気で出さなかったからだ…
 答えはやっぱり僕が、できそこないってことだ…)

そして崖下の川に落下しながら、自分が神威を失敗してしまったこの結末に
情けなくてやり切れないという気持ちを抱えていた山田さん。
やはり山田さんが戦う場所を移したのは、神威を使って勝つためだったというのが最大の目的だったんですね

そして神威をしくじった理由については、静流がやってきたせいというより、自分がケンシンを殺す気で出せなかったからだと
述懐する山田さん。それが本当の理由なのかわかりませんが、山田さん本人はそう思い込んでいるだけに、
最後まで殺す気になれなかった、つまり最後まで修羅になれないできそこないだったと感じて、
そうとう打ちひしがれているようですね

こはれなんとも無念でしょうね…山田さんは修羅になるために危険な場所に自分を追い込んで、
なんとしても不破の奥義で決めるつもりだったわけですが
やりそこないの奥義しか出せなくて、修羅になれずじまいで終わったわけなんで
まったく山田さんの思い通りに行かなかった無念な結末ってわけですね…
だからこそ「まぬけだな…」と自嘲していて、「結局自分はどこまで行ってもできそこない」だということを
ヒシヒシと感じることになってしまったようです。これは山田さんの精神的ダメージもだいぶでかそうだな…

ザバッ!

「がはっ…」

「ケンさん!」



「大丈夫ですか!」

「はい、静流さん僕は…」

「ケンさん!」

 

「ああ…(ケンさんね…まったく…)」

あああああしかもこうなるのかよ!!
なんてことでしょう、精神的にも体力的にもボロボロの山田さんがやっとの思いで岸に上がると、
なんとそこには山田さんには目もくれずケンシンだけを心配する静流の姿があったのです
いやあああああ!!こんなん山田さん悲しすぎるだろ…

ただでさえ「結局自分は修羅になれないできそこないだった」って落ち込んでるのに、
さらにそこへ「結局静流さんは自分のことなんて眼中になかった」って失恋まで加わるのかよ!
あかんやんこんなん山田さん辛すぎるわ!もう勘弁してやってくれ!
戦う前から静流は山田さんをスルーしてケンシンに構うシーンが多かったですが、ここでもそれを見せつけられるとは…

(負けたくない…その思いだけで頑張ってみたけど…結局…負けかあ…)

そんなわけで、結局静流が選んだのはケンシンだということをヒシヒシ感じてしまった山田さん。
もはや精神的にも大打撃を受けてしまったせいか、そのまま消え入るようにして気を失ってしまうのでした
それにしても「負けたくない…その思いだけで頑張ってみたけど…」って言葉が悲しすぎるな…

今回の戦い、山田さんは鬼でも修羅でもない普通の人間だったわけですけど
「負けたくない」って気持ちだけでひたすら踏ん張って背伸びして、修羅に追いつこうと必死に頑張ったわけですよ
なんで負けたくないのかって言ったら、それはもちろん静流が好きで誰にも渡したくないからってことなわけです。

でも、結局それだけ頑張ったのに、「なんにもいいことなかったよ…」という結末に終わってしまったんですよね
うーん悲しい、悲しすぎる。結局自分はどんなに頑張っても修羅になることはできず、静流を振り向かせることもできなかったという、
山田さんがこの戦いで得たものは何ひとつとしてなかったわけですね、やばいですよこんなの
あまりにも落ち込んだ山田さんがこのまま川に沈んで自殺してもおかしくないレベルだわ…(えー



「気がついたか」

「ああ…やっぱりじじいか」

「いきなりの言葉がじじいか。できそこないのくせに言いおる」

「起きませんよ…なんだか力が入らないんで…」

そしてしばらく後、山田さんが目を覚ますと、そこは陸奥の家で布団に寝かされていました
どうやら川で気を失った後、真玄が家まで運んでくれたようですね
しかし目を覚ました途端、真玄を見るなり「やっぱりじじいか」とやさぐれた言葉を放った山田さん。これってあれでしょうね
静流はケンシンの方に行っちゃったから自分にはじじいしか来ないだろうなって
なんとなく思ってて、実際にその通りだったって考えてるんですよね。悲しすぎるぜ山田さん

「しばらくは養生せい…だいぶ殴られた上にあの距離を落ちたんじゃ、仕方あるまい」

「…」

「と、言いながらさっそくだが、どうする?」

「どうするって…何をですか?」

「静流に決まっておる」

「は…?僕はのびてるんだし、勝ったのはケンシンでしょう」

「のびとるのはマエダも同じだ。いや、マエダは今ものびとる。判定ならお前の勝ちかもしれんぞ」

「え…!?あ、ホントだ…」



って、ここで意外な事実が発覚!すっかり勝負には負けたと思い込んでいた山田さんでしたが、
川に落ちた後気を失っていたのはケンシンも同じだったようで、今こうして起き上がったのは山田さんの方が早いということで
ダブルKOからの判定勝ちで山田さんの勝利という展開もありうると…

なるほど、ドラゴンボールでもありましたねこういうの。天下一武道会で、悟空とジャッキー・チュンがダブルKOになって

(C)鳥山明/集英社

この場合は先に立ち上がって「優勝したもんねー!!」と叫んだ方が勝ちになるというルールが。
今回の場合もそれと同じということか、なるほどなー(えー

「マエダは泳ぎが下手なようでな、溺れた。それで静流が助けた」

「…」

それと静流がケンシンを必死に助けた理由ですが、なんとあの時ケンシンは
カナヅチだったのでゴボゴボ溺れていたようです。えええええ!?
ちょっと待て、ケンシンが好きだから助けたんじゃないの!?カナヅチで死にそうだったから助けただけかよ!

なんてこった、そんな事情があったとは。こうなると山田さんの思い込みも全部ひっくり返ってくるな
それにしてもあのケンシンが実はカナヅチでただの川でめっちゃ溺れてたって、考えると笑えてくるな
単なる鬼みたいなキャラじゃなくて、妙に人間味があるのが好きだわケンシン。最初に陸奥の里にやってきた時の

「うわっ雪が積もってるわ、ケンちゃん半袖で寒くない?」

「寒い(´・ω・`)」

「だよねぇ、バッグに服ないの?」

「道着しかない(´・ω・`)」

とか言ってるの最高すぎたわ、今回も「たすけてー(´・ω・`)」って溺れてたんだとしたら
そりゃあ静流も助けに行くわな(えー

「ま…正味、引き分けだろうな」

「…引き分けなら何も決めなくてもいいでしょう、そもそも僕が勝ったら…なんて話は出ていない」

「なるほど、嘘つきじゃのお前」

「…」

むう、とにかくこの勝負は引き分けということで話をまとめる真玄。まあダブルKOですもんね
そして山田さんはというと、「もうそれでいいし、なんも決めなくていいよ。そもそも俺が勝ったらどうするなんて言ってないし」
投げやりな感じの一言を放っております。どうやらこれは、さっき静流に振られたと思った時のショックが
だいぶ尾を引いてますね(えー  色々ありすぎて精神的に疲れただろうから
ここで静流にアタックするだけの気力が残ってないのかもしれません。もともと山田さんは積極的にアタックしないタイプだしな

「ワシはもう五十を越えた…子も静流しかおらん。静流の婿になれ」

「は!?」

ちょ、ええええええ!?いやいやちょっと!?急になに言ってんですか真玄は!!
なんとここで「静流の婿になれ」と山田さんを静流の婿にドラフト1位指名!!(えー
いやいやなんで!?さっき自分で「この勝負は引き分け」って言うてたやん!?それでなんで山田さんだけを指名したのか…

「そいつは…無理だ、僕は不破の思いをよく知っている…」

「ああ、だからお前、不破の技をワシらに見せなんだな…
 心配するな、不破が陸奥に勝つために四百年練った技を、娘をダシに見たいとも思わん」

「でしょうね…でも、僕は結構ちゃらんぽらんなので…婿になったら教えちゃうかもしれない。
 実はそれが恐い…さすがにそれはご先祖様に顔向けできない」

って、なんとそんな真玄のドラフト1位指名を「丁重にお断りさせていただきます」と断ってしまう山田さん!
なんでやねん!?不破のご先祖様に対する義理立てがあるみたいですが、
この際不破なんかどうでもええやんか!(えー
好きな女をモノにできるチャンスなんだから、不破なんかポイーと捨ててとっとと話に乗っちゃえばいいのに。
意外と一族に対するこだわり強かったんですね山田さん、そんなわけでせっかくの縁談を断ってしまったわけですが…

「一時のでいい。数日の婿になれ、事が済んだら叩き出す」

えええええ!?しかしなんと、断った山田さんに対して
「ちょっとだけだから!ちょっとだけだから!」と口説き落とそうとする真玄!
そんな数日だけでも山田さんを婿にしたいんですか!?でもあれやな…「事が済んだら叩き出す」ってことはつまり、
山田さんが婿に欲しいというよりも、山田さんの精子で静流を孕ましたいってことが本音なのかな…(えー

いやだって、つまりそういうことじゃないですか!山田さんと静流を数日の間やらせまくって、
静流が妊娠したところで「じゃあお前は用済みだから」って山田さんを追い出すってことやろ!?
いやいやとんでもないこと考えますねこのジジイ、静流のことをマジで産む機械としか思ってないんじゃなかろうか(えー

「ひでえじじいだ、なんで僕なんです?引き分けなんだし、孫が必要ならケンシンでもいいでしょう。
 あいつの方が僕より凄いですよ、あいつはもっともっと強くなる。
 鬼だってハンパないのをその身に棲まわせてるし、数年後にはもっと化け物になる…
 僕はできそこないですよ、今日が最高で、あとは下るだけ…」

「ま、父親としての勘かな…こっちのほうが配合が良さそうだというな」

「配合って競馬ですか!?」

「ああ、ただの種馬じゃ。気にせずやればええ」

「くそおやじ」



ぎえええええ真玄のやつ爆弾発言連発してるじゃねーか!とんでもねーことをケロッと言いますねこのジジイは。
ケンシンじゃなくて山田さんに婿になれと言っているのは、なんとなく配合が良さそうだからってあんた
ダビスタやってるんじゃねーんだぞジジイ!(えー

しかも種馬発言の初出はここだったのか。後の時代に山田さんが「自分は父親じゃなくて種馬だから」って
繰り返し言ってるから、なんでそんな自虐めいたこと言ってるのかと思ったら最初に言い出したのジジイかよ!
そして極めつけが「気にせずやればええ」ですよ、すげーこと言ってんなこのジジイは
「気にせずウチの娘とセックスすればええ」って気にするわボケ!!(えー
こんな父親見たことねーよ!一般的な父親だったら「お前なんぞにウチの可愛い娘をやれるか!」とか言いそうなもんですが
むしろ逆にどんどんセックスしていいよ(^^)と言ってくるとは、まったくたまげたなあ

「ま、すぐに答えは聞かん。考えろ(すたすた)」

「はあ…」

「受ければいい」

「あれ!?ケンちゃん…気づいてた?」

「途中からな」

「なんでオレに譲るんだ、静流さんを欲しいと言ったのはケンちゃんだろ」

「”オレが負けた”と静流さんが思ったからだ…
 オレを助けに来て「大丈夫か?」と…あれは負けた奴に言うセリフだ」

「溺れたからだろ…」

「なおさらだ。ほっとかれたら死んでた」

(まったく…人と鬼、受け取り方はそれぞれだな)

って、そんな真玄の申し出について「受ければいいじゃん」と言い出したケンシン!
どうやら今までの話が耳に入っていたようで…しかも今回の勝負、ケンシンとしては
静流の助けがなければ死んでたから、自分の負けだと思ってるようですね

いやあ山田さんも言ってますが、山田さんとケンシンでお互いに受け取り方がまったく逆ですね
山田さんは、静流がケンシンを助けに行ったのを見て、「ああ、静流さんは僕よりケンシンが好きなんだ」と受け取り、
ケンシンは、静流が自分を助けに来たのを見て、「ああ、静流さんは俺が負け犬だと思ってるんだ」と受け取ったという…

なんというか、山田さんは静流の行動を恋愛メインで考えてるのに対して、ケンシンはバトルメインで考えてますよね
これがやっぱり人の山田さん鬼のケンシンの違いというか、だからケンシンの思考としてはあの勝負は負けであり、
自分はいさぎよく身を引くってことのようですね。となると山田さんの恋のライバルはいなくなったわけか…

「お前強いな、あの技なんだ?」

「ただの巴投げだ…それもちょいしくじった」

「そうだろうな、それでもオレは勝てなかった」

「次やったら確実に僕が負ける、今日が人生で最強だ」

「そうだろうな、本物の陸奥はもっと強いんだろうな…」

「ああ…強いだろうな、とんでもなく」

そしてもう静流を取り合うという関係から解放されたせいか、「お前強いな、あの技なんだ?」といった雑談を始めた2人。
いいですねこういうの、男の友情って感じで。「陸奥ってもっと強いんだろうなあ」「そうだろうなあ」とか
まだ見ぬ本物の陸奥に思いを馳せる図とかも、なんだか夢を追いかける少年のようで、微笑ましく思えてきます



「オレはもっと強くなる。そして必ず陸奥を超える。託していいか?」

「何を?」

「オレの二十年後だ」

「ああ…」

そして最後に、二十年後に本物の陸奥と戦いたいという夢を山田さんに託すケンシン。
そのためにも、山田さんと静流に強い子供を産んで欲しいってことを言ってるんですよね
それを「ああ」と受けた以上、山田さんも責任持って静流を孕まさないといけませんね(えー

山田さんはさっきの真玄との会話では、「僕が種馬やるんですか!?」とうろたえてましたが、
ここまできたらもう後には引けないでしょう。あとは静流をちゃんと口説いて、
それはもう強い赤ん坊を産んでもらわないと…

「できません。私は陸奥になりたかったんです。だから不破の嫁にはなれません」

「えっ…」

「婿ももらいません」

「で…ですよねぇ…」



って山田さんフラれとるーー!!(ガビーン)
ええええええええ!?なんやねんこの展開は!?親公認の仲になって恋のライバルもいなくなって、
いよいよ大手を振って静流を口説きに行った山田さんですが、
「嫁にもならねーし婿もいらねーよハゲ」と言われて終了ですか!?

そ…そんなー!!確かに今まで静流の意思とかガン無視で周囲だけで盛り上がってたけども!
ケンシンが勝手に「静流さんを嫁にもらう」とか真玄が勝手に「静流のこと孕ましていいよ」とか言い出しただけで、
静流自身は「そうですね結婚して赤ちゃん産みたいですね」とか一言も言ってないんで
今回のことは勝手に話が進んでいっただけなんだけども!まさかこんな結末になろうとは…無残にも山田さんが振られて終了か…

「でも…あなたの子なら、産んでもいい…と、思っていますよ」

「え!?」

ってえええええええええ!?マ、マジか!?ここでこんな発言がくるなんて!?
嫁にはならない、婿もいらないって言うから、てっきり子供を産む気はないのかと思ったら
「あなたの子供を産んでもいい」って面と向かって語る静流!

それぐらいには山田さんのこと意識してたんすか!?いやーこれにはびっくり仰天ですね、まさかそんな風に思っていたなんて。
片思いしてる女の人からこんなこと言われたら、男としてはもう天にも昇る気分だろうなあ

「よろしくお願いします」



「はい」

そんな風に静流に言われた山田さんは、もちろんその場で承諾して静流との子作りとを誓うのでした
この土下座して「よろしくお願いします」っていうのは、てっきり最初見た時は
「お願いします一発やらせてください!!」ってセクロスを懇願する土下座をしてるのかと思いましたが
よくよく考えたらこれってあれですよね、「ふつつか者ですがよろしくお願いします」って
夫婦になる時の挨拶をしてるんですよね。わずか数日とはいえ婿になるわけですから。
いやあ単なるセクロスのための土下座とか思ってすまんかった山田さん…(えー

4年後…

「かあさーん!じいじがシシとったー!」

「まあ、それじゃ今夜は…」

「猪鍋ですよぉ!」

「ですよぉ!…あれ?」

そんなわけで、静流と山田さんがガチ子作りをしたその4年後、陸奥の家には3歳半になる元気な子供が生まれていました
この子供は九十九の兄貴の冬弥ですね。ちなみに山田さんはというと、真玄との約束通りに静流を孕ませた後は
陸奥の家から出て行ったようで、この日は4年ぶりに静流たちの様子を見にやってきたようです

「おじさん、だれ?」

「悪人だぁ〜、がぁ〜」

「あくにん?」

ドカバキ

「あ、まいった…ウソ、悪人ウソだから」



って、陸奥の里に4年間近寄らなかったせいか、我が子にも父親だとはまったく認識されていなかった山田さん。
「悪人だ〜」と冗談を言って近づきますが、「だったら退治してやんよ」と冬弥のパンチキックを食らってしまいます
冬弥はまだ3歳ちょっとのようですが、早くも武術を仕込まれてメキメキと腕を上げているようですね

「三歳半であの動きか、すごいな」

「天才ですよぉ。でも少し、あなたに似すぎてるかもしれない」

「え?」

「優しい子です…今日もあなたが力を抜いた途端、動きを止めた…」

そんな冬弥の格闘センスは、山田さんから見ても静流から見ても、天才としか言いようがないようですが…
しかし静流は、冬弥の中には鬼が棲んでいないということを薄々感じ始めていました
そう、さっきの山田さんへのパンチキックにしても、鬼だったら山田さんがまいったと言おうがなんだろうが
容赦なくパンチを打ち込み続けなければならないと…

いやいやいや、そう考えると鬼とか修羅って奴らは本当に頭おかしいな!(えー
降参してる相手にも容赦ない追い打ちをし続けるのが普通なのかよ!まったくこいつら狂ってますわー
まあともかく、冬弥も鬼が棲んでないって意味では、いくら天才とはいえできそこないにしかなれないってわけですよね
それを知ったためか、山田さんと静流はこの日もまた2人目の子作りに励むことに…

「私は陸奥になれなかった、陸奥の嫁にも不破の嫁にもなれない…でも、陸奥の母になれます」

そんな子作りをの後の夜遅く、静流は山田さんと一緒の布団の中で「陸奥の母になれる」と語っていました
これはあれでしょうか、ピロートークってやつでしょうか(えー
ともかく「陸奥の母になれる」って一言からして、今度の子供には鬼が宿っている確信があるんでしょうか?

「さっき夢を見ました…大きな流星が落ちてきて、その星の石が私のお腹に入る夢。
 ひょっとしたらこの子は、圓明流史上の最高傑作になる…そんな気がちょっとしちゃいましたよ」

そんな静流の確信というのがこれでした、夢の中で大きな流星が自分のお腹に宿ったと…
そして生まれてくる子供は、陸奥・不破の歴史の中で最高傑作になるかもしれないと。
このセリフは山田さんも第弐門で何回か言ってましたよね。静流がこう言ってるのを聞いて山田さんも言い始めたわけか

そして時は流れ…石は海に出る

「九十九、行って来い」

そして2人の子作りからさらに16年後、一人前の陸奥となった圓明流の最高傑作・陸奥九十九
陸奥の里を出て世界の猛者たちとの戦いに身を投じるのでした。
このシーンが修羅の門第1話に繋がるってわけですね

そんな九十九の後ろ姿を見送るのは、病で亡くなった静流ともう1人の若い男…
これ、最初見た時に「誰やねんお前」と思いましたが、兄貴の冬弥ですね(えー
冬弥は九十九を一人前の修羅にするために、あえて九十九に死合いを挑んで命を落としたので…
そんな冬弥の事情を知らない人は、これ見た時にマジで誰か分からないか、もしくは
死んだ山田さんが霊になって静流と並んでる図だと思うかもしれませんね(えー

こう、スターウォーズで最後に霊になって出てきたオビワンやアナキン的な…
なんにしろ山田さんは死んでないからね!?まだまだ元気だからあの人は!
ともかくこれが締めの場面となって修羅の刻・昭和編 完となるのでした

ただ俺の希望としては、この最後のシーンは九十九の旅立ちにするより
ケンシンと山田さんが静流の墓参りをするシーンにしてほしかったかなー
山田さんは第弐門のラストで静流の墓参りをしながら、ケンシンの話を真玄としてたんですよね



ここにケンシン本人が現れて一緒に墓参りする場面とか見たかったなー
今回の話で、若かりしケンシンと山田さんは「本物の陸奥はきっと強いんだろうなあ」「そうだろうなあ」って夢に描くように
話をしてたわけじゃないですか。そして20年後、実際に戦った感想を山田さんに語るシーンとかあったら
もう何も言うことなかったなー。俺はなにげに今回の話でケンシンと山田さんの友情に一番グッときたので
それが最後の締めのシーンにも使われてたら最高だったと思いますね

まあとはいえ、この修羅の刻・昭和編には十分楽しませてもらいました。
この間も書きましたが、この昭和編の話は今までの修羅の門・修羅の刻シリーズの集大成だと思うんですよね
鬼が棲んでいない者、陸奥を継ぐことのできない者、謎だらけだったケンシンの過去、宿敵なはずの不破と陸奥が産んだ九十九、
といった具合に、今までのシリーズで散りばめられていたキーワードを結集させて作り上げられた話というか

今までの話を読んでてよく分からないモヤモヤがあった部分を、一気にパアッと晴らした内容と言いますか
そういう意味ではやっぱり、従来のシリーズを読んでた人ほど楽しめる内容だったと思いますね
何十巻もある旧シリーズを全部読むのは大変ですけど、でも「今まで読んでて良かった」と思うだけの面白さがあったように思います。



今にして思えば、この第弐門の最終決戦が終わったシーンとか見返してみても、
山田さんが最後の戦いに勝利した九十九を見て、こんな風に号泣しながら
「静流さん…あなたの子はやはり、圓明流史上の最高傑作だ」ってつぶやく場面があるんですけど
そのセリフもよりいっそう重く感じますよね

最初読んだ時は「ふーん」ぐらいにしか思わなかったわけですが、
山田さんと静流の間にあんなドラマがあって、生まれてくる子供に対して静流がああいう予感をしてたってことを知った今では、
この山田さんの心境にすごく重みが増したような気がしますね。

先に旧シリーズを読んでると昭和編が面白くなり、さらに昭和編を読んだ後に旧シリーズを見返すとまた面白くなるという
この面白さのループ。そういう意味でこの昭和編は、修羅の門の面白さの中心にあるというか、本当よくできてると思いますよ
ひょっとしたらこの昭和編は、修羅の門史上の最高傑作になる…
そんな気がちょっとしちゃいましたよ
(えー


(C)川原正敏/講談社






トップに戻る