■おおきく振りかぶって9話
「過去」
「榛名はプロになるために野球やってるんだ。
でもあいつ、中学で故障したらしくてさ…元々俺サマな性格なうえに、
防衛本能に火がついてて、ものすげえ扱いづらい奴だったよ」
榛名について興味津々の栄口と三橋に、シニアで榛名と組んでいた頃のことを語り出した阿部。
榛名はシニアに入る前、学校の野球部で監督にひどい酷使をされ続け、膝を壊してしまった過去があったのです
野球部を辞め、リハビリを経てシニアに入ってきた榛名。
しかしその頃の榛名は、まるで抜き身の刃物のように恐ろしい雰囲気で誰も寄せ付けませんでした
「ちっ…一年なんかが的じゃ思いっきり投げらんねぇな」
「(的だと…!?)…なんでですか」
「ケガすっからだよ」
「防具つけてりゃしないです、打者が立つわけじゃないし…そこまでキャッチング下手じゃないです」
「おい…ケンカ売んなよ」
「ケ…ケンカなんか売ってません」
「俺はムカついたんだよ」
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”ムカつき”が止まんねーよ…!?(ビキッギリッ
うへぇ榛名おっかねー。なんだか特攻の拓とかのセリフがとっても似合うような雰囲気です(えー
そんな榛名とバッテリーを組まされることになった阿部は、こんなおっかない相手に一歩も引くことなく
何度も衝突を繰り返しながら、なんとか榛名とのコンビを保っていくのでした
しかしそんなある日、県大会ベストエイトがかかった試合の時のこと。
豪打を誇る相手チームに打ち込まれた自軍のピッチャーは、1回でKOされてベンチで泣き崩れてしまいます
「ごめんみんな…ごめん元希…俺5点も取られちゃって…」(元希=榛名の名前)
みんなへの申し訳なさで今にも消え入りそうなピッチャー。
しかし精一杯の投球をしたその人を誇りに思いこそすれ、責める仲間など誰一人としていはしません
むしろ、なんとしても点を入れて援護してやりたいと思うのが仲間というもの。
安西先生も言っていました。希望を捨てちゃいけない、諦めたらそこで試合しゅ…
「5点はムリだな」
え…ええ!?Σ(゜д゜;)いやちょっと待ってください、諦めたらそこで…
「お願いします…全力で投げてください!(この人が全力で投げてくれれば望みは…)」
「嫌だね。中学の大会、しかも負け試合で万が一にもケガしたくねえもん」
「な、なら一球…一球でいいから投げてくれませんか!
そのスピードがあるって相手に知らせるだけでいいんです!」
「しつこい。それ以上言ったらマウンドを降りる」
そ、そんな…安西先生、俺たちはこいつに一体何と言ってやればいいんですか:;y=_ト ̄|○・∵.
ターン
コントロールの悪い榛名が相手では、阿部の緻密なリードもほとんど意味がありません
コースを投げ分けることができないので、球種で打者の裏をかくしかないわけですが
榛名の球はストレート、スライダー、全力のストレートの3種のみ。しかも全力で投げないのではたったの2種だけです
思い通りにできないリードに四苦八苦しながら、それでもなんとかギリギリの線で試合を進めていく阿部。
しかし試合終盤、ついにコントロールを乱した榛名がピンチを広げ、フォアボールでの無死満塁となってしまいます
誰もが点を取られまいと緊張感を高める中、何やら数を数え出した榛名は突然マウンドを降りてしまいます
「え…!?まさか…今のが80球目…!?
公式戦なのに…自分のフォアボールで満塁にしたのに…
80球投げたら、マウンド降りていいのか…!?」
なんということか、必死で戦うチームメイトのことなど意に介さぬように、
榛名は「80球投げたから」という理由であっさりマウンドを降りてしまったのだ。
しかも今は榛名の出したフォアボールでピンチの場面。その責任すらも榛名は簡単に放棄してしまったのです
チームメイトと言うにはあまりにも冷たいその態度に、阿部は雷にでも打たれたような衝撃で呆然となってしまいます
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榛名を失った阿部のチームにもはや相手を抑える術はなく、
終盤ではメチャクチャに打ち込まれて大差で敗れてしまいます
しかし、スコアボードを見ると最終的な阿部のチームの得点は7点。
もし二回以降を榛名が全力で抑えていれば、勝っていたのは阿部のチームのはずだったのです
榛名の気まぐれでこの試合を落としたことは、阿部にとって悔やんでも悔やみきれない出来事となってしまいました
でもこんな時にナンですけど、このスコアボードって点数の合計間違ってますよ!
5+3+5+2+8=23…って21にならないじゃないですか!スタッフしっかりしてください
「なんで俺が…チームを辞めたくなんなきゃならねえんだ…!あいつがっ…!」
そして試合後。あまりの悔しさに、電気もつけず球場のトイレで一人涙を流す阿部。
そこへタイミングの悪いことに、偶然にも榛名がやってきてしまいました
「あ…?は〜あ…泣くほどのことかよ」
「……ッ!!」
俺たちをなんだと思ってやがんだこの野郎!ついにブチ切れた阿部が榛名に掴みかかる!
しかしガスンと壁に押しやられた榛名は、阿部のことなど目に入らないかのように肩をジロリと見つめるのでした
「てめえ…左肩ケガしたらどうすんだよ…!放せ…!」
どこまで行っても自分の体のことしか頭にない榛名。
そんな榛名に完全に幻滅してしまった阿部は、その後も榛名との仲を修復することなくシニアでの生活を終えたのでした
「うっ…うっ…うう…」
(阿部君は榛名さんにちゃんとこっちを向いて欲しかったんだ…
ちゃんとバッテリーになりたかったんだ…プロになってからじゃなくて、
阿部君と今やってる野球を大事にして欲しかったんだよね…)
阿部の過去話を聞くうちにボロボロともらい泣きしてしまう三橋。
なにかというとすぐ泣く三橋に、阿部も榛名とは違う理由で扱いに困ってしまいます
「お前さあ、もうちょっと泣いたりキョドったりすんの我慢できた方がいいぞ?
マウンドでは…そうだな、無表情もいいけどやっぱ笑顔がいいね。
バックは安心するし、相手はむかつくし」
おわああああああ似合わねえええええ
恐い!恐すぎる!爽やかな笑顔のはずなのにこの異様なプレッシャーは一体なんなのだろうか(えー
世界一笑顔の似合わない男・阿部。というか普段あんまり笑わないのに、
やろうと思えばあっさりこういう顔ができるところが逆にこええ:;y=_ト ̄|○・∵.
ターン
そして試合の方は、榛名が4回以降まったく相手を寄せつけず武蔵野第一の勝利。
できれば次の試合も見ていきたい西浦でしたが、
落ち着きのないメンバー達が鬼ゴッコをやりだしたので、頃合いと見たモモカンはこれで切り上げることに。
って…鬼ゴッコやってるの誰かと思えばクソレフトかよ!
なんて幸せそうに鬼ゴッコをやるんでしょうかコイツは。世界一笑顔の似合う男・水谷。さっきの阿部と対照的すぎて笑えます
そして試合後、久しぶりに会った阿部に一言言ってやろうと思っていたのに
先に帰られてしまって「なんだよアンニャロー」と愚痴をたれる榛名。
阿部にとっては最低最悪の投手である榛名でしたが、
その榛名も今やこれほど爽やかな顔ができるようになっていました
阿部とはあんなどうしようもない別れ方になってしまいましたが、
荒んでいた時期に一人だけ真正面からぶつかってきた阿部の存在は、
榛名が明るさを取り戻すのにとても大きなきっかけとなっていたのです
そう、阿部と榛名の関係はこどものおもちゃの沙南と羽山みたいなもんだったのです(えー
榛名が阿部に声をかけてくるのは、多少なりとも阿部にそういう感謝の気持ちがあるからでしょうか
そんな榛名の変化に阿部が気づくのはいつの日か…次回に続く
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