おおきく振りかぶって最終話 「ひとつ勝って」
「泉ィー!三橋来た?」
「来てねーよ、今日は休みだって」
「俺もうサッカー負けたから、昼休みちょっと三橋んち行ってくるわ」
今日は西浦高校の球技大会の日。野球部メンバーも今日はサッカーやらバスケやらに精を出していましたが、
昨日限界を超えて投げまくった三橋は家でぐったり寝込んでいました
「阿部も昼三橋んち行くの?俺も食いに行くよー!」
「もってなんだよ…?」
「今日はカレーだもんなー!メシ炊いとけって言った?」
三橋の体調が気になる阿部でしたが、田島も三橋家カレーを堪能するために昼休み抜け出す気マンマンでした
そこへ田島の保護者的な泉と、「三橋に渡すものがある」という花井も加わって、昼に4人で三橋の家に行くことに…
ピリリリリリリリ
「あ、田島君かな…?阿部君だったらどうしよう…」
”昨日勝ったこと叶に言った?私言おうか?”
「”自分で言う、昨日はありがとう”…送信…あ、もう田島君たち来る…」
だるい体で田島が来るのを心待ちにしていた三橋。ルリとメールのやりとりをしているうちに昼の時間になり、
のそのそと出迎えの準備をしようとする三橋でしたが…
ピリリリリリリリ
「ル、ルリ!?返信はや…」
”阿部隆也”
「うわあああああああああ!!ど、どど、どうしよう…!
マウンド降りなかったことだ…代われって言われたのに代わらないで、俺…!」
阿部からメールが来ただけで世界の果てまで逃げ出しそうなほどおびえる三橋。
桐青戦で2度と逆らうなと言われたそばから交代命令を無視してしまい、三橋は今阿部と顔を合わせたら死ぬと思っていたのです
というか三橋の携帯、「田島くん」「ルリ」「お母さん」ってみんな呼び名で登録してあるのに、
阿部だけなぜか「阿部隆也」ってフルネームなのがなんか笑えます
「メ、メールにはなんて…」
”昼に俺と花井も行く”
「あああああああああ!!しゅ、主将も連れて俺を怒りに来るのか、
当たり前だ…公式戦であんな勝手して…に、逃げ…」
ピンポーンピンポーン
恐れをなして逃げ出そうとする三橋でしたが、その時ちょうど悪魔の到来を告げるインターホンの音が!
もはや逃げられないと死を覚悟した三橋は、ガタガタと震えながら玄関で4人を出迎えるのでした
「なあ三橋これな、ウチの親から三橋の親へ」
何やら三橋に手みやげのDVDを持ってきた花井。なんでもその題名は高校野球ダイナマイツだとか
なんだこの意味不明な名前は…と思ってみれば高校野球のローカルニュース番組でした、ダイナマイツってなんなんだ!
《市営浦和球場での第一試合は、途中から交代した武蔵野第一高校の榛名選手が、
4回から8回までをパーフェクトに抑え初戦を飾りました》
「はっ、榛名サン!?むふふふ、榛名サン凄い…」
「別に順当だろ、Cシードだぞ」
「うぐ…」
高校野球ダイナマイツを横目に見ながらカレーをばくばく食べまくる4人。
しかし榛名をやたら尊敬している三橋と毛嫌いしている阿部、つくづく2人はプライベートで噛み合いません
バッテリーとして三橋との関係をスムーズにしたいのに、いつまで経っても会話が成り立たず
もどかしさとイライラで阿部はピリピリしまくりです、もはや会話の糸口すら見つからない阿部でしたが…
「三橋はなんで西浦にしたのー?」(唐突…!お、でも答えるぞ…?)
「お、お母さんの学校だからだよ!」(…お母さんのォ?)
「へー、おばさん西浦出身なんだ!」(ああ〜…)
「そいで…自転車と、制服!」(…え〜っと)
「交通費と制服代ナシはうちも言われた!西浦安上がりだからなー!」(よく分かるな〜…)
そんな阿部とは対照的にたやすく三橋語を理解してしまう田島。
なんとか三橋の扱いを学ぼうとする阿部でしたが、2人の異次元会話にはまるでついて行けないのでした
「ちゃんと理由あんだなー、俺なんか単にレベルと通いやすさで選んだぜ」
「俺はグラウンドも見てから決めたよ、阿部は春休みも栄口と来てたんだろ?」
「春休みは俺が誘ってな、下見は一人でだよ」
「中学からの友達じゃないのか?」
「シニアで顔は知ってたけど、クラスで一緒になったことねーんだよ。
受験の時初めてちゃんと喋った。そしたらアイツうんこばっかしててさー」
カレー食ってる時にうんこの話すんなー!!
阿部きさまー!この世で一番やってはならないタブー中のタブーを!
もはや皿の上に乗ってる茶色い物体が異臭を放ってるようにしか見えません。
こんなものを口に運ぶなんてなんて恐ろしい…(えー
《第一試合・Bシードの桐青高校敗れました!西浦高校はこれが公式戦初勝利です。
一年生投手三橋、ふんばりました!》
ふんばった!?何を!?うんこの話してる時にふんばるとかなんとか!
可愛い顔して実にけしからん女子アナです:;y=_ト ̄|○・∵.
ターン
一言だけとはいえ自分たちの試合結果がテレビで流され、思わず画面に釘付けになる四人。
しかし、一番喜ぶべきはずの三橋は逆に顔面蒼白となってしまいました
(お、俺は打たれたのにたまたまテレビで名前言われて…!すげえ嫌な奴…!
そうだ、今日はみんな俺を怒りに来たんだから、大人しくしてたってダメなんだ…
せっかくみんな楽しそうだったのに、俺がいると楽しくなくなる…)
「あっ…泣いた」
「ええ!?なんで!?」
(泣いてると余計うざがられる…言われる前に…!)
「き、昨日は!勝手してすみませんでした!」
「か、勝手…?」
「先に帰ったこと…?」
「あ、阿部君に代われって言われても、俺…」
「ありゃーウソだよ」
「う…ウソ?ウソぉぉぉぉぉ…?」
スーパーネガティブ思考で悪い方へ悪い方へと考えてしまい、ハチャメチャな理由で泣きながら謝ってしまう三橋。
みんな三橋の熱投に感心していたというのに、突然謝られて花井達は混乱してしまいます
自分の凄さがまるで分かってない三橋に、泉は「みんながどう思ってるか見せたるか」と昨日の反省会のノートを取り出して…
「三橋、篠岡がコピーくれたから見てみ。総評んとこな」
「そ、総評…?」
”三橋はよく投げた”
”投手はよく頑張ってくれた”
”三橋は途中崩れかけたのによく持った”
”野球のことをたくさん学べた。三橋をはじめみんな凄かった”
”三橋は始めから飛ばしてたのに、根性で投げたからいい投手”
”勝ちは投手の踏ん張りが大きい。5番としてもっと得点にからみたかった”
”マウンドから逃げない三橋を中心にチームがまとまった”
”桐青を4点に抑えられたのは凄い”
”ギリギリの試合はもうやめたい”
そのノートには、勝った理由に三橋の頑張りを第一に挙げる仲間全員のメッセージが…
って、阿部お前も少しは三橋誉めてやってくださいよ!一人だけ関係ないこと書いてんなー!
それと一人だけ自分の反省点を追記してる花井も、生真面目な一面が表れてて面白いですね
「わ…わわわ…」
「昨日の試合だったら、こんなの普通だぞ?」
「そうそう、俺たちは普通に野球やってるだけだよ」
(こ…こんなに嬉しいのが普通なのか…)
仲間たちのメッセージを見て、顔を真っ赤にしながら喜びを噛み締める三橋。
中学3年間チームの厄介者でしかなかった三橋にとって、「普通に評価された公式戦」というのは生まれて初めてのことでした
阿部たち4人が帰った後も、しばらく幸せの余韻が忘れられない三橋。
明日もそんな大事な仲間たちと野球をやるために、安らかな顔でぐうぐうと体を休めるのでした
おおきく振りかぶって・完
ちょうどコミックス8巻と同じところでアニメもきれいに終わりましたね
今期はゼロ魔とかスクールデイズとかとんでもない終わり方だったので、尚更上手くまとまってると感じました
あえて贅沢を言うなら、今回や1クール目のような神作画で桐青戦を見たかったなあ。ルリとか水谷母にもっと悶えたかった
とは言っても全体的に十分楽しめる出来だったと思います、まさかここまでおお振りが上手くアニメ化されるとは思ってませんでした
スタッフの人達ありがとうございました
|