■マリア様がみてる
4th season 第11話「ハートの鍵穴」
「…行かないで…どこにも行かないで…ママのこと置いてかないで…」
「大丈夫よ、ママ…ここにいるわ…」
「…どこに行ったの…私の赤ちゃん…」
「…」
ある日の深夜、ドリルの家ではあの母親が「自分の赤ん坊が消える」という悪夢にうなされていました
そんな母親の横で、ずっと心配そうな表情を浮かべていたドリル。しかし「私の赤ちゃん」という言葉を聞いた途端、
ドリルの表情が悲しげに曇ってしまいます。これってまさか…これは夢というより「実際に以前我が子を亡くした」という
この母親のトラウマで、ドリルはその子の代わりに引き取られた養子ってことなんじゃ…
「あっ…パパ、お帰りなさい」
「まだ起きていたのか…」
「ママ、ちょっと眠れないみたいだったから…ねえ、パパ…私のせいかな」
「そんなことはない…!そうやってお前は、いつでも無理に自分を抑えてきたのだな…」
そしてママの寝室を後にしたドリルは、ちょうど帰宅した父親と鉢合わせしてしまいます
パパの方もママと同じで、ドリルを気遣う優しさのあるいいお父さんですね
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それにしてもドリルの家の豪邸っぷりがすげえ…これは本当に日本の現代人が住む家なのか:;y=_ト ̄|○・∵.
ターン
祥子の家も凄かったですが、あっちは和風なのに対してこっちはまさに洋館って感じですな
「あの日の衝突は、ママにはショックだったようだが…瞳子が感情をぶつけてくれなかったら、
パパもママもずっと瞳子の心の叫びに気づかずにいただろう。16のお前が一人で背負うには
あまりにも重い荷物だった…それは私たち親が負うべきものだ」
「…」
「だからパパは、今でもお祖父さまの決定に賛成だ。
お前は自分が何者かなどということを考えずに、真っ白なキャンバスに自由な人生を描くべきだ」
ふーむ…「重い荷物」とか「お祖父さまの決定」とか、具体的に何の話かはよく分かりませんが、
とにかく父親も母親も祖父もみんな、ドリルには自分の立場を気にせず自由に生きて欲しいと思っているようです。
みんなドリルのためを思ってるいい家族たちなんだなぁ
「世の中はギブアンドテイクじゃないの…?貰うだけ貰って、それでいいの…?瞳子は何も返せない…」
「パパもママもお祖父さまも、もう瞳子から沢山のものを貰っているよ」
しかしドリル自身は自由に生きることに激しく負い目を感じているようで…父親や母親がここまで優しく愛情を注いでくれたからこそ、
逆に「自由なんか捨ててもっと恩返ししまくるべき」という義務感にかられているようです
父親は「恩返しならもう十分してる」と優しく語りかけますが、それでもドリルの表情は晴れることがないのでした
「ごきげんよう…しばらくお休みしていてすいませんでした」
「瞳子ちゃん…!選挙、残念だったわね…」
「部長…私、今日は退部届けの用紙を貰いに来たんです」
「なっ、何を言っているの…!」
そんなある日、今まで選挙活動で休んでいた演劇部に久々に顔を出したドリル。
しかし部室に入るなり「すいません退部しにきました」と、突拍子もないことを言い出してしまいます。
部長は慌ててそんなドリルを引き止めようとしますが…
「…こんな日が来るかもしれないと思っていたわ。
私が受験のために部を引退したら、あなたは部内で孤立するかもしれない…
私はね、これからあなたには演劇部の顔として活躍してもらいたいと思っているの。
どんな形でもいい…部に残ってちょうだい。後輩たちはあなたから色々学べるわ」
越前…青学の柱になれ!!と、部長はドリルに演劇部の越前リョーマになって欲しいようです(えー
部長はこれまでも、ドリルが他の部員から目をつけられた時は自分が盾になっていたようで…
というかこの人、令と同じかそれ以上に男前ですね。声優もボーイッシュな声に定評のある沢城みゆきだし
ポッと出で終わるキャラにはちょっと惜しい気がするな
「もし先輩部員とそりが合わないのだったら、私に考えがあるのよ」
「…?」
「私の妹になりなさい」
「は…!?」
「部長である私の妹なら、そう攻撃されることもないでしょう。
来年度になっても簡単に効力を失いはしないわ」
な…なんですとー!?そんなことのためにスールの申し込みしちゃうんですか部長さん!
他の部員から身を守るためってあんた…それこそドリルの嫌いな同情で姉妹になるってことじゃないんだろうか
それで他の部員から文句を言われなくなっても、結局は虎の威を借る狐状態。こんな施しをドリルが受けたがるわけが…
「で…でも…私…」
な、なんだこのしおらしい態度は!!(゜д゜;)おま…祐巳の時と態度違いすぎだろ!
あの時はニマアッと極悪な笑みまで浮かべて誘いを蹴ったというのに、
この「そんなこと言われても困っちゃうわ」とくねくねした態度は一体…(えー
それだけ祐巳と部長ではカリスマに差がありすぎるということなのか:;y=_ト ̄|○・∵.
ターン
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「福沢祐巳さん」
「…!」
「分かっているつもりよ。祐巳さんのことが好きなんでしょう?
私はあなたのことをずっと見ていたんですもの…
祐巳さんの妹になることで、あなたが幸せになるのならそれでいいと思っていた…
でもあなたは、祐巳さんに近づくたびに傷ついて戻って来るじゃない」
「…きっと、私に問題があるのでしょう」
「そう、あなたが変わらなければ祐巳さんと一緒に歩くことは出来ない。
だから山百合会や薔薇の館から遠ざかるために、
負けるはずの選挙に出たりしたのでしょう?」
なんと部長は、ドリルの複雑な胸の内をとても正確に理解していました。これは意外な…
もっと考えの浅いことをうだうだ言ってるだけかと思いきや、下手すると祐巳よりドリルのことを理解してるのかもしれません
祐巳や乃梨子ですら「なんで負けようとしたのか分からない」と言っていたドリルの選挙も、部長はハッキリと理由を分かっているようだし…
あれは「祐巳と一緒にいるには今の自分から変わらないとダメ、でもそんなの無理だからいっそ縁を切りたい」って理由で
わざわざ出馬したわけだったのか…
「あなたが苦しむ姿を見ているのが辛いのよ…」
ぐいっ
「…!?」
「もう祐巳さんのことは忘れなさい、私が守ってあげるわ」
こ、これはー!?ドリルをぐいっと抱き寄せて心変わりを誘発!ええいこの百合部長め!
それにしてもシリアスなシーンなのにやたら濃ゆい後ろのポスター自重(えー
特に右上の画像で部長のすぐ横に濃ゆい顔があるのはマジで吹く:;y=_ト ̄|○・∵.
ターン
「…すみません」
って…ドリルは部長の申し出をはっきり断ってしまいました。普通ならコロッと行ってしまう場面だと思いましたが…
さすがは難攻不落のドリル要塞。祐巳が10話以上かけても攻略出来なかっただけあります(えー
部長の好意を無碍にしたことを申し訳なく思いながらも、部室を出て行ったドリル。そのまま浮かない顔で下校していくのでした
(祐巳さまを断ち切るために部長を選ぶなんて、してはいけないことだ…)
「瞳子」
「あ………………どうしたの」
「待ち伏せしていたんだ、目立たないようにね」
変質者があらわれた!!(えー
柏木さん…なんつーバカな格好で待ち伏せしてるんですか!
こんな変質者丸出しの格好で女子高の前をうろつくなんて、どうぞ通報してくださいと言ってるようなもんじゃないか:;y=_ト ̄|○・∵.
ターン
そんな柏木さんに呆れまくりのドリル。道行く生徒たちに「やだぁ何あの人」と変な目を向けられながら、2人は柏木さんの車に乗り込むのでした
「何の用?」
「聞きたいことがあってね…クリスマスにあったことだ、どうして祐巳ちゃんにあんなことを言った?
僕には瞳子の気持ちが分からない。祐巳ちゃんが好きなくせに」
「説得力ないわね…」
ぶいーんと車を走らせながら会話を交わす2人。わざわざ柏木さんがやってきたのは、
ドリルが祐巳に冷たくしている理由を問いただすためのようで…
しかし「祐巳ちゃんが好きなくせに」と言う柏木さんに対して「ハァ?何それ説得力ねーよ」と全くそれを認めないドリル。
さっき部長に「祐巳さんが好きなんでしょ」って言われた時と態度違いすぎだろ:;y=_ト ̄|○・∵.
ターン
部長だと素直に認めるのに柏木さんだと速攻で否定するなんて…まあ部長がドリルの気持ちをきちんと察してくれたのに対して、
柏木さんは開口一番「瞳子の気持ちが全然分かんない」だもんなぁ(えー
「じゃあ聞くけど…去年の夏、瞳子はどうしてカナダに行かなかった?
祐巳ちゃんが小笠原の別荘へ行くと聞いて、予定を変えたんだろう」
「そ、それは…!」
「僕はあの時、瞳子が祐巳ちゃんに嫉妬して、祐巳ちゃんとさっちゃんの仲を邪魔するために
別荘行きを決意したのかと思っていた…」
そこで柏木さんが話題に出したのは、3期OVA「子羊たちの休暇」で祐巳が祥子の別荘に行った時の話でした
あの時ドリルはカナダ旅行の予定を突然キャンセルして、ムリヤリ別荘について来るという不自然な行動をしていたのです
ただ、当時のドリルは祐巳と祥子の間に割って入ったお邪魔虫って感じのキャラだったので、
柏木さんも「祥子を祐巳から奪うために別荘に行った」と思っていたようですが…
「でもそうじゃない、瞳子は祐巳ちゃんを心配していたんだ。あのお嬢様達は危険だって知っていたから…」
「何を…!私が別荘に行ったところで何が変わるの!?」
「それでもお前は、気になって遠く離れた外国になんて行ってられなかったんだ」
そう、あの時別荘で祐巳を待ち受けていたのは、性根の腐り切ったタチの悪い3人のお嬢様たちでした
小笠原家と親交がある名家の娘でありながら、自分達より高貴な家柄の小笠原家に嫉妬して
祥子の妹の祐巳にさんざん嫌がらせをしたクズな連中です
ドリルが別荘について行った本当の理由は、そいつらに祐巳が酷い目に遭わされるのが心配なためだったと…
「…そうか…お前は自分がされたような意地悪が、祐巳ちゃんに降りかかることを恐れたんだ…」
そこまでドリルがお嬢様達を危険視する理由、それを柏木さんは「ドリルも以前あいつらに酷い仕打ちを受けたから」だと推測します
ドリルがお嬢様達から受けた仕打ち…それを想像するうちに、柏木さんから笑みが消え、恐ろしい怒りの表情に変わってしまいます
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「…お兄さま…?」
ドアギャギャギャギャギャギャア!!
「…っ!?」
「一体いつ誰に何を言われた…?京極か、綾小路か、西園寺か!!」
柏木さん大暴走キター!!ぎゃあああああ!!
信号が青に変わったその瞬間、物凄い勢いでアクセルを踏み込み急発進した柏木さん!
ドリルの体が加速Gで押し付けられる恐ろしい速さ!顔をこわばらせながらドリルが柏木さんに目をやると、
柏木さんは「あの3人の誰だそんなふざけた真似したのは」という憎悪にまみれた顔をしていました
ギュオオオオオオオアアアアアアアア!!!
「ひ…!?お、お兄様…!?」
「僕は気づいてやれなかった…!瞳子が家を出るあの瞬間まで
瞳子が何も知らないと信じていたんだ…!」
ギュアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
「……!!」
信じられないスピードで加速を続ける柏木さんの車!同じ車線を走る車が、見たこともないスピードで後ろへ吹っ飛ぶ悪夢の光景!
この一般道で百何十キロ出しているのか…!?完全に柏木さんは我を忘れています、このままじゃ2人とも心中ですよ!
あまりの恐怖で背筋が冷たく凍りつくドリル、柏木さんが呼びかけに応えてくれない以上、このまま事故るのを待つしかないのか…!?
「……お……お兄さま、おしっこ!!」
「…え!?」
マリみて最強の迷シーンきたあああああああああ!!
おしっこ言ったあああああああ!!とにかく必死に柏木さんを正気に戻すためのトンデモ発言!
あまりにも破壊力のありすぎるドリルのおしっこ発言に、柏木さんの怒りも一発でどこかへ吹っ飛んでしまいます
いやぁこのシーンは本当にニヤニヤですな、私のマリみて4期感想はこの瞬間のために書き始めたと言っても過言ではありません(えー
この場面をカットせず見事に再現してくれたスタッフは本当にGJですよ:;y=_ト ̄|○・∵.
ターン
「さっきは助かったよ…瞳子に止めてもらわなかったら危なかった」
「私も助かったわ、お手洗いに間に合って」
ひとまず近所のバーガー屋で車を止め、一息ついたらすっかりいつもの調子に戻った柏木さん。
別に本気でトイレに行きたいとは思ってなかったドリルも、「あやうく漏らすところだったよハハハ」と軽くジョークを飛ばします
それにしても、去年の祥子はこういうバーガー屋の注文の仕方も食い方も全然分からない超箱入り娘でしたが
柏木さん達は祥子の親戚なのに、別にハンバーガー買って食うくらいどうってことないんですね(えー
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「お兄さま、私そんなにショックじゃなかったのよ」
「え?」
「私、もうとうに知っていたもの。だからお兄さまはそんなにお怒りにならなくてもいいのよ」
なんだか唐突によく分からないことを言い出したドリル、主語述語が抜けてるので何の話かよく分かりませんが…
その辺を想像で補ってもう一度読んでみると、
「私そんなに【両親の本当の子供じゃないこと】はショックじゃなかったのよ、
【お嬢様達からそれをバラされる前から】もうとうに知っていたもの。だからお兄さまは【お嬢様達を】そんなに怒らなくてもいいのよ」
とドリルは言いたいんでしょうかね。ふーむなるほど、柏木さんがさっきあんなに怒り狂ったのは、
「おい瞳子てめー松平家の本当の子じゃないんだってよ、可哀想に(笑)」と、あのお嬢様達がバラしたと思ったからなのか…
それとさっきの柏木さんのセリフ、「瞳子が家出するまで、瞳子は自分の素性のことなんて知らないだろうと僕は信じてた」って
つまり柏木さんは、ドリルが家出したのは自分の素性に悩んだせい、その素性を知ったのはお嬢様達から聞かされたせい、
悩めるドリルが最近起こしたトラブルも、何もかもあのお嬢様達が余計な真似したせいと思ったから
あれだけブチ切れまくったってことなのかな…まあ結局それは柏木さんの勘違いみたいなんですけど:;y=_ト ̄|○・∵.
ターン
「瞳子…お前は、幸せになっていいんだよ」
「…?なんのこと?」
「お前は目の前の幸せから逃げている、祐巳ちゃんのことにしたって…」
「別に両親の子供じゃなくても構わねーし」というドリルの言葉を聞いて、悲しげな表情を浮かべる柏木さん。
ドリルは自分がどれだけ破滅しても知ったこっちゃないって感じですもんね、選挙でわざと嫌われ者になったこともそうですが…
しかし柏木さんにそれを指摘されたドリルは、一気にカッとなって反論を始めてしまいます
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「…もう終わったことよ!じゃああの時、ロザリオを受け取っていればよかったとでも言うの!?
信じて裏切られるくらいなら、初めから信じない方がいいのよ!」
「違う。お前は信じないと言いながら、心の中では信じたいと思っている。
逃げながら追いかけて来てくれるのを待っているんだ」
「そんなこと…!」
「そうやっていつまでも逃げ続けていると、そのうち誰も追いかけてくれなくなるぞ」
「…みんなして私のことを責めるのね」
「きっと、君の事が好きだからさ」
「幸せから逃げるのやめてもっと歩み寄れよ」とドリルに言い聞かせる柏木さんでしたが、
ドリルは「なんだよなんだよみんなして私を責めやがって」とヘソを曲げるばかりです
これだけ真っ向から話しても効果はいまいちか…厄介な性格のドリルを操縦するのは本当に骨が折れますね
(宝探し…か…ちょうど1年前、去年の宝探しで初めてあの人を見た…はつらつとして、真っ直ぐで…)
そして次の日の学校にて、ドリルは掲示板のポスターを眺めながら物思いにふけっていました。
それはバレンタインのカード探しイベントのポスター…ドリルにとっては去年のバレンタインが初めて祐巳と出会った日なだけに、
少なからず特別な思いがあるようです。そして柏木さんに「もっと歩み寄れ」と言われたことも後押ししてか、
ドリルはイベントの詳細が書かれたチラシを手に取りますが…
(ばっかみたい…!ばかみたい…ばかみたい…ばかみたい…ばかみたい…!)
しかし、そんな自分をめちゃめちゃ自己嫌悪してしまうドリル。あんな選挙までやって祐巳から離れようとしていながら、
もう一度のうのうと歩み寄ろうとしていることが、相当バカらしく思えているようです。そんな荒れ模様のドリルがズカズカと教室に戻ってくると…
「ではみなさまごきげんよう!」
「「「じゃーねー!」」」
「あ、瞳子!」
「…忙しそうね、今から薔薇の館?」
「ううん、今日はお休み。急いでるのは、これからテレビで仏像の特番をやるの!」
ドリルと入れ替わりに教室からバタバタと出てきた乃梨子。今すぐ帰って仏像の特番が見たいそうですが…
そんな番組乃梨子以外に視聴者いるんだろうか(えー
視聴率一体何パーセントだよ:;y=_ト ̄|○・∵.
ターン
それにしても、リリアンの生徒でも普通の人は「ごきげんよう」じゃなくて「じゃーねー!」って挨拶するんですね
やっぱりいちいちごきげんようなんて挨拶してる祐巳たちの方がおかしいのか:;y=_ト ̄|○・∵.
ターン
「じゃ、ごきげんよう!」
「…あっ…乃梨子さん!」
「何?」
「あ…あの…う…。た、大変ね、今年はあなたも宝を隠すのでしょう?」
「ううん、2年生の3人が宝を隠すんだよ。これ(チラシ)持ってた?」
「…い、いえ」
「じゃああげる。私はもう読んだし、薔薇の館でいつでも見られるから。それじゃ!」
「あっ…」
さすがのドリルも沈みっぱなしの毎日に参っているようで、思わず助けを求めるように乃梨子を呼び止めてしまいます
しかし素直に言いたいことを言えないドリルは、すぐに話を逸らしてしまい乃梨子を帰らせてしまうことに…
結局ドリルが手に入れたのは「チラシ?いやぁなんのことやら」と、つまらない嘘をついて手に入れた2枚目のチラシだけでした
「もうこんな自分やだ」というような深い溜め息をつきながら、トボトボとドリルが教室を出て行くと…
「あれ?ごきげんよう!」
「あ…!ご、ごきげんよう…!」
「今帰るとこ?」
「え、ええ」
「じゃあ駅まで一緒に」
「え…」
なんと偶然にも下駄箱で祐巳と鉢合わせ!思わずぎょっとしてしまうドリルでしたが、祐巳の方は「いよーっす一緒に帰ろうぜ」と
なんの抵抗もないようにドリルの隣を歩き始めます。本当にドリルのことは平気になったのな祐巳…
ついこの間まで、ドリルと顔を合わせるたびにパニクってた人とはとても思えません
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「瞳子ちゃん、無理言ってごめんね」
「え…?」
「私は考えなしだった、考える前に瞳子ちゃんにロザリオを差し出してた。
瞳子ちゃんの気持ちとかちゃんと考えずに、自分の感情だけで突っ走っちゃった…
瞳子ちゃんが呆れるのも当たり前だと思う。ここまでは謝罪、で、ここからが提案なんだけど」
「はい…?」
「私達、クリスマス以前の関係に戻れないかなぁ」
「ドリルちゃんもういっぺん私と仲良くしてよ〜」と、ロザリオを差し出したことを謝って仲直りしようとする祐巳。
しかしドリルは、自分があれだけ冷たくした祐巳にこうも優しい言葉をかけられるのが、なんだか無性に耐えられないようで…
「は…!?私、祐巳さまの考えてることが分かりません!
なぜご自分を拒絶した下級生に、そんなにも寛大なんです!?」
「え?」
「そもそも、どうして私なんかを妹にしようと考えられたんです!」
「私なんかって…卑下するのやめてくれない?」
「私なんか、私なんかで十分です!」
「…私ね、瞳子ちゃんに断られてからずっと考えてた。私と瞳子ちゃんどうなって行くんだろうって、
でもどうしたいんだろうって考えるべきだった。そしたら分かっちゃったんだ、
私は瞳子ちゃんが瞳子ちゃんであればいいんだって」
「私が私であれば…?」
「そうだよ、だから瞳子ちゃんが何をしようと私の気持ちは揺るがない。
選挙に出た理由だって、瞳子ちゃんが聞かれたくないなら探らない。どうして家出したかとかもそうだよ。
ご両親がどんな人だとか、今どういう関係にあるのか、どんな子供時代を過ごして来たのか…」
「…!?」
「そういうことは、私が瞳子ちゃんに抱いてる感情とは、まったく別の次元の話だから」
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あ、あれ…(゜д゜;)穏やかに話し続ける祐巳とは裏腹に、どんどん表情が険しく変わってしまうドリル!
「いや君の親のことなんて知らないよ?ケンカしてる理由も知らないよ?昔どうだったかも知らないよ?」という祐巳の言葉が、
ドリルには何もかもお見通しのくせにわざとしらばっくれてるように聞こえてならないようです
乃梨子に「ドリルのことはもうどうでもよくなった」と言った時もそうですが、
祐巳の言葉はどうも相手に変な伝わり方をしてばかりだな:;y=_ト ̄|○・∵.
ターン
「………そうですか…そういうことですか…!
あの時のことは、結局私への哀れみからだったのですね!!」
「え…?」
「祐巳さまは聖夜の夜に施しをなさりたかっただけなんです!
ロザリオを差し出した時、さぞかし気持ちが良かったでしょうね!
私が私であれば親のことなんて関係ない!?おかしいと思っていたんです!
祐巳さまが私を妹になんて望むわけがない!でもやっと謎が解けました!」
「な、何言ってるの…何か誤解して…」
「来ないでくださいッ!!」
「と、瞳子ちゃ…」
「それ以上近づかないで!!言い訳なんて聞きたくありませんッ!!」
うわあああ事態は今まででも最悪の泥沼に!決定的な勘違いをして一方的に怒鳴り散らしてしまうドリル!
どうも祐巳がドリルの過去を知って「哀れなドリルに施しをしてやるか」という同情心からロザリオを差し出したと思ったようで…
もちろん祐巳はドリルの過去や家庭の事情なんて何も知りません。しかしドリルは祐巳の話を全く聞く気がないようで…
「…分かった。今は何を言っても耳に入らなそうだもんね」
「…」
「瞳子ちゃん、その場で100数えなさい」
「…?」
「数え終わるまで動いちゃダメよ」
完全にドリルの頭に血が昇ってしまった今、やむなくここで話を切り上げることにした祐巳。
しかし興奮状態のドリルを落ち着かせるためか、今から100数えるように告げてその場を去ってしまいます
数を数えて落ち着かせるって、まるでプッチ神父みたいなことさせるんだなぁ(えー
素数だ…素数を数えて落ち着くんだ…
(1、2、3、4、5、6……【中略】……97…98…99…100…)
意外にも素直に祐巳の言うことを聞いて100を数えたドリル。最初は明らかにイラつきながら数えていましたが、
数字が100に近づく頃にはさすがに少し落ち着いてきたようです。プッチ神父の変な性癖も結構役に立つんだな…(えー
↓数え始めたドリルの表情
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↓数え終わったドリルの表情
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「まあ本当?ふふふふ」
ズカズカズカズカ
ガラァッ!!
「失礼しますッ!!」
って全然怒り収まってねえー!!数を数え終わったその足で、即座に祥子の教室へ怒鳴り込んだドリル!
「お前か私の秘密を喋りやがったのは」と祥子への怒りを抱えての行動でしょう
というか祥子が放課後クラスメイトと教室に残ってだべってるって、結構新鮮な光景だなぁ:;y=_ト ̄|○・∵.
ターン
「祐巳さまに喋ったんですか…!」
「なんのこと…?」
「私の出生に関わる話ですッ!!」
「出生…?」
「覚えがおありなんでしょう!?それで?祐巳さまにはいつおっしゃったのですか!」
「だから何を…!?」
「とぼけないでくださいッ!!私が松平の両親の子供ではないということです!!」
壮絶な自爆キター!!行き過ぎた勘違いから自分の秘密を自らバラしてしまうドリル!
やっぱりドリルの秘密っていうのは、自分が両親の子供じゃないっていうことだったのか…
今まで私がその話をしてたのは、全部単なる推測だったのでここでちゃんと裏付けが取れてよかった:;y=_ト ̄|○・∵.
ターン
「…!?と…瞳子ちゃん…松平のおじさま、おばさまの間に
生まれた子供じゃなかったの…!?」
「…!?ま、まさか…」
「…残念ながら、初耳よ」
「…う…嘘です…!そんな…だったら誰が祐巳さまに…!?」
しかしドリルの出生の秘密は、親戚である祥子すら全く知らないことでした。
自分の推理が完全に的外れだったことに気づき、ドリルは愕然としてしまいます
そしてこの話を聞き、ようやくドリルが何を怒っているのか理解した祥子…しかしその途端、祥子の顔つきがみるみる厳しく変わってしまいます
「まったく、見くびられたものよね」
「…も…申し訳ございません…!」
「私じゃないわ、祐巳のことよ」
「…!」
「祐巳はきっと、瞳子ちゃんの家庭の事情を知らないと思うわ。
たとえ偶然知ってしまったとしても、そのことで瞳子ちゃんへの評価を変える子じゃない。
それは姉である私が一番よく知っているわ」
「…う…う…」
「それなのに、あなたのことばかり考えている祐巳が哀れに思えて来たわ」
私の妹を舐めんじゃねえよとドリルに容赦なく厳しい言葉を浴びせる祥子。
ドリルが祐巳にまったくの濡れ衣を着せて怒鳴り散らしたことを考えると、祐巳の姉としてはこれぐらい怒って当然でしょう
ようやく自分がとてつもない間違いを犯したことに気づいたドリルは、あまりのショックでその場にがっくりと膝をついてしまいます
(そ…それじゃ…全部私の…誤解…!)
「…」
そんなドリルをじろりと一瞥してその場を去ってしまう祥子。一人その場に残されたドリルは、
完全に心がへし折れて涙がボロボロと溢れ出してしまいます
(…ゆ…祐巳さま…祐巳さま…もう…どうしていいか分からない…!)
(その場で100数えなさい)
「…い…1…2…3…4…」
素数だ、素数を数えて落ち着くんだ…(えー
あまりにも大きい罪悪感に押し潰されて、頭がどうにかなりそうな中再び100を数え始めたドリル。
どうにかこれで気を静めようというつもりのようですが、その効果のほどは…
「15…16…17…(もう…私は独りぼっち…自分と繋がっていた絆を、一つずつ自ら断ち切ってきた…)」
「33…34…35…(でも、寂しくて寂しくて…誰でもいい、傍にいてほしい…!)」
(そのうち、誰も追いかけてくれなくなるぞ)
「57…58…59…(…数えるのが恐い…!目を開けて一人ぼっちの自分を見つけるのが…)」
しかし、さっきと違って数えれば数えるほどどんどん不安は大きくなるばかり…
もはや完全に心の拠りどころをなくしたドリルは、再び目を開けたその時に、完全に誰からも見捨てられた自分の姿を見ることが
何よりも恐ろしかったのです。ひたすら恐怖と不安におびえながらボロボロと泣き続けるドリル。そして数はもう100の目前にまで…
「…79…80…81…」
ぽんっ
とその時、消え入りそうなドリルの肩に優しく手をかける人物が!こ、これは!?
ドリルにとっては、心底震え上がっていた孤独の恐怖から助けてくれた救いの手…そんなドリルに手を差し伸べてくれた人物とは…
「あ…ごめん。邪魔しちゃいけないかなぁと思ったんだけど」
の…乃梨子だとーー!?な、なぜ乃梨子がここに!?仏像は!?仏像は一体どうしたんですか!?(えー
うーむ、てっきり祐巳だろうとばかり思ってたので、まさかここで乃梨子が出てくるとは予想外でしたね
「…ど…どうして…?帰ったはずじゃ…」
「瞳子と別れた後、どうも気になっちゃって…」
「だ…だって…特番は…」
こんなに心がズタズタの状態なのにしっかり特番のことに突っ込むドリルに吹いた(えー
そうだよな、特番は大事だよな:;y=_ト ̄|○・∵.
ターン
「それより瞳子の話の方が大事」
「…っ…う…う…うぅ…乃梨子!乃梨子ぉぉぉぉ…!!」
「え…?い、一体どうしたって言うの?」
「乃梨子…乃梨子…!」
(マリア様…!ありがとうございます、乃梨子をお戻しくださって…!)
何もかも失くした、完全に取り返しのつかないことをしたと思っていたところに、ドリルを思って戻って来てくれた乃梨子。
心の底から誰かに傍にいて欲しいと願ったドリルにとって、これほど自分の救いになることはありませんでした
他人との絆の大切さを心の底から思い知り、ドリルはひたすら乃梨子の手を放さず泣き続けるのでした。次回に続く
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