■大正野球娘。第1話「男子がすなるという、あれ」
 

さて、昨日は「今期は不作だのう」と語った新アニメの数々ですが、その中で一番面白いと思ったのがこの大正野球娘です。
第一印象は登場人物女だらけの百合アニメって感じであまり注目してなかったんですが、
実際見てみると結構ストーリーもしっかりしてて十分楽しめる出来になってました

「晶子さん、改まって相談って何なのかしら」

「小梅さん…実はお願いがあるのだけれど、『うん』と言ってくださらないかしら」

「…?ま、まず内容を話すのではなくて?」

「話す前に『うん』と言ってくださらないといけないわ!」

まず話は、東邦星華女学院に通う主人公・小梅が、親友の晶子から相談を持ちかけられる所から始まります
女子校アニメっていうとマリみてをどうしても連想してしまいますが、晶子のフルネームがまた小笠原晶子なんつー
いかにもタイが曲がっていてよ的な名前してるもんだから:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「…わ、分かったわ。何をすればいいのかしら」

「一緒に野球をしていただきたいの」

「野球…?男の子がやっている?」

「そう、男子がすなるという、あれ」

そんな晶子のお願いというのが、「一緒に野球しようぜ」というずいぶん唐突な話でした
まさかこんな箸より重いものを持ったことないようなお嬢様の晶子が、野球なんてむさ苦しい男の競技をやろうと言い出すとは…(えー
いきなりの言い分に戸惑いを隠せない小梅でしたが、すでにやると言った以上断るわけにもいきません

「こんなに集まってくださって嬉しいわ!」

「でも、野球って9人必要なのではなくて?」

「あら…そうなの?」

「え!?ひょっとして晶子さん、野球のこと知らないの!?」

「え、ええ…でも大丈夫よ、これからちゃんと勉強しますわ!」

そして「野球やりたい人この指とーまれ」とクラスでも人員を募集して、新たに3人の仲間を加えた小梅たち。
この時代に野球やってくれる女子が3人もいたことに驚きですが、それより言い出しっぺの晶子が
5人集まったしそろそろ野球できるんじゃね?などとすっとぼけたことを言っていることが意外ですな…
てっきりこう見えて実は野球マニアとかいうキャラなのかと思いきや、野球の事は何も知らないド素人のようです
そんな晶子がどうしてまた、こんな熱心に野球をやろうとしているのか…

「今日のところは見学ということでどうかしら?」

「あら、それはいい考えですわ」

「ここの近くですと慶應かしらね」

「あそこは今遠征中よ、それでしたら早稲田がよろしいと思うわ」

「…?そ、宗谷さん詳しいのね」

「知人があそこにおりますの」

とりあえず集まったのは素人ばかりなので、六大学野球の練習風景でも見て勉強することにした5人。
そして近所の慶應大学へ行こうとしますが、通りすがりのクラス委員長に「慶應野球部は今遠征で留守だお」と教えられてしまいます。
慶應野球部のスケジュールを完璧に把握してるなんて何者なんだこの人…(えー
それに「見に行くなら早稲田がいい」と言い切ってるあたり、早稲田野球部のスケジュールまで把握してるっぽいですな
まさかこの委員長、筋金入りの隠れ野球マニアなんでは…

「オラオラァァァ!!声出せ声ぇぇぇぇッ!!」

ところが5人が早稲田の練習場で目にしたのは、千本ノックを受けた末にボロ雑巾のようにぶっ倒れ、
失神しても水ぶっかけられてムリヤリ叩き起こされるという鬼のようなしごきの風景!
うひい、この頃の野球部と言えばこんな暴行のような練習が当たり前で、毎日死にそうなほど痛めつけられていた時代でしょうからな…
これは育ちのいいお嬢様達にはさぞ刺激の強いことでしょう

「や、ややや、野球って…こんな事をしなければならないのぉ!?」

「こんな競技できっこねー!!」とすっかりそんな光景にガクガクブルブル怯えてしまった小梅。
そして仲間達の方へゆっくりと向き直りますが、すでにさっき集めた3人は
逃げるんだよオオオオオーッ!!と遥か彼方へ逃げ出した後でした

「だ、男子と野球なんかやったら殺されてしまいますわああああ!!」

「ちょ、ちょっとみんな!」

「小梅さん…」

「あ…」

「皆さんの気持ちは分かるわ…私だってあれを見てしまうと…」

そしてショックを受けているのは晶子も同じです、「こんな恐ろしい競技が存在するなんて信じられない!」とすっかり涙目になってしまい…

「あ、晶子さん…」

「残ってくれてありがとう…!」

「へっ?」

「一緒に頑張りましょうね…!」

「え…えええええ!?」

ところが唯一逃げ出さなかった勇敢な戦士として野球続行が決定してしまう小梅!
いやあの私も逃げたかったんですけどとオロオロしても時すでに遅し、
もはやこの空気で逃げ出すことは不可能です。晶子恐るべし…それにしても晶子は天然で言ってるのか
これ以上逃げ出されてたまるかと計算ずくで嘘泣きしてるのか、一体どっちなんでしょうね:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「ごきげんよう、小梅さん。今日から頑張って仲間を探しましょうね」

「う、うん」

「あ、それとこれ…恥ずかしいから、お家に帰ってから読んでね」

「…?」
そして次の日の朝、登校時に下駄箱で顔を合わせるなり小梅にラブレターを持ってきた晶子
なぜこんな手紙を…って晶子の赤面顔かわえええええええええ!!百合嫌いな俺でも赤面くらいなら許すよ!(えー
ともかく昼休みや放課後、暇さえあれば全校生徒を勧誘して回る2人でしたが…

「むむむ、無理です!私野球なんかできません!」

「ごめんなさい、きっと両親が許してくれないと思うから…」

「無理!絶対無理!」

「あはは、それでね〜…はっ!?イヤああああああああああ!!」

誰も仲間になってくれないばかりかうおおこっちに来るなー!と顔を見るなり逃げ出す人までいる始末…
昨日は簡単に3人集まったのにこの有様、どうやらあの逃げた3人が野球の恐ろしさをみんなに語りまくってしまったようですな
結局この日は何の収穫もないまま、家に帰った小梅は晶子からの手紙を読んでみることに…

《昨日は本当にありがとう、正直私もやめてしまおうと思ったくらい…でも小梅さんが残ってくれたおかげで、
 挫けずに続けていく勇気が持てたのよ。仲間を集めるのは大変だけど、2人で力を合わせて頑張りましょうね》

「…」

その手紙の内容とは、小梅が野球メンバーに残ったことに改めてお礼を書いたものでした。ふーむ、本当に感謝の気持ちから書いたのか
くくくお前だけは逃がさんぜという念押しに書いたのかどっちなんだろう:;y=_ト ̄|○・∵. ターン
とりあえず「小梅さんのおかげで挫けずに済んだ」とのことですが、正直挫けてくれた方がよかった小梅としては
なんとも言えず複雑な気分のようで…

「お嬢さーん!お客さんがいらしてますよー!」

「はーい!どなた…あっ」

「少しお話したい事があるの、よろしいかしら」

その時、家の人に呼ばれて小梅が玄関に行ってみると、通りすがりの委員長・雪がわざわざ小梅を訪ねにやってきていました
一体どうしたのかと思えば、雪の荷物にはなんとグローブが…

「あっ、それ…!」

「そう、野球の道具。昨日早稲田のグラウンドで見たわよね、野球をするには色々な道具を
 買い揃えなければいけないのよ」

「いくらくらいかかるものなのかしら…」

「お小遣い程度では済まないでしょうね…」

「ええ…!?」

「それにお金の都合がついたとしても問題があるの…それは男性用の道具で、
 私達の手に合うようには出来ていないのよ」

「あ…」

「それにちゃんと学校や、お家の許可も取らないと…」

「…」

やっぱり野球に関してやけに詳しいことを知っていた雪。どうやら野球を始めるのに必要なことを教えにきてくれたようですが、
・道具を揃えるのにはメチャ高い金が必要
・買えたとしても女の子が使える道具じゃない
・走ることすら「はしたない」と厳禁のお嬢様学校で、こんな激しいスポーツの許可をもらうのは相当難しい
などなど、問題は山積みのようで…そもそも9人のメンバーすら集まってないし、
元々乗り気でない小梅としては完全に「だめだこりゃ」って感じですな

「ごきげんよう、小梅さん。ゆうべ考えてみたんだけど、ポスターを掲示板に貼り出して見るのはどうかしら?」

「あ、えっとね、その…」

「…?小梅さん?」

そして翌日、相変わらず仲間を集めようとやる気の晶子でしたが、小梅は「もう無理だからやめようぜ」と切り出そうとしていました
関係ないんですけど、晶子はポスターなんてハイカラな言葉をよくこの時代に知ってたな:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「じ、実は…」

「ちょっといいかしら、野球のことでお話があるのだけれど」

ところがその時、もじもじしている小梅の声を遮るように話しかけてきた人物が…
見てみれば、「私は優等生でございます」と顔に書いて歩いてるようなメガネっ子・乃枝が2人の前に立っていました

「お仲間は集まって?」

「…(ふるふる)」

「でしょうねえ」

「…一体何をおっしゃりたいのかしら?」

「男子と対戦しても惨敗したらどうするおつもりなの?勝算はあるのかしら」

「絶対に勝てないというものでもないでしょう?」

「確かにその通りね…で、その方法は?」

「そ、それは…これから小梅さんと考えますわ」

「そう…まだ何も決まってないのね、ところで何故男子と野球をしようと思ったの?」

ううむ…このいちいちシャクに障る物言い、お前ら野球とかバカじゃないのプギャー
2人をコケにするために来たのかと思いきや、どうも色々と興味ありげに質問しまくってるあたり
とりあえず2人の現状を詳しく知りたくてやってきたようです。分かりにくいやっちゃのう

「…それは…」

「聞かせてちょうだい」

「実は…先日、お父様主催のパーティに出席したのですが…」

《晶子さんは最近の女性の社会進出についてどう思われます?
 やっぱり女性は家庭に入るべきだと思いますね。女性に学歴なんて関係ないじゃないですか》

「ひ、ひどい!何その人!?」

「…」

「でも…なぜ野球なの?」

「その方が…自分は野球の選手だと…」

ふーむ…状況がいまいちよく掴めませんが、要は「メスごときが男と同等に働けると思ってんじゃねーよ(笑)」
言われて腹を立てた晶子は、その男の得意な野球で勝負してギャフンと言わせてやりたいと…
にしても晶子とその男との関係が気になりますね。ただパーティで会っただけにしては、晶子はずいぶんと熱を入れているし
やっぱり晶子の許婚とかなんとか特別な関係がありそうな…

「…」

「だから野球で…というわけね」

「…晶子さん、一緒に野球…!」

「分かりました!その話乗りましょう!その代わり、私に男子に勝つ方法を考えさせて!」

話を聞いてついに小梅も腹を決めますが、またしても言いたい事を邪魔する乃枝のでかい声
乃枝こいつ空気読めない奴だな…:;y=_ト ̄|○・∵. ターン  もう少し小梅にも気使ってやってくださいよ!

「あ…ありがとう川島さん…!これであと6人集めればいいのね!」

「あらっ、川島さんも仲間に入ったの?これで5人集めれば野球が出来るわね」

「え…!?あ、あの、宗谷さんも参加してくれるの!?」

「あら…?昨日言わなかったかしら、『私達』って」

「えっ?えっえっ、えぇーっと…?」

「鈴川さんって意外に鈍いのねえ」

ええええええええええ!?ちょ、ちょっと待ておい!
いきなりその場に現れて「やあ私が4人目の仲間だよ!」とか言い出した雪ですが…いつの間にあんた仲間入りしたんだよ!
「私達」って言った場面っていうと…「グローブは私達の手には合わないよ」って言ってたところのことですか
あんだけで分かるわきゃねえだろぉおおおおお!!(えー
私はてっきりあれは「半端な気持ちなら諦めた方がいいよ」と小梅を説得しに来たシーンだと思ってましたが、
まさか本当は「やあ!私も一緒に戦うからよろしく!」と仲間入りしたシーンだったとは:;y=_ト ̄|○・∵. ターン
これで小梅あんたちょっと鈍いよとか言うのはちょっと酷いんじゃないですか雪さん…(えー

「あのね、知り合いからお古を貰ってきたの。ちょっと面倒ですけど、手を加えれば私達にも使えるようになるわ」

「あら…!意外と重たいのね!」

さらになんと雪は、小梅たちへの手土産にボールと大量のグローブと持ってきてくれていました。やっぱりただ者じゃないなこの人は…
というか「グローブとかめっちゃ高いけどどうやって買う気?ねえどうやって買う気?」とか
「女子の体にグローブは合わないけどどうやって使う気?ねえどうやって使う気?」とか
小梅を困らせた質問がこれで一挙に解決じゃないですか!なんでわざわざあんなイジワルな言い方したんだ!
雪の腹黒さは異常。虫も殺さないような顔してこうもドSとは恐ろしい人だよ…:;y=_ト ̄|○・∵. ターン


と、いうわけで次回に続く。視聴する前はもっと中身スカスカの萌えアニメかと思ってましたが、
晶子と野球男との関係だとか、やたら野球に詳しい委員長の素性だとか、先の気になる点が多くて次も見たいと思える第1話でした
あとは晶子も乃枝も雪もみんな腹黒くて小梅逃げてえええええええという気持ちになるのがうまい所:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

それとやっぱりこの1話で欠かせないのは東京節のかな恵ソングでしょうか
最初聞いた時はなんじゃこの歌と思いましたが、2度3度と聞いているうちにかな恵の声が耳から離れないように…


(C)創通・サンライズ・毎日放送

ら〜め〜ちゃんたら
ぎっちょんちょん!
ところがぎっちょん!
ぎっちょんちょん!
(えー

戦争狂のアリーさんですらすっかりお気に召してしまったようです:;y=_ト ̄|○・∵. ターン


■大正野球娘。第2話「春の長日を恋ひ暮らし」
 

「ごきげんよう〜!」

「オーウ!揃ったわね!話は雪から聞きました!このアンナ・カートランドが
 本場のベースボールをあなた達に教えまーす!!」

「へっ…?ア、アンナ先生?」

「野球をするには監督が必要でしょう?」

前回雪の持ってきた野球道具もどうにか使えるように手を加えて、ついに初練習の日を迎えた小梅たち。
ところがいざ練習開始というその時、やたら威勢のいい外人先生・アンナが雪に連れられてやってきました
どうやらアンナは外人だけあってかなり野球に詳しいらしく、雪が監督兼コーチとしてチームに招いたようですが…

「とりあえず晶子がピッチャー、小梅がキャッチャーね!」

「…?」「…?」

「明子さんがボールを投げて、小梅さんが受けるのよ」

「は、はあ」

「じゃあ投げてみましょうか、小梅はそこにしゃがんで!」

「(しゃなりしゃなり)」

「そうじゃなくてこう!キャッチャーってこういうものなの!」



ところがピッチャーキャッチャーという野球用語がさっぱり分からず
「ちょっとキャッチャー座って」と言えばその場にぺったんと正座し、バットを振らせてみれば「秘打白鳥の湖ずら」とくるくる回り
キャッチボールをやらせればゴロを拾おうとしてでんぐり返ししてしまうという…
ア、アンナ先生マジご苦労様です…ここまでの超超ド素人に教えるとなると頭が痛くてかなわんですな
それにしてもゴロを捕ろうとして「あれー?」ってでんぐり返しする小梅は和みの天才
なんて和むプレーだこれ!!むしろどうやったらこんな真似ができるのか聞きたいよ!ある意味でただ者じゃないですな小梅…

「あぁ…話に聞いていたより凄いわね…」

「そ、そこのところを本場の力でなんとか…」

「(じぃーっ)」

「…?姉さん、そんな所で何してるの?」

「わっ!?え、えっと、その…」

ところがそんな練習風景を、物陰から興味深そうに見ている女生徒が一人…
その名も月映巴。いかにもスポーツ万能そうでボーイッシュな見た目、でもなぜか部活は新聞部というよく分からない人です
ともかく小梅達をジロジロ眺めていた巴は、同じ新聞部で双子の妹・静に声をかけられてオタオタ慌ててしまいます

「まさか姉さん、野球に興味があるんじゃないでしょうね」

「う、うん、まあ」

「だったら入れてもらえばいいじゃない」

「で、でも…自分から入れてくださいっていうのも、なんだかシャクじゃない…」

明らかに一緒に野球をやりたくてウズウズしている巴ですが、「自分からお願いしたら負けなんだよ!」
向こうから誘ってくれないと入りたくないようです。これだけやりたがってるのに変なところ気にするんだなあ



それにしても「(性的な意味で)入れてくださいって言うのもシャクじゃない…」って
このシーンのエロさは異常だろ!けけけ、けしからん娘だよまったく!
とはいえこれは実に巴に入れてあげたくなる場面(性的な意味で)ですね:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「巴が野球?あの子武道が趣味でしょ?」

「ですから記子さんの方で何か心当たりがないかと…」

「ふーむ…あれじゃない?興味があるのは野球じゃなくて、野球をやっている人!」

「人…?」

「恋しい人!」

「はあ!?まさかぁ」

そして巴が野球にこだわる理由が気になった静は、同じ新聞部の記子という人に相談を持ちかけます。ところがその記子からは
「あんたの姉ちゃんガチ百合なんじゃない?」とのハチャメチャな答えが!いやいやそんなバカな…
単に見てたら自分もプレーしたくなったとか、そういう単純な理由じゃないんでしょうか。静も記子のこんな発言は本気にしてないようですが…

「あと5人!なんとしても探し出さないと!」

「出来れば運動神経のよい方がいいのだけれど」

「この際ぜいたくは言っていられませんわ!」

「でも心当たりはほとんど回ったじゃない?」

「小梅さん、諦めてはダメ!必ずどこかにいるはずよ!」

「う〜ん、どこにいるのかな…」

「…」

その日の昼休み、残りの仲間をかき集めるべく教室でワイワイ息巻いていた晶子達。
巴はそんな様子を眺めながら「ここにいるぞ〜!運動できて野球やりたい女がここにいるぞ〜!」と熱烈な視線を送りまくっていました
ところがいつまで経っても小梅達が自分に気づいてくれないので、とうとう我慢できなくなった巴はそれとなく話を振ってみることに…

「ね、ねえ鈴川さん、野球の仲間は見つかったの?」

「あっ、それが…あと5人足りないのよ」

「へ、へ〜え5人も…」

「あっ!巴さんお願いがあるの!」

「…!!な、なに!?」



「きゃほほーい釣れたー!!」と言わんばかりに、小梅のお願いトークに満面の笑みになる巴!
「やっと私も誘ってもらえるー!!」って、ここまで野球やりたがってたんですか!
それなのに自分で言うのが嫌で必死に誘ってもらおうとする涙ぐましい努力とか、巴は見てて面白いやつだなあ

「もし野球に興味ありそうな人がいたら、ぜひ紹介してくださらないかしら!」

「………う、うん」

「鈴川さーん!」

「はーい!じゃあお願いね!」

「…」
巴が仲間になりたそうにこちらをみている!仲間にしますか? こうめ「いいえ」 
こ、小梅えええええええ!!一体何をやってんですか小梅は!「野球に興味ありそうな人」って
今目の前に物凄く目を輝かせてる人がいるじゃないですか!
明らかに巴が登場キャラの中で一番野球やりたがってるよ!それに全く気づかずスルーしてしまうとは…鈍すぎだよ小梅…

「…はぁぁぁ…」

「…」

せっかく誘ってもらえると思ったのに、とんだ空振りに終わって大きな溜め息をつく巴。
そんな巴の姿を、静はなんだか不機嫌そうな表情で睨んでいました。こ、これは…?
さっき静は、野球したいという巴に「やりたいことはやったらええがね」と賛成してたのに、なぜこんな不機嫌な顔を?
もしや野球をしようとしてるから怒ってるんじゃなくて、巴の百合ターゲットは小梅だと思ったから怒っているのか!?
つまり静は、人の道を外れてガチ百合に墜ちた姉が嘆かわしくてこんな顔をしていると…
ガチ百合を嘆くとは素晴らしい妹!俺は応援するよ!(えー

「そんなの本人の自由なんだから、放っておけばいいじゃない」

「放ってなんかおけませんッ!!まさか…姉さんが…」

「そんなに心配なら、べったりくっついて見張っていれば?」

「…」

またまた記子のところへ相談しにやってきた静、すると「別にガチ百合だっていいじゃない」と言われてしまいますが
「いいわけないだろこの野郎!!」と静は百合なんて認める気はないようです。なんてまともな妹…!
百合にブレーキをかけてくれるアニメキャラなんて見たこともないので、百合嫌いの私には静に後光が差して見えますよ!
静さん…あなたは天使だ…!でも巴は百合なんかじゃなくて、単に野球がやりたいだけだと思うんだけどなぁ:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「は〜あ…」

「ねえ、あなたも新聞部員なんだから少しは仕事してくれない?締め切りが迫ってるのよ」

「今はそんな気分じゃないの…」

ガラガラッ!!

「巴!さっき体育の時間にボールを投げているのを見せてもらったわ!
 ちょっと立って、早く!」

「ふぇ…?」



そして放課後、さっきのショックをひきずったまま巴が部室でふやけていると、いきなりそこにアンナ先生が飛び込んできました
どうやら今日は体育で遠投の授業をやっていたようで、巴の飛び抜けた強肩を偶然アンナ先生が目撃していたようです

「後ろを向いて!」

「…?」

「ちょっとくすぐったいぞ」

ファイナルフォームライド!!(えー

「ぎょわあああああああ!?」

い、いきなり何をするかー!!なんと巴を立たせるなり「後ろを向けよ」「ちくしょォォ」と尻にファイナルフォームライドしてしまったアンナ先生。
まあ巴の筋肉がどうなってるか確かめたかったんでしょうけど…それにしてもなんで一番確かめたいのが尻なんだ:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「ん〜!いいヒップですねぇ!」

「い、一体どういうおつもりですか!?」

「あなたなら絶対いい野球の選手になると思うわ!
 ねえ、私たちの仲間に入りませんか!?」

巴待望の一言キター!!あれほど待ちわびていた「仲間になってください」の一言がついに!
ようやく念願かなってぱぁーっと一気に笑顔に変わる巴、そう言われて断る理由なんて何もありません
すぐにその場でOKを出そうとしますが…

「あ…!」

「先生!勧誘はやめてください!新聞部は人手不足なんです!」

「ぐ、ぐぅ…」

「あらそう…なんなら掛け持ちでもいいんだけど」

「あ…!」

「私達にそんな暇はありません!!」

「うう…」

ところがそこへ静の妨害工作が!もはや入部そのものを阻止して姉を百合から遠ざける気のようですな
それにしてもぱぁーっと喜んだりずーんと落ち込んだり、落差の激しい巴の様子が見てて面白いなぁ



「…そう…それじゃ仕方ないですね…」


「…」

「これでボールが見えれば最高だったのに…無理言ってごめんなさいね、他を当たってみるわ…」

「…お待ち下さい!たとえ恩師と言えども、無用な侮辱に黙っているわけにはいきません!」

「ぶ、侮辱…?」

「私にボールが見えるかどうか、その目でしかと確かめていただきましょうッ!!」

ついに諦めてとぼとぼと部室を去っていくアンナ先生でしたが、その時「よくも私をコケにしてくれたなコノヤロー」
先生に文句をつけ始めた巴!こ、これは…なんでもいいからとにかく食い下がって、先生に自分の勧誘を諦めさせない気でしょうか。
ともかく「私の目の良さを確かみてみろ」と言い出した巴は、バッティング一球勝負を行い目の良さを証明することに…

 

「先生!さあ!」

「OH!!サムライ!?それでは行きますよ!」

「ふぅんっ!!」

ズッパアアアアン!!

そんなねむっちまいそうなのろいボールでこの巴が倒せるかァーーッ!!
そして行われた一球勝負、先生が投げつけたみかんを見事に一刀でまっぷたつに斬り裂いた巴!
これはバッティングでかなり頼りになりそうですな…巴はアイアンリーガーで言うところの極十郎太ポジションか:;y=_ト ̄|○・∵. ターン



「ワ、ワンダホー!!巴、無理を承知でお願いします!
 私たちと一緒に野球をやってもらえませんか!」

「…恩師に頭を下げてもらっては断るわけには参りません。よろしくお願いします!」

「ワァオオオオオ!!」

(素直に入れてくださいって言えばいいのに…)

「ありがとう巴さんっ!!」

「巴さんが入ってくれれば百人力よ!」

「あはは…これからはよろしくね!」

これでようやく私を誘ってください大作戦が成功し、めでたく小梅たちの仲間入りを果たした巴!
それはいいんですが…このやりとりの間ずっと小梅をガン見しながらデレデレしまくってるのはなんなんだ巴ええええええ!!
お前本当にガチ百合だったのかよ!!ぐわー絶対静の勘違いだと思ってたのに!
つまり今までのことは野球がしたいんじゃなくて、全部小梅とお近づきになりたいからやってたことだったんだな…:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「…私も参加します!」

「えええええええ!?」

もはや完全にガチ百合まっしぐらとなってしまった巴。そんな姉の姿を見かねてか、静までが小梅たちの仲間入りを決めてしまいました。
これに驚きの声を上げたのは新聞部の記子…まあさっき「締切り間際で忙しくてしょうがないぜー」と言っていたのに
2人も部員が抜けて新聞部終了のお知らせなのでしょうがないんですが(えー
でもさっき自分で「べったりくっついて見張ってればー?」とか言っちゃったくらいだから自業自得か…:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「わぁ!じゃああと3人!?」

「やったわね晶子さん!」

「あぁっ…!?あ、あの、2人だったら私にアテがあるわ!」

どんどん増えていく仲間に大喜びの晶子達、しかしその時小梅と晶子が手を握ってぴょんぴょんしてるのを見て
「うおおお小梅たん私にも注目してー!!」と、巴は必死に手柄を立てるべく2人の生徒を集めてきてしまいます

「1年1組桜見鏡子です!巴お姉さまのために死ぬ気で頑張りまーす!」

「ちょ、ちょっと待って!私新聞部との掛け持ちなんて出来ないわよぉ!」

「野球やらないなら今すぐ貸した1円返して」

「ぐっ…!?に、2年2組…尾張記子です…」

そんな巴が連れてきたのは、「巴お姉さまのためなら死ねる!!」という巴のファン・鏡子と新聞部の記子でした
とうとう自分まで引き抜かれて新聞部を滅ぼすハメになるとはなんという哀れな記子…(えー
それにしても晶子がさっきから「うほほやったーい!!」と子供みたいにぴょんぴょん飛び跳ねてるのが意外ですな
知的お嬢様なのかと思ったら、結構天真爛漫な性格してるんですね

「…」

「あっ…新しい習慣を身につけるようになったのかしら、環さん」

「…何のことだ」

8人もの仲間が揃って小梅達がキャーキャーはしゃいでいる中、雪はクラスメイトの環がやけに周囲をうろうろしていることに気づきます
この環という子、今までも「野球なんて興味ないぜ」というポーズを取りつつ、小梅達をチラ見しているフシがあり
それに唯一気づいた雪の勧誘を受けていたのですが…

「じゃあどうしてあそこにいたの?そろそろ素直になろうよぉタマちゃん」

「…!」

「いつも辛気くさい顔で一人でお昼を食べるなんて、良くないわよ」

とその時、雪は今までのよそよそしい話し方から一転、素直になろうよタマちゃ〜んなどと馴れ馴れしさ大爆発!
おま…ただでさえ無愛想な環がますます険しい顔つきに!というか「お前の顔辛気くさいよ」とか前回の「小梅さんあんた鈍いんじゃないの」とか
虫も殺さないような顔して妙にグサッと来ること言うよね雪は…(えー

「あんな風にキャーキャーみんなで群れるなんて、子供っぽくて出来るものか」

「あら、私たちまだ子供じゃないの。子供時代にちゃんと子供っぽく過ごさないようでは、
 未来の作家としては問題なんじゃなくって?」

「う…」

「ねえ、まだ作家志望なんでしょ?」

「う…うむ…」

って…ツンケンする環を「将来作家になりたいんなら子供らしくしろ」と丸め込んでしまう雪。さ、作家…?
そんな話は今のセリフが初耳ですが、もしかして2人は単なるクラスメイトじゃなくて、昔から互いをよく知る間柄なんでしょうか?

「それなら色々な経験を積んだ方がいいじゃない。ねえ、一緒にやろう?」

「わ…私は皆の輪に溶け込んだことはないし、今さらどうやって溶け込んでいいかも分からない…」

「あ…昔から人見知りだもんね、タマちゃんは。私に任せて、みんな良い子よ!心配なんて要らないわ」

「うう…し、心臓がドキドキするぞ…」

こ、これは…今まで孤高を愛する人間のような口振りだった環ですが、雪と話すうちにとうとう本音を話し出しました
それによると、別に一人が好きなんじゃなくて友達を作るのが下手くそだったという…
ま、まあなんというか…「俺には友達ができないんじゃない!どいつもこいつもバカだから俺の友達にしてやる価値がないんだ!」って
友達いないのを正当化するのは中学時代の恒例行事みたいなもんさ…わかるぜ:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「石垣環だ、よろしく頼む!文句があるなら最初に言ってくれ!」

そして小梅達の前でついに仲間入り宣言をする環。試しにアンナ先生のノックを受けることになりますが、
なんと環は華麗なフィールディングで軽々それをさばいてしまいます。意外にも守備の名手!?友達の数はともかく凄いぞ環!(えー

「文句なんかないですわ!」

「すごーい!すごいわ石垣さん!」

「ね、ねえ、石垣さんって経験者なの?」

「小学生の時に一緒に男の子に混ざって遊んでいたの。これからは石垣さんじゃなくてタマちゃんよ」

「なっ…何を言ってるんだバカ者!!」

「か…かわいい〜〜!!」

「う…う…うう〜〜!!」

こ、これは!?恥ずかしいあだ名を定着させられて、動揺のあまり可愛すぎるリアクションを見せてしまう環!
友達の数はともかく魅力的な一面もあるじゃないですか!友達の数はともかく!(えー
というわけでようやく9人が揃った小梅達。メンバーも個性的でこれから先の展開が楽しみですね。次回に続く


■大正野球娘。第3話「娘九つの場を占めて」
 

「いってきまーふ!」

ぱたぱたぱたぱた

「(どかっ)ふぎゃっ!?」

冒頭の場面、小梅が「遅刻遅刻ー!」と口にパン…いや、おにぎりをくわえて学校へと急いでいると
いきなり曲がり角で出てきた男とぶつかってしまいます。なんたる運命の出会い!まさかこの男は小梅と赤い糸で結ばれた…って
その時ぶつかった拍子に、ぴゅーんと小梅の手から吹っ飛んでしまった弁当とおにぎり!ああ、これじゃ一度に朝飯と昼飯が台無しに!

ぴゅーん

「んっ!ああ…っと!」



って小梅すげえええええ!!あれだけバランスを崩した体勢から、俊敏な反応を見せて両方ともゲットしてしまう小梅!
これは驚きました、身体能力ハンパないですな小梅…前回ゴロ拾おうとしてでんぐり返しとかやってたんで
運動できないトロくさいタイプだと思ってましたが、野球に慣れさえすれば凄い能力を発揮するんじゃなかろうか

「ごめんなさい!あの、お怪我はありませんか?」

「えっ!?い、いや、僕の方こそ…あっ、こ、これ!」

「あっ、あらやだ!ありがとうございます!」

「(ぽわーん)」

そしてぶつかった男にぺこりと頭を下げ、「ふーメシが無事でよかった」と足早にその場を去っていく小梅。
しかし残された男の方は完全に小梅に運命を感じてしまったようです
ふと気がつけば、男の足下には小梅の落としていったハンカチが…なんだかガラスの靴を落としていったシンデレラのようですな(えー
果たしてこの純朴な王子様は、お目当てのシンデレラと再会できるのかどうか…

「みなさーん、食べながらでよろしいので聞いて下さい!私たちのクラブの名前が決まりました!」

そしてその日のお昼、みんな集まって弁当をつついているところで、晶子はついに野球部の名前を発表します
その名も桜花会…環の持ってる字は私のパソコンじゃ変換できなかったんで、これで勘弁してください:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「桜花会…?」

「そう、西洋文明を積極的に広めていく会を作ろうと思うの」

「今の日本社会は欧米化を進めているけど、なかなか掛け声通りには行ってないでしょう?」

「そこでまず私達が、そのお手本となるような活動をしていくの。だから桜花会なのよ」

「へえ〜…桜花と欧化をかけているのね!」

は、はあ…?西洋文明を広める?あんたら一体何を言ってるんですか、野球をやるんじゃないんですか野球を!
桜花と欧化なんて知るか!そんな暇あったら素振りでもすればいいのに!(えー
正直、急に日本社会がどうとか言われてもこっちはワケが分からんのですが…

「と、いうのは表向きの理由。本当の目的は、学院公認で野球をすることだ」

「あぁ…思い切ったことを考えたのね!」

なうっ!?Σ(゜д゜)な、なんと…今の欧米化うんぬんとかいうのは、学院に野球部の活動を認めさせるための口実だったのか!
そうとは知らず俺はなんてバカなことを…これは申し訳ないことをしました、というかみんな頭いいな:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「な、なんともモダンな部屋ねえ…」

「まあこれで橋頭堡は出来たわけだ!」

「そうね、これからは焦らずゆっくりと…」

「あくまでも可憐かつしとやかに進めて行きましょう。この部室から」

というわけで晴れて学校公認のクラブになったものの、部室には見るからに小ぎたないボロ小屋をあてがわれてしまった小梅達。
あまりのボロぶりに静達は思わず顔をしかめますが、環だけはやけに平然として張り切りまくっていました
こんなボロ屋を見ても顔色ひとつ変えないとは…それだけ普段から貧乏なんだろうか環…(えー

「う〜ん…うう〜ん…」

「ほっ、ほっ、ほっ、ほっ」

そして桜花会の当面の活動は、このボロ小屋のリフォームと草ボーボーのグラウンドの整備でした
重労働に静や晶子がヒーヒー音を上げる中、平然と作業を次々にこなしていく巴や小梅…なんだか亀仙流の修行を思い出す風景ですな
それにしても晶子が一個運ぶのも難儀している土砂入りバケツを、二個すぱぱぱーんと運ぶとは小梅は相当パワフルなようで…
こういう単純作業の中でも、各キャラの得意分野が垣間見えて面白いですね

「次、内野!」

カキイイイイイン!!

「わわっ、わっわっ」

「もっと腰を落として、下からすくい上げるのよ」

「おい雪、手本を見せてやれ」

「はーい!」

カキイイイイイン!!

「(ぱしっ)はいっ」

「す、すごーい!」

しばらくして部室とグラウンドの整備も終わり、ついにまともな野球の練習が出来るようになった小梅たち。
みんなまだまだボールさばきもバットの振り方もメチャメチャですが、その中で雪と環だけは明らかにみんなと違う綺麗なフォームで
プレーをしています、さすが経験者…それに巴も持ち前の反射神経で、捕り方は強引ですがボールへの反応は相当いいみたいですね

「てい!」

「(どかっ)どほっ!?」

「てい!」

「(どかっ)いだっあ!?」

「てい!」

「(びゅーん)おわああ!?」



しかしピッチャーをやらせてみると、いい速球を投げられる代わりにひどいノーコン病でデッドボールを連発する巴!
こ、硬球をドスドス当てるなー!!硬球でデッドボールはシャレになってませんよ!球速があるだけに、ぶつけられる方は地獄の苦しみですな
それとは逆に晶子は、ひょろひょろ球しか投げられない代わりにコントロールはいいようです。どっちかと言えば晶子の方がまだマシか…

「それではポジションを発表します!まずピッチャー、小笠原晶子!キャッチャー、鈴川小梅
 ファースト、月映静!セカンド、宗谷雪!サード、月映巴!ショート、石垣環
 レフト、桜見鏡子!センター、尾張記子!ライト、川島乃絵!」

そしてみんなのプレーも多少はサマになってきたところで、いよいよ各人のポジションを決めることにしたアンナ先生。
一番打球が来やすく、内野陣のカバーも忙しいショート・セカンドには、名手の環と雪を配置。
強烈な打球が来ることが多く、一塁への送球も内野で最も遠いサードには、打球反応がよく強肩の巴を配置と
かなり理にかなったポジション決めをしてますね。その代わりに外野にはヘッポコ3人組を並べるハメになってしまいましたが、
やっぱりボールを扱う機会は外野より内野の方が多いわけだし、まずはこうして内野を固めるのがスジでしょうね

「ポジションも決まったところで、重大な発表があります!
 桜花会は朝香中に練習試合を申し込みました!」

えええええええ!?ちょっ…こんな段階でもう実戦かよ!
しかも相手は例の晶子と因縁のある男が在学しているという朝香中学です、
レベル1でいきなりラスボスに挑むようなもんじゃないですか!いくらなんでも勝ち目ないよ!

「ええっ!?も、もう!?」

「ア、アンナ先生!少し早いのではないでしょうか!?」

「この試合は練習の延長です、日々のトレーニングと大差ありません♪」

「これは敵味方の戦力差を測るためで、勝ち負けは関係ないわ。なにせ練習試合なのだから!」

あ、な、なるほど…どうやら乃絵は朝香中がどんなプレーをするのか、それを研究するためにこの試合を組んだようですな
そもそも乃絵は「男子に勝つ作戦を私が立てたい」って条件で入部したわけだから、そのためにまず相手を知りたいって思うのは
確かに当然の事か…そういう意味じゃ試合をやって損はなさそうですが…

「ただし、朝香中は私達の挑戦を受諾してくれましたが、条件が3つあります!
 ひとつ、期日は次の日曜日、場所は朝香中グラウンド!」

「うむ、望むところだ!」

「ふたつ、試合は三回まで!もしくは10点差になった時点で試合終了とする!」

「練習試合なら妥当じゃないかしら?」

「みっつ、勝ったチームからその日の最優秀選手を選出し、負けたチームから相手を指名して
 後日ランデブーする!!」

「「「「えええええええええええ!?」」」」

無理な条件がなくて良かったですねえ」

最後の悲鳴が聞こえないんですかアンナ先生ー!!思いっきし無理な条件が最後についてるよ!!
負けてしまったら誰かが無理矢理デートさせられることになるとは…さっきまで「別に負けてもいい試合」だったのが
一瞬にして「絶対に負けられない試合」に変わってしまいましたな
まあ私が相手の最優秀選手だったら間違いなくアンナ先生のおっぱいを指名すると思うけど:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「なんですかランデブーって!?」

「ノープロブレム!年頃の女の子には、刺激的な出会いも必要なのでーす!」

「ええ〜…!?」

「うぅ〜…どど、どうしよう男子とランデブーなんてことになったら…」

「なるようにしかならないわね〜」

「あぁ〜勝ったらどうしましょう…!」

どうやら覆りそうにないランデブーの条件に、ついさっきまで「がっはっは試合なんて望むところだぜ」と余裕ヅラだった環も
すっかりカチンコチンになってしまいます、逆にまったく動じてない雪は男の扱いに相当慣れてるんだろうか
そして「勝ったら私と小梅たんのデートが実現するなんて最高オオオオ!!」
おバカな勘違いをして発情してしまう巴。お前は話をちゃんと聞いとったんかー!!相手の男としかデートできないんだよ!
まあこの勘違いも勝利へのモチベーションになればいいんですけど…

カランコローン カランコローン

「さ、今日も練習に…」

ざわざわ ざわざわ

「…?どうしたの?」

「なあにあの人…?」

「花束持ってるわよ」

「どなたのお知り合い?」

そんな練習試合も間近に迫ったある日。放課後に小梅が練習へ向かおうとすると、クラスメイト達が窓の外を見ながらざわついていました
一体どうしたのかと小梅もそれに混じってみると、なんと校庭に車で乗り込んできた変な男の姿が…おいおいここは女学校ですよ

「鈴川小梅さーん!!お付き合いしてくださーい!!」

「えええええええ!?」

げえなんだこりゃー!!いきなり全校生徒の注目する中、小梅に愛の告白をかました変な男!なんという恥知らず!
そんな男の様子をよく見てみたら、なんと冒頭で小梅が出会ったあの男ではないですか
こいつ…もっと純朴でウブなタイプかと思ったら、とんでもないスカポンタンですね

「キャー!!すっごぉーい鈴川さん!!」

「一体どうやって知り合ったのよぉ!!」

「お安くないじゃなーい!!」

「鈴川さんッッ!!」

(な、なんで私がこんな目に…)

そしてキャーキャー盛り上がったクラスメイト達にもみくちゃにされたあげく、口うるさいおばちゃん先生にこってりしぼられてしまった小梅。
日が暮れるまで説教を食らってようやく解放されますが、さっきの告白男はそんな時間になっても校門で小梅を待っていました

「やあ小梅さん!」

「…どちら様が存じ上げませんが、どうしてあんな事をなさるんですか!」

「どうして?だって僕は君に告白されたんだよ」

「…??」

「”気に入った男子の前でハンカチを落とす”。誰が考えたか知らないけど、
 スマートな方法だよね」

「…!あ、あれは!」

告白されたとかよく分からないことを口走りながら、ぴらぴらと小梅のハンカチを取り出した告白男。
すると小梅もそのハンカチを見た途端、状況を理解してあたふた慌て出してしまいます。むう…現代人の感覚ではよく分かりませんが、
当時の「女子が男子の前でハンカチを落とす」という行動は「好きです付き合ってください」と言ってるのと同じみたいですね
要は現代で言うと、バレンタインデーに小梅がこいつの前ででっかいハート型チョコを落としていったようなもんでしょうか

「つまり僕らは、両思いってことさ」

「は、はぁ!?それは偶然落としたものです!」

「たとえ偶然だとしても、この偶然は縁だよね?」

「違いますっ!!」

「運命的と言ってもいい、そして明日の試合が終わる頃
 小梅さんはもっと僕のことを好きになっている」

「は…?」

「僕は高原判睦、朝香中の野球部員さ!」

「え…ええええええ!?」

ゲェー!なんとこの告白男も明日の試合に参加する相手校の部員!晶子とパーティ男といい、小梅とこの男といい
朝香中とは妙な因縁で結ばれてしまっているようですな。というかこの話の流れからいくと、
明日のMVPはもうこいつが獲ると決まったようなもんでは!?性格はちゃらんぽらんでも野球センスは抜群みたいな予感が…
顔だけ見てるとえらい爽やか好青年なんですけどね、なんで中身はこうもアホな感じなのか:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「これより、桜花会と朝香中の練習試合を始めます!グラウンドのルールとして、
 ワンバウンドで外野の雑木林に入った場合はエンタイトルツーベースとします。それでは礼!」

「「「よろしくおねがいします!」」」

そんなわけでとうとう迎えてしまった朝香中との練習試合。無表情でパーティ男をじろりと見つめたままの晶子がおっかないですな…
それにしてもグラウンド、ルール、ワンバウンド、エンタイトルツーベースって、大正時代でも結構会話の中で
横文字バリバリに使いまくってるのね:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「…」

「待ってください晶子さん、一体どうしたんですか」

「あなたの言う野球とやらを始めてみましたの」

「見れば分かります、でもこんな男勝りなこと…僕は感心できません」

「”女は家庭に入るべき”ですものね」

「…晶子さん、最近電話にも出てくれませんが、それと関係でも…?」

「…試合中は手加減無用です」

そして整列の直後、晶子に声をかけてきたのは例のパーティ男・岩崎…野球を始めた晶子にどんな反応をするかと思いきや
晶子の突拍子もない行動にただただ困惑しているようです。てっきり「俺をバカにしてんのかコノヤロー」と怒り出すかと思ってましたが…
意外にも晶子のことは結構大事に思ってるようですな、「最近電話に出てくれなくて寂しいお(´;ω;`)」とか
なんだか晶子の話と違って憎めないタイプの人間だなという印象なんですが…

「晶子さん、あの人…」

「許婚よ」

「「「えええええ!?」」」

「なるほどな。しかし嫌味な男だ!あいつをヘコましてやろうという小笠原の気持ち、よく分かる!」

「うん!」

「そうね!」

ところが「なにアイツ最低の男だな」女性陣から評判最悪の岩崎。
な、なぜに!?そんなに今の岩崎の態度って最低でしたか!?私にはもっと晶子と仲良くしたいオーラがひしひしと感じられたんですが…
うーむ…そう思うのは私が男だからなんだろうか。なんかすごい岩崎可哀想なんですけど…
それとやっぱり岩崎と晶子は許婚だったんですね、晶子がこれだけこだわるのも、一生付き添う男との価値観の相違だからか…

ズッバアアアン!! 「っ…!!」

ズッバアアアン!! 「うっく…!!」

ズッバアアアン!! 「ぐっ…!!」

そして一回の表・桜花会の攻撃。意気揚々と打席に向かったものの、岩崎の豪速球にキリキリ舞いさせられてしまう環達!
い、岩崎さんハンパねえ!さっきの巴を遥かに凌ぐ凄まじい球速…1番の静はともかく、2番・3番の雪と環がカスリもせんとは流石ですな…

「小梅さんがキャッチャーだなんて、勿体ないことをするなあ」

「…?」

「だって、マスクで君の可愛い顔が見えない」

「は、はあ!?」

「…高原、打席で無駄口を叩くな!」

「はあーい」

そして迎えた一回の裏、出てきた一番バッターはなんとあの高原!いきなりこいつかよ!これは先頭打者ホームランでも打たれるフラグか…!?
それにしても高原、つくづく顔だけ見てれば爽やかイケメンなのになあ。もったいない奴だよお前は:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「プレイ!」

「さあ来い!!」

「えいっ…!」

「ふぅんっ!(ばこっ)」

「アウトォー!!」

ええええええええええ!?た、高原よえええええええ!!
なんなんだこいつー!どんだけ凄いバッターかと思いきや、晶子のスローボールをぼてぼての内野ゴロにして即アウトかよ!
なんつー肩すかしな…一打席目でこれじゃ、こいつのMVP取得はもう可能性なくなったと思っていいんじゃないか:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

ガキイイイン!

「はいっ!」

「アウトォ!」

「おいおい何やってんだよ…」

「球が遅くて待ちきれなくて…」



そして続く二番バッターもセカンドフライに打ち取り、快調な滑り出しを見せる桜花会の守備陣。
この分なら3回まで晶子のスローボールでしのぎ切れるか…?しかし次の3番はあの岩崎です
この貫禄のあるバッターを打ち取れるかどうかで、どうやら試合の流れが決まりそうですな

「…」

「えいっ!」

カアアアアアン!!

「あっ…!?」

って完璧に打たれたー!!今までの2人とは明らかに違ういい音を立て、外野への大きな当たりを飛ばす岩崎!
背筋の凍る思いで外野を振り向く晶子、しかしそこではオーライオーライのポーズを取るレフト・鏡子の姿が…
これはナイスプレイ!あらかじめ深めに守っていたんでしょうか、これならなんとかボールの落下点に届きそうな…って

「あ、あ、あわわっ…!」

「あ…!?」

ゲェー!?や、やっちまった!なんとボールの落下点を見誤って前に出すぎてしまった鏡子!
ボールは大きく鏡子の後ろへ逸れてしまい、わたわたとボールを追いかけている間に岩崎は三塁へ!なんてこった…
でも素人がフライの落下点見極めるのって本当難しいよね…だって俺がそうだし…フライなんかマジで捕れる気しねーよ:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「す、す、すいませぇぇん…!」

「お、おいおい、泣かしちゃったぞ…」

「鏡子!気にしなーい!晶子、気持ちを切り替えていきなさい!」

ううむ、責任を感じて泣き出した鏡子がなんとも可哀想ですな…しかし今のプレーを引きずっている場合じゃありません
次のバッターは岩崎よりもバッティングを買われている四番バッター…ここを切り抜けられるかどうかが正念場ですな

「負けてたまるもんですか…!えぇいっ!!」



シュガァッ!!

「ひいっ!?」

「相変わらず凄いな…セーフ!」

うわあああ!火を吹くような物凄い当たりが一塁に!さすが四番…打球の速さが他とは段違いです、これは捕れって言う方が無理だ…
そんな四番のタイムリーヒットを皮切りに、晶子は続くバッター達にもひたすら連打を浴び続けて
なんとこの回、9点もの大量点を失ってしまいます。しかもまだスリーアウトが取れずに続く相手の攻撃…なんてこった…
とはいえ、確かに打たれたヒットの数も多いですが、それと同じくらい普通の守備ならアウトにできる打球も多いのです。
トンネルやバンザイ逸らしなど、初歩的なエラーさえなければここまで傷は大きくなっていないのですが…



「はあ…はあ…はあ…」

「…即席のチームにしては、よく頑張ったね」

そしてとうとう打者が一巡してしまい、ランナーを三塁に置いて再び恐怖の四番バッター登場!うぎゃあああああ!
精神的にも体力的にも消耗している今の晶子では、この四番の相手をすることはもう…

「はあ…はあ…えぇいっ!!」

「でも…これでは勝てない!!」

グワキイイイイン!!

晶子最後の執念を真っ向から粉砕する四番の一振り!打った瞬間に「行かれた」と分かる打球はグングン空へと吸い込まれ、
試合を決定づけるツーランホームランに!11対0…「10点以上点差がついたら負け」という例の条件により
この瞬間、桜花会の敗北が決定してしまうのでした

「試合終了!11対0で朝香中学の勝ち!」

「…」

「…晶子さん、僕が何か失礼な態度を取っていたのでしたら謝ります。だから…機嫌を直してくれませんか」

そして試合後、改めて晶子と話し合いにやってきた岩崎…しかし晶子は貝のように押し黙ったまま
岩崎が何を言っても決して口を開こうとしませんでした。結構歩み寄ろうとがんばってるのにな岩崎…
女性陣からすると何も女の気持ちが分からないウザイ男としか映らないなんて、ちょっと悲しすぎやしないか:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「…」

「…どうやら、僕と晶子さんには行き違いがあるようですね…また後日、改めて伺います。
 それから、ランデブーなんてふざけた条件は撤回させますから」

「お、おい!?岩崎!?岩崎ィィーッ!!」

なんとここでランデブーの条件を破棄してしまう岩崎!そ、そんな!せっかく面白い事になりそうなのにもったいない!
MVP確実だったあの四番君には残念なことをしましたな、それと「ちくしょー俺のランデブー計画が台無しだ」と大騒ぎしてる高原は
そんなもんとっくの昔に台無しだから安心していいよ!!
(えー

「…」

「…」

「うっ…うっうっ…うぅ…ううぅぅ…」

まるで試合にもならなかった目標との大きな差…目の前に突きつけられた厳しい現実を痛感し、
朝香中が練習を始めてもずっとグラウンド脇で佇む小梅たち。そんな中、自分を責め続けて泣いている鏡子の声が寂しく響くのでした…次回に続く

ううむ、現実を知った桜花会が次回で空中分解しないか心配ですが、付け焼き刃の野球が全然通用しなかったことは
スタッフの「本気で野球もののストーリーを作ろう」って気合が感じられて、かなり個人的には見ごたえのある展開ですな
目標の朝香中も強すぎず弱すぎず、今は全然かなわないけど「小梅達がある程度上達すれば勝ち目も見えてきそう」って
試合の中で垣間見えたのも、目標設定としていいものを選んだなっていう気がしました。
この先の展開でポシャらなければかなり楽しめそうな気がするなぁ






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