■大正野球娘。 最終話「土と埃にまみれます」
 

「(そわそわ)」

「あの…旦那さん。お嬢さんの試合、応援に行った方がいいんじゃありませんか?」

「…」

小梅達が朝香中と激闘を繰り広げている中、すず川では小梅父がなんだかそわそわしてカレー鍋をぐるぐるかき混ぜていました
なんだかんだ言って、娘の一世一代の大勝負が気になるんでしょうか。平静を装ってますがマユゲがピクピク動きっぱなしです

「旦那さん」

「あいつは勘当したんだ。俺には関係ねえ」

「でも旦那さん…!」

「うるせえッ!!仕事中に無駄口叩いてる暇なんかねえぞ!!」

「はあ…」

ところが三郎さんがいくら応援に行こう行こうと言っても、意地っ張りの小梅父はまるで言う事を聞いちゃくれません
母ちゃんの方も
「ほんとは行きたいくせに」と溜め息をついております、そうこうしているうちに小梅達の試合は…



カキイイイイン!

「くうっ!」

「お、おいおい9番にまで打たれちまったぜ…!?大丈夫かな…」

「お前が言った通りだな」

「ああ」

なんと柳が魔球を見破ってからというもの、5回表の攻撃からは晶子をメッタクソに攻め立てていた朝香中!
前回柳が言っていた
「いい方法がある」とは魔球を投げる時の晶子のクセの事だったようで、
今や朝香中の誰もが魔球をゆうゆうと見逃し、直球だけを思い切り狙い打ちしていました

「魔球に手を出してこなくなりましたね…」

「…」

(じっくり見てくるつもりなら真っ直ぐで…)

ゴワキイイイイン!!

「あ!?」

柳の逆転満塁ホームランキター!!ぐわー!3点のリードも五回だけであっと言う間に溶けてなくなり5対3!
さらには続くバッターにもバカスカ打たれるばかり、もはや直球を投げること自体が自殺行為です
このままでは点差が広がる一方…見かねたアンナ先生は、タイムを取って晶子達に指示を飛ばしますが…

「タイム!どうやら向こうは、魔球を見極める方法を見つけたようね」

「アンナ先生…一体どうしたら…」

「そんな顔しないの。手を出して来ないなら魔球でカウントを稼いで、
 勝負する球は練習通り、相手の苦手なコースに投げなさい」

「…はい!」

4回までは直球でカウントを稼いでから魔球で決めていましたが、これからはその逆で攻めていくことに…
というかこの際だから、
全球魔球を投げまくるわけには行かないんだろうか:;y=_ト ̄|○・∵. ターン  さすがにそれは負担が大きいのかな…



カキイイイン!カキイイイン!

「あぁっ…!」

「記子…朝香中がどうやって魔球を見極めているか、探し出さないといけません」

「…はい!」

しかしいくら苦手なコースと言えど、晶子の直球をいとも簡単に打ち返してしまう朝香中!
晶子の直球ではただでさえパワーが不安なのに、相手には「次は直球だから思いっ切りフルスイングしてやれ」とバレバレなわけですからな…
これではとても抑える事は無理でしょう、なんとか手遅れになる前に、柳に見破られた晶子のクセを見つけなければ…と
記子とアンナ先生は目を皿のようにしてそれを探しますが…

「ねえ、試合はどうなってるの?」

「うん…逆転されたみたい…」

「えぇ…!?」

「なんですか!練習の準備もしないで!」

「あ、あわわ…!」

「…ふん!」

そんな桜花会の様子を、校舎から心配そうに眺めていた合唱部の生徒達。しかし鬼ババの大口先生にガミガミ怒鳴られて、
わたわたと部活の準備に取りかかるのでした。この大口先生も、やはり小梅父と同じで意地を張ってるんだろうか…

「…」

「んっんん。小梅の試合、どうなっているのかしらねえ」

「…知るか!あいつは勘当したって言っただろう!」

「旦那さん、痩せ我慢してないで応援に行きましょうよ!」

「やかましいッ!!俺は我慢なんかしてねえやッ!!」

その頃同類の小梅父はというと、まだマユゲをピクピクさせながらカレー鍋をかき混ぜている最中でした。
いよいよ小梅母まで三郎さんと一緒になって、
「応援行こうよー」「応援行こうよー」
小梅父を試合に行かせようとしますが、それでもまだ小梅父はムキになるばかり…一体この頑固者をどうしたら…

「頼むぞ月映姉ー!!」

「巴お姉様ぁー!!」

「任せなさーい!」

そして6回の裏、7対3と4点を追う桜花会は、ツーアウトランナー三塁で巴の打席を迎えていました
点が取られてしまうなら取り返すしかない、ここはなんとしても巴の一打に期待したいところですが…

カキイイイイン!

「ふっ!」

スッパアアアアン!!



そんなねむっちまいそうなのろい打球でこの岩崎が倒せるかァーーーッ!!
岩崎うめえー!!なんと巴お得意の超速ピッチャー返しを堂々とガッチリ捕球!
なんてやつだ…打った瞬間確実に1点入ると思っただけに、その希望をこうも真正面から打ち砕かれるとショックも倍増です

そしてチェンジとなった7回表、晶子はやはり朝香中の豪打の前になす術なく、この回もランナーを溜めてしまい…

「…タイム!ここは揺れる魔球で勝負しましょう」

「え…!?わ、私あの球捕れないよ…!」

「でも、他にこの場を切り抜ける方法はありません。これ以上点を与えるわけには行かないわ」

ああ…
前にもどっかでこのやり取りを見たような…(えー
以前はこの賭けで
サヨナラ満塁振り逃げという最悪の結果を招いてしまったわけですが、
かと言ってこのまま何もしなければ敗北決定な事も確か…もはや一か八か、タイガーナックルに賭けるしかないのかもしれません
このまま負けるくらいなら、いっそこの球と心中してやらー!!

ってほんとに心中したー!!いやああああああああ!!
タイガーナックルで高原を空振りに仕留めたものの、今回も小梅が後ろに逸らしてしまい
2点タイムリー振り逃げ!ぎゃああー!!
あぁ…これでスコアは9対3、もはや晶子の球3種は何を投げても失点するのみ…いよいよ本当に手詰まりになった感じです

「やっぱり…男子には勝てないの…?今まであんなに頑張ってきたのに…」

「…」

「ほらそこ!手が止まっていますよ!」

「…大口先生!私、今日は早退します!」

「えっ…!?」

「私も早退します!」

「私も!」

「ちょ、ちょっとあなた達!」

とその時、桜花会絶
体絶命のピンチに校舎を飛び出した合唱部!そう、何を隠そう彼女達は、
第一話で小梅達と一緒に早稲田の練習を見に行った仲…それ以来小梅達の頑張りを見守ってきた彼女達は、
この危機にいてもたってもいられず、応援せずにはいられなかったのです。というか大口先生、
こんな桜花会のピンチには率先して来てくれるかと思いきや、まさか校舎にぽつんと取り残されるとは:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「頑張れ!頑張れえー!」

「ここを抑えておかないとまずいぞ…!」

「岩崎、好球必打だ!」

「はあ…はあ…ええいっ!」

カキイイイイン!!

「あ…!?」

なおも朝香中の攻撃は続きます、ランナーを溜めて迎えたバッターは岩崎!駆けつけた合唱部の必死の声援もむなしく、
岩崎のバットは完璧に晶子の直球を捉える!その打球は火を吹くように飛んでいき、セカンドの頭上を超えて決定的な追加点を…

バシイイイイッ!



な、なにィー!?ここでセカンド雪の
超ファインプレー!ヒットは確実と思われた当たりを、物凄いジャンプで見事に掴み取る!
このスーパープレーのおかげでスリーアウトチェンジ、この回はなんとかさっきの振り逃げの2点だけで済み、
かろうじて首の皮一枚つながった感じですが…

「よくやったぞ!お雪!」

「…う…うう…」

「…!?お、お雪、どうした!?お雪!」



ああ!?しかし地面にばったりと倒れたまま、激痛にうめいて起き上がれない雪!ボールを捕った後、右腕を押し潰すような感じで
非常にまずい倒れ方をしましたからな…
雪の超重量級の体重が全て右手にかかったなんて…(えー
雪の体重がもう少し軽かったならこんな悲劇は…:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「強くひねっただけで折れてはいないみたい…どう?動かせる?」

「(ズキィ!)あうっ…!」

「お雪…!」

「だ、大丈夫、これくらいなんでもないわ…」

すぐにベンチへ戻ってアンナ先生の手当てを受ける雪。もしかしたら肩でも脱臼したのかと思ってましたが、
ケガの内容は手首の捻挫のようです。とはいえ、軽く腕を動かしただけで雪の表情はご覧の通り…
本人は大丈夫だと言ってはいますが、どっからどう見てもやせ我慢です。これではもうプレーを続ける事は到底…

「…そのケガで試合を続けるのは無理じゃないかな、ここは安全を考えて試合放棄を提案するが」

審判のけいおん大学も、これ以上のプレー続行は無理だと判断。それは晶子達もみんな同じ事を考えているようです
晶子も自分のケガなら
「冗談じゃねえ!腕がヘシ折れようがちぎれ飛ぼうが関係ねーぜ!」
闘志満々で続行を主張するでしょうが、さすがに仲間の事となると話が違うようで…
そして桜花会の面々は、もはや誰もがうつむいて試合放棄せざるを得ないと落ち込んでしまいます

「…」

「…」

「…」

「…それでは、試合放棄ということで」

「待ってください!これくらいなんともありません、試合は続けます!」

しかし、それでもけいおん大学の言葉をさえぎって続行を主張する雪!
とはいえ
「よっしゃー本人がそう言うなら」とホイホイ言うことを聞くわけにもいきません、
周りのみんなは誰もが
「おいやめろ馬鹿、この試合は早くも終了ですね」と、雪を止めようとします

「しかし…」

「本人が出来ると言っているのです!それをお疑いですか?」

「で、でも宗谷さん…」

「私達が男子と試合が出来るのは、これが最後の機会かも知れないのよ?
 私ね…この試合をするのをとても楽しみにしていたの。
 あの日、晶子さんが教室で語り始めた時からずっと…
 小さい頃、男の子に混じってしていた野球、とても楽しかった」

「うん…」

「でも、大きくなるとその野球も出来なくなって…けれど晶子さんの言葉を聞いて、
 また野球が出来るんだって希望が持てたのよ。だから…!」

おそらくこれが、最初で最後の男子との公式試合。第一話からそれを何より楽しみにして、この数ヶ月ずっと練習を積んできた雪。
それが自分のケガで終わってしまうなんて、こんな勿体ない話はありません。何が何でもこの試合は最後まで続けたい…
その雪の熱意がとうとう晶子達にも伝わり、試合放棄を撤回すると、円陣を組んでもう一度気合を入れ直します

それにしても雪、今の回想シーンではこんなに目を輝かせて晶子の話を聞いていますが、
実際の一話では
こんな興味なさそーな顔でそっぽを向いてました
捏造とは感心しませんな、雪さんは油断も隙もないから困る
(えー

「いいこと皆さん!!私達の本気は
 こんなものではないということを、見せてあげましょう!!」

「「「「うん!!」」」」

「あのケガでまだやるつもりなのか…?」

「…骨が折れていたってやるさ、よく考えてみろ、
 ロクにボールも扱うことの出来なかった彼女達が
 ここまでのプレーが出来るようになるのに、どれだけの努力をしたのか!」

「ああまでされちゃ…ちゃんと応えてやらないとな!」

「ああ!!」

「いいかみんな!!残り3回、絶対に手を抜くな!!
 ここからは全国大会決勝戦のつもりでプレーするんだ!!」

「「「「おお!!」」」」

そんな闘志溢れる桜花会に触発されて、朝香中も円陣を組み最強のライバルと認めての気合を注入!
なんだかんだ言って、晶子と岩崎って似た者同士ですね。仲間を鼓舞するセリフがどちらもよく似ています

「胡蝶、頼むわよー!!」

「内野前進!!」

そして試合は7回裏・桜花会の攻撃、1番胡蝶の打席から。もはや完全に慢心を捨てた朝香中は
もう胡蝶の内野安打は許すまいと、内野陣を前進させてのゴロ対策を取ります。それに対して胡蝶の取った行動は…

ズダダダダダダ!

「く…!」

「セーフ!」

なんと
インパクトの瞬間からすでに走り出してのバントヒット!今まではスイングしてから走り出していましたが、
とうとうそのスイングの時間すらも走りに使うために、こんな打法を編み出すとは…
その甲斐あって前進守備でも胡蝶を刺せずに一塁セーフ!これで待望のノーアウトのランナーが出ましたね

ガキイイイッ!!

「ううっ…!」

「君…大丈夫かね?」

「は、はい…大丈夫です!」

しかし続いてのバッターは、問題の大ケガ人である2番・雪…どうやら送りバントで胡蝶を2塁に進めようとしたようですが、
それすらもままならずにファールになってしまい、激痛にうめいております。
バントも無理となればヒッティングはもっと絶望的…これはもうアウトを取られるしかない感じですが…



「ああ…」

「宗谷さん…」

「あなた達ッ!!それでも東邦星華の合唱部ですか!
 応援するならしっかり声をお出しなさいッ!!」

ってついに大口先生降臨キター!!
すっかりお通夜ムードになってしまった合唱部達に、ビシバシと鞭を入れて力一杯応援をさせる大口先生!
ようやくこのツンツン婆ちゃんもデレる時が来たか…まあ野球部を応援したくて来たと言うよりは、
校舎に一人ぼっちにされたのが寂しくて来たようにも見えるのがちょっとアレですけど:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「く…うっ!!」

ガキイイイッ!!

そんなお婆ちゃんパワーを受け取った雪は、腕の激痛にも耐えて強引にバットを振り抜きヒッティングに出る!
それでも結果はボテボテの内野ゴロ…ところがその時
「よっしゃーこれで楽々キャッチしてああー!?と、
セカンドが捕る直前にランナー胡蝶がゴロと交錯!胡蝶に一瞬視界を遮られてしまったセカンドは、
わずかにボールを見失って後ろへ逸らしてしまう!胡蝶うますぎるだろ…普通ならゲッツーコースだったのにそれをヒットに変えてしまうとは

「ようし…その根性、無駄にはしないぞ!」

カキイイイイン!

そんな雪のガッツに燃える3番・環もヒットで出塁!まともなヒットはこれが
この回初めてなのにもう満塁だなんて、
ちょっと岩崎がかわいそうですね:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

 

「巴姉ちゃん!頼んだぞぉーっ!!」

ズッバアアアアン!!

「さ、さっきより速くなってないか…!?」

そして満塁の場面で頼れる4番・巴登場!ここでも巴には乃枝からピッチャー返し打法の指示が出されますが、
ここに来て気迫のこもった物凄い豪速球を投げ込んできた岩崎!やはり4番には120%の力で勝負するという事でしょうか
これには巴ですらも完全に振り遅れてしまい、みるみるうちにツーストライクと追い込まれてしまいます

「…タイムお願いします!」

「タイム!」

「ふう…」

「姉さん。そんな窮屈なバッティング、姉さんには似合わないわ」

「えっ?」

「やっちゃいなさいよ、打ちたかったんでしょう?ホームラン」

「ちくしょーこのままじゃ負ける」と最後の勝負の前に、いったんタイムを取って間合いを取る巴。するとその時
ケチなシングルヒットなんざ狙ってんじゃねぇ!さっさとホームラン打って来やがれ!
単打狙いをやめるよう静からの檄が!確かに今の巴は表情ひとつ取っても、なんだか難しい顔をして巴らしくありません
こんなクソマジメなツラや細かいヒットは巴本来の姿じゃない…そのことを気づかされた巴は、
ついに迷いの晴れた顔でバッターボックスに立つと、意気揚々と相棒の虎徹を構えるのでした
今宵の虎徹は血に飢えておるわ!!(昼間だけど)

カッキイイイイイイン!!

「行け、行け、行け、行け、行け、行け…!行けえーーっ!!」

そして巴の打球は遥か空の彼方に吸い込まれ、ついに巴念願の初ホームラン達成!しかも満塁ホームランで9対7!
あれだけあった点差も一気に射程圏まで近づいて参りました。それにしても
「ホームラン狙うなよ!いいか絶対ホームラン狙うなよ!」
最後までホームランに反対していた乃枝の放心っぷりが面白いですね
しかしこのホームランの場面、もう少しハデにならなかったんだろうか:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「やられたな…」

「手は抜いていない」

「分かってるよ、彼女の実力が本物だということだ。気を引き締めて行こうや!」

「ああ…!もう点はやらん!」



ズッバアアアアン!! 「あっ…!?」

ズッバアアアアン!! 「う…!」

ズッバアアアアン!! 「くぅ…!」

まだノーアウトで桜花会の攻撃ではありましたが、続くバッター、5番静、6番小梅、7番晶子は3者連続三振!岩崎つえー
やはり運が味方してくれなければ岩崎の球はどうにもならんようです、この回もまともに打てたのは環と巴だけだったし…

「さあ、あと2回…!しっかり抑えて行きましょう!」

「はい!」

「…」

「あ、ちょっと待って!朝香中のバッターは、晶子さんのクセを見て打っているみたいなの」

「クセ…?」

そして8回の表、
「またボロクソに打たれる作業が始まるお…(´;ω;`)」と守備につこうとする晶子達でしたが、
その時ついに記子から晶子のクセについてのアドバイスが!とうとう記子も見破ったのか!

「こうやって構えた時に、まっすぐの時はグローブの形がこうだけど、
 沈む魔球の握りにしようとすると、少しだけボールが見えるのよ」

「「「おお〜…!」」」

おお、なるほど…どうやら晶子が魔球を投げる時は、直球の時と違ってグローブの中で握りを変えているようで、
それをやるたびに
グローブがもぞもぞ動いて中のボールが見えていたという…だからあんなに朝香中にモロバレだったんですね

「じゃあ、そのクセを出さないように気をつけましょう!」

「ええ!」

「待って!そのクセ、利用しちゃいましょう!」

「よっしゃーこれでもうグローブなんて動かさないぜ」と意気込む晶子達でしたが、その時乃枝から新たなアドバイスが!
そう、
ボールが見えたら魔球、見えなかったら直球と相手が判断しているなら、それを逆にして混乱させてやろうというのです

「(もぞもぞ)」

「ふふ…」

スパアアアン!!

「ストライクバッターアウト!」

「あ、あれ…!?」

「(にこっ)」

「あ…はは、どうやらバレたみたいだな」

これで晶子の魔球と直球の区別がつかなくなり、これまでのようなメッタ打ちができなくなった朝香中。
しかしそれでも条件はまったくの五分、序盤と違って晶子の手の内がバレている以上、朝香中は鋭い当たりを何度もかっ飛ばしてきます

しかしここからが桜花会のスーパーファインプレータイム
センター前に打球が飛べば、胡蝶が猛烈なダッシュから矢のような好返球を見せ、
それを中継した環も流れるようにバックホーム!
最後に小梅が激しい本塁クロスプレーでランナーと激突しながらも、
ガッツ溢れるプレーでボールを放さずアウトに!
そしてセカンド雪がボールを捕れば、
ケガで投げられない自分に代わって環に素早くグラブトス!
ファースト静も、難しい球を物凄い体勢で捕球したりとファインプレーの連続です

この他にも、鏡子があの合宿の時のような、猛烈なダイビングキャッチを見せたりと決して得点を許さない桜花会!
それにしても
胡蝶のレベルの高さは異常。前進守備を破る新打法を編み出すわ、
相手守備を撹乱するトリックプレーを見せるわ、タイムリーになりそうなヒットも素晴らしい守備でアウトにするわ…
お前本当に桜花会いちのシロートか!?達人にも程があります、というか雪&環のプレーも
現代のプロ選手で
超ハイレベルな守備の名手がやるようなプレーですよ!お前らは化物かー!

「はあ、はあ、はあ…」

「晶子さん、大丈夫?」

「ええ…あと1人ですもの、大丈夫よ!」

そんな仲間達の素晴らしい守備に助けられ、ついに9回表ツーアウトまで9対7のまま失点せずにやってきた晶子。
しかし朝香中の攻撃でランナー三塁、迎えるバッターは4番柳と、ここにきて最大の山場を迎えようとしていました

「でも次は、4番の柳さんよ…普通の方法じゃ抑えられないわ。
 だから…揺れる魔球を使いましょう!」

「え…!?で、でも…」

「私、必ず捕ってみせる。だから投げて!」

なんと決意の表情で「ここはタイガーナックルで行くっきゃねぇ!」と言い出した小梅!
今まで小梅は、タイガーナックルを捕れない捕れないと言う一方でしたが、ここに来て初めて自分から要求を!
しかし
サヨナラ満塁振り逃げやら2点タイムリー振り逃げやら、試合で投げればいつもロクなことが起こらなかったタイガーナックル…
それだけに晶子も不安げな表情ですが、とうとう小梅の熱意に負けてそれで勝負することにします

「ツーエンドツー!」

「ええいっ!!」

スットオオオオオン!

「ストライク!バッターアウトォッ!!」



すっげぇ地味に決まったー!!なんじゃこれー!!さっきの高原の映像の使い回しじゃねーか!
ちょっ…この試合、ピッチャー晶子最後の大勝負だというのに
このテキトーさは一体!?

「なにが4番の柳だ…!
 目の前の標的を今倒す!!
 この前の借りをたった今返す!!」


(C)丹羽啓介/小学館

「目が…追いつかない…!!」

とかこれぐらいは柳三振で盛り上げて欲しかったんだが:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「ツーアウトー!打たせていくぞー!!」

「鈴川さん!頑張ってー!!」

さあそして逆転に望みをかけた9回裏、桜花会最後の攻撃。ランナー巴を一塁に置いてすでにツーアウト、
その緊迫した場面で打席が回ってきたのは小梅でした

ズッバアアアアン!! 「スットライーク!!」

ズッバアアアアン!! 「ストライクツー!!」

しかし9回だというのに、まったく衰える気配のない岩崎の球威!これまでの打席と同じように、小梅のバットはむなしく空を切るばかり!
あまりにも大きい力の差、とても小梅が打てる映像が思い浮かばない…そんな小梅を見守る桜花会の様子はまるで…


(C)サンライズ・メ〜テレ

ダメかもしれな〜い♪(えー

まさしくこんな感じの顔になりながら「もはやこれまでか…」と、思わず溜め息が漏れてしまう桜花会。
力では到底かなわないうえに、心まで折られてしまってはもう…

「バッカヤロオオオオッ!!そんな簡単に諦めるんじゃねええッ!!
 俺はそんな娘に育てた覚えはねえぞおおおおっ!!
 少しは根性見せてみろおおおおお!!」

 

ってついに親父の応援キター!!
ひたすら鍋をかき混ぜながら「応援なんざ行かねえ絶対行かねえ」言ってた親父がついに!
というかその
ありえないくらいメチャクチャ嬉しそうな顔はなんなんですかお父ちゃん!?いくらなんでもハイテンションになりすぎだろ!

「お嬢さん!練習の成果を見せてくださーい!!」

「あ…!うん!!」

そして
三郎さんの声援にだけはきちんと返事をしてバッターボックスに入る小梅!三郎さんだけ明らかに特別!?
そんな愛のパワーを存分に込めて打った小梅の打球は、外野の間を縫うようにポテンと落ちたヒットに!
愛以外に人を強くするものなどあるか!絶対に打てないと思われていた小梅がまさかの出塁!
これでランナーは二・三塁となり、逆転のチャンスでバッターボックスには岩崎と因縁の晶子が入ります
前回までは
投手晶子、打者岩崎で最後の対決をするのかと思ってましたが、まさか逆になるとは…これは予想外で面白い展開です

「どうする?小笠原さんの後はあの2人だ、歩かせるって手もあるぞ」

「いや、ぜひ彼女と勝負したい」

「ふふ、そう言うと思っていたよ」

晶子の次に控えるバッターはへっぽこ打者の鏡子と乃枝…ここで晶子を歩かせれば朝香中が勝ったも同然ですが、
そんな勝利を得たところで岩崎には何の意味もありません。この試合は朝香中と桜花会の勝負である以前に、
まず何よりも晶子と岩崎の勝負…ここで真剣に晶子と向き合わなければ、2人とも前に進む事などできません

ズッバアアアアン!! 「スットライーク!!」

ズッバアアアアン!! 「ストライクツー!!」

そして全力をもって投げ込まれる岩崎の豪速球!小梅の打席と同様、これには晶子も手も足も出ずかすることすらできません
しかし最後の一球、晶子はそれでもまるで諦めずに、今までにない鋭い眼光を見せる!なんという闘志…
これほどの気迫なら、奇跡の一打を呼び込むことも可能となるか…?



こつーん

ちょっ…え?(゜д゜;)えええええ!?バ、バントおおおおおお!?
お、おま…あれだけ物凄い気迫を見せておきながらバント!?
晶子あんたちょっとセコイよ!(えー
とはいえツーストライクからのスリーバント、しかも今はツーアウトの状態…バント失敗すれば即敗北というこの状況で、
まさかこんな手を使ってくるとは夢にも思っていなかった朝香中。完全に意表を突いた結果、晶子はまんまと一塁でセーフに!

ダダダダダダダダ!

「なっ!?」

(絶対…!絶対同点にするんだ!負けるもんか!!)

三塁の巴が帰って9対8、ところがその時、二塁にいた小梅までも三塁を蹴ってホームへ爆走!
次に続く鏡子や乃枝では岩崎にかなわない以上、もうこれが最後のチャンス…一か八かのツーランスクイズに賭けるしかありません
そしてホームベースに向けて滑り込む小梅!セーフかアウトか際どいタイミングですが…!?



(C)こせきこうじ/集英社

ホームベース…!

ホームベース…!

ホームベース…!

届いてねえー!!あとわずか数センチのところでタッチされてしまった小梅!9対8で試合終了!
これだけ健闘したもののわずかに及ばず、桜花会は朝香中に敗北を喫してしまうのでした

「…ごめんなさい…」

「何言ってるの、あなたのせいなんかじゃないわ」

「うむ、あの状況なら誰でも突っ込んでいただろう」

「環の言う通りよ、全力を尽くした末の結果です。小梅が謝る必要なんてありません」

やっぱり無謀な暴走だったのか…と、自分のふがいなさを感じて落ち込む小梅。
しかし晶子や環をはじめとして、桜花会のみんなは十分よく戦ったと満足気な表情を浮かべていました
でも正直雪の笑顔はなんか恐いな(えー 
雪がこうやって目を閉じて笑ってる時は、何を考えてるか分からんというか…:;y=_ト ̄|○・∵. ターン



「晶子さん、その…この場でなんなのですが…
 いつぞやは、失礼な態度を取って申し訳ありませんでした…!」

そして桜花会と朝香中の注目が集まる中、ついに深々と頭を下げて晶子に謝罪した岩崎!
岩崎からはもう差別的な考えはすっかり消えているらしく、パーティでの事も
「失礼な事を言ってしまった」と反省しているようです。
しかし岩崎の方は何話か前からそんな感じでしたが、問題は晶子の方ですな…
晶子は今まで岩崎に散々な態度を取ってきましたが、これで少しは軟化するのかどうか…

「あ、あの…頭をお上げになって?私、あの時のことなどまったく気にしていませんから…」

 

あ…?あ…?ま、待てやあああああああ!!なんですかこの急激なデレっぷりは!?
今まで会うたびこんな不機嫌ヅラしてシカトしたり罵声浴びせたりしてたのが、「ごめんなさい」と言われた瞬間デレデレ!?
早いよ、変わり身早すぎだよ!というかまず晶子の方が
今までの岩崎に対する仕打ちを謝ってだな…:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「うっそだぁ、ずっと気にしていたじゃない!」

「むぐっ…」

「でも、そのおかげで野球が出来たのよね」

「うむ、これからは言いたいことがあったら、その場でハッキリと言うことだな」

「ふふふ。溜め込んでいたら、ここで腐っちゃうもんね」

「はいはい…」



要するに今まで晶子は、岩崎を好きすぎて言いたいことが言えてなかったと…なんて人騒がせなやつなんだ!
「卑怯者ォォッ!!」だとか変なところでは言いたいこと言いまくりなのに!
肝心なところでは押し黙ってしまうなんて、まったく晶子の性格にも困ったもんです

「みなさーん!まだ挨拶が終わっていませんよー!」

「あ、はーい!」

「9対8で、朝香中の勝ち!」

「「「「最高の試合、ありがとうございました!!」」」」

こうして幕を閉じた朝香中と桜花会の決戦…そして試合からしばらく経ったある日のこと、
小梅は空き地で子供達が野球をしているのを、三郎さんと一緒に眺めていました
一話で着たい着たいとねだっていたセーラー服も、念願かなって親に買ってもらえたようですな。
まったくあの親父も、ガンコで偏屈かと思ったら
とんだ親バカなんだから:;y=_ト ̄|○・∵. ターン

「お嬢さん、そろそろ帰りましょうか」

「お嬢さん?」

「…はは、帰りましょうか、小梅さん」

「うんっ!」

「でも小梅さんって呼ぶのは、試合に勝ったらじゃなかったでしたっけ?」

「いーの!」

そして仲睦まじく手を繋ぎながら家路につく2人。試合に負けたら三郎さんに名前で呼んでもらえないという賭けも、
さあな、なんのことだ?わからないなDIOとしらばっくれて、三郎さんにおねだり光線を発射すると
むりやり呼ばせてしまいました。まあ恋人なんだからこれぐらいのワガママは聞いてあげてもいいよね
そういえば
「試合に勝ったら小梅さんは俺の嫁!」とか暴走してたアホは今頃どうしているんだろう…(えー

大正野球娘。完

最近のアニメで一番の当たりだと思っていた大正野球娘ともいよいよお別れです、
しかし今までの話では常に期待を上回ったエピソードを見せてくれていたのが、最終回だけはちょいと期待に届かない感じで
終わってしまったなーというのが正直な感想です。というか全てを丁寧に描写するには尺が足りなかったよね…

「応援なんか行かねえ絶対行かねえ」と言っていた親父が急に態度を変えて応援にやってきたりだとか
「岩崎のバカヤロウクソヤロウあいつ本当やな奴」と言っていた晶子が急に態度を変えてデレデレになったりだとか、
試合各部分の大勝負が、いまいち盛り上がりに欠ける感じでホイホイ流されてしまったりだとか…
その辺もっと時間をかけてじっくり見せて欲しかったんですが、それをやってしまうと明らかに30分をオーバーしてしまいますからね…
とても残念です。なにげに一番見せて欲しかったのは
松坂さんのその後のシーンです
あの事故の後どうなっちゃったんだろう松坂さん…あれほどのいい人が、あん
破滅を予感させるシーン最後に退場だなんて、
あまりにも悲しすぎます。

例えばの話、エンディングテーマの映像をいつものやつにするんじゃなく、
登場人物のその後を映した特別バージョンにして、元気に運転手を続けてる松坂さんが見られたら言う事なかったな…
それで松坂さんの後ろの座席には、
いかにもラブラブな雰囲気の晶子と岩崎が座ってるとかさ。
そうだったら神だったのに!
間違いなく殿堂入りだったのに!画竜点睛を欠くとはこの事だよ!ちくしょうちくしょう
二次創作でいいから誰か描いてくれないもんか…というか
もう困った時の姉頼みですよ!ーちゃん描いてくださいお願いします!
というわけで
ねーちゃんが岩崎&晶子&松坂さん描いてくれたら野球娘殿堂入りにします。(えー  俺は本気だぜ!





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